第8話誰にもお助けできない状況が出来上がりそうだ
一学期の期末テスト期間がやってきて、授業が終わると家に帰ること無く遊びに行ったり学校に残って遊ぶ生徒が増えていた。
もちろん足早に家に帰り恋人と過ごしたり友だちと遊ぶ生徒もいたことだろう。
しかしながら僕は図書室で勉強をしていた。
長いこと集中して自習をしていると目の前には精霊さんこと益野白が僕のことをじぃーっと見ていた。
益野白は学校では有名な生徒だった。
授業以外の時間はいつも図書室で本を読んでいて入学して一年過ぎで図書室の本を全て読んでしまったらしい。
そんな彼女に先程からじっと見られている。
「えっと…。何かな?」
先に口火を切ったのは僕の方だった。
「ん?折角午前授業なのに聖女様と過ごさないの?」
それを耳にして僕は肩を竦めた。
「テスト期間は勉強をするものでしょ?」
そんな風に当然のことを言うと彼女は首を傾げた。
「そうなの?カップルは午前中から乳繰り合うチャンスなんじゃないの?」
「若い女子がそんな事を言うものじゃないよ」
一応注意をすると僕は教科書に目を向けた。
「もしかして聖女様と別れた?」
それを耳にして僕は何とも言えない顔をする。
余計なことは言ってはいけない事を思い出す。
そんな事をすれば僕の身にも目の前の彼女の身にも危険が及ぶかもしれない。
「ふぅーん。何か言えない事情があるんだね。手を貸そうか?」
それを耳にしても僕は何も応答せずにいた。
「大丈夫だよ。実は私スーパーハッカーなんだよ?」
その訳のわからない一言に無視をしていると彼女は鞄から謎の小型の機械とタブレットを取り出した。
「スマホ貸してご覧。ウィルスとか有害アプリがないか調べてあげる」
仕方なく僕はスマホを渡すと彼女はその小型の機械に有線で接続して数分で作業は終了したようだった。
「めためた有害なアプリ入ってたけど?誰に入れられたの?」
彼女は軽く微笑むとスマホを僕に返す。
「完全削除しといたからもう心配ないよ。相手が起動すると再インストールする仕組みになっていたけどそれも解除しといた。むしろ罠も張っておいたよ。相手がアプリを起動させたらウィルスを送るように設定したから心配しないで」
僕は彼女の言葉を耳にして言葉を失う。
「ちょっと待ってくれ。そのアプリはこの間削除したんだが…?」
「うん。だから再インストールされてたんだってば。もう一回説明しないとダメ?」
それに首を左右に振ると感謝を告げる。
「ありがとう。助かった。あとお願いがあるんだけどいいかな」
彼女は少しだけ悩んだような表情を浮かべると首を傾げた。
「うーん。条件次第」
「条件?」
問い返すと彼女はハッキリと答えをくれる。
「そう。今度私とデートして」
僕はそれに頷くとお願いを口にした。
「起動しただけで緊急事態を知らせることの出来るアプリとかって作れる?」
僕の言葉を耳にして彼女は何でも無いように口を開く。
「ん?そういうのならもう作ってあるよ。一種の盗聴アプリだけど…。私に常時盗聴されて位置情報も送られてくるアプリだけど…。それでも良いの?」
彼女の言葉を聞いて僕も頭を悩ませる。
「盗聴は困るな…。一応僕も男子高校生だから」
正直に答えると彼女は納得したように頷いた。
「じゃあ、盗聴だけは緊急時以外切っておこうか?緊急時はアプリを起動させて。そうすれば盗聴できるから」
「そんな都合の良いものがあるならお願いしたい」
彼女はそれに頷くと僕のスマホを操作してそのアプリを入れてくれた。
「自作のアプリだからなるべく他人にバレないようにね?対象には怪しまれないように。何かがあるまで私も助けられ無さそうだし」
僕はその言葉に何とも言えずに軽く頷くだけだった。
「態度を見てたら困らせてくる対象が誰か分かったからね。私は頭脳明晰なのだよ」
そう言うと彼女は機械とタブレットを鞄にしまい立ち上がる。
「あと私の連絡先も入れておいたから。それじゃあまたね」
そう言うと彼女は図書室を後にした。
時計を見ると16時近かったので僕も帰りの支度を済ませて帰路に着く。
最近は何故か不破聖の狂気的な行動も鳴りを潜めていた。
それが僕の気を緩めさせていたのは確かだった。
無事に帰宅してリビングに顔を出すと…。
そこには僕の家族に混ざって異分子である赤の他人の不破聖の姿があった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。