第7話ダウナー系の後輩と休日デートのち尾行

無事に軟禁から逃れた後の休日のこと。

瀬谷真琴から連絡を受ける。

「映画でも観に行かない?暇で仕方ないんだよねぇ〜」

僕はそれに了承の返事をして支度を済ませるのであった。




待ち合わせ場所に着くと誰かの視線を感じる。

(気の所為だよな…?)

そんな事を感じていると待ち合わせの相手は目的地にやってきた。

「おまたせ!早速映画館に入りましょう〜」

普段の制服とは違い大人びた格好の瀬谷真琴の姿を目にして僕は軽く彼女のことを褒める。

「なんか今日はいつも以上に可愛いね」

その言葉を耳にすると彼女は薄く微笑む。

「何?口説いてるの?」

そんな冗談に笑い合うと僕らは映画館に入っていった。

「観たいものとかあるの?」

映画に誘ったぐらいだ。

何か目的の映画があると感じた。

「そうそう。流行りの恋愛映画」

それに頷くと僕らはチケットとポップコーンと飲み物を買って入場する。

席について映画が始まるのを待っていると何処からか視線を感じた。

(誰かに見られてる?気にし過ぎかな…)

そんな事を思うがどうにも不安を感じずにはいられなかった。

何処かソワソワしていると隣に座る彼女は僕の手を握った。

「怖いの?震えてるよ?」

彼女に手を握られて僕は安堵を覚えると首を左右に振った。

「いや、空調が強くてね。もう夏だから室内は寒いぐらいの時あるじゃん」

そんな風に嘘を吐くと彼女は手を握ったまま離さなかった。

「手を握っていたら暖かいでしょ?」

彼女の薄い微笑みを確認すると僕は一つ頷いた。

「ありがとう」

僕も軽く微笑むと後ろの方から大きな咳払いが聞こえてくる。

「ゴォホン!」

ただの咳払いだと思うが僕は先程以上に寒気を感じる。

館内が暗くなって映画のCMが流れてきてそのまま本編が始まった。

二時間近く良い雰囲気の恋愛映画が続いていき僕らも良い具合にテンションが上がっていた。

「いい映画だね」

上映中に突然、彼女は僕の耳元で囁くと僕もそれに頷いた。

ラストに泣けるシーンがあり隣の彼女は涙を流していた。

僕はポケットからハンカチを取り出すとそのまま差し出す。

「ありがとう」

彼女は静かに涙を拭っていた。

僕はその姿を何処か愛おしく感じていた。

エンドロールが終わるまで僕らは手を繋いだままだった。

館内が明るくなると映画館を後にする。

そのまま近くのカフェに向かうと映画の感想を話し合う。

「あのシーンでさぁ…」

「そうそう。あそこでヒロインが…」

カフェで飲み物を飲みながら僕らの休日デートは続いていった。

「このまま港の方にいかない?海の近くの公園に美味しいパンケーキ屋さんがあるの。甘いものが苦手なら主食系のパンケーキもあるし」

彼女の提案に頷くと僕らは目的地に向かうために席を立つ。

会計を済ませてカフェを後にするのだが店内に居る間も視線を感じていた。

流石に怪しく感じて僕は彼女に正直に話すことにする。

「誰かに尾行されているっぽい…」

それを耳にすると彼女は周りを見渡した。

「あの女はいないけど?」

「そうか…。じゃあ僕の思い過ごしかな」

そこまで簡単に結論付けると僕らは駅に向かって歩き出す。

しかし大通りで彼女はいきなり手を上げた。

そこにタクシーが停まって彼女は僕を中に押し込んだ。

彼女は運転手に目的地である店の名前を告げるとそのままタクシーは発進した。

「あの女はいなかったけれど怪しいのはいたからタクシーを使うことにした。これなら心配ないでしょ?」

「どんな風に怪しいやつだった?」

「背が高くて帽子を目深に被った女」

その見た目に覚えはないし僕にはよく分からなかったので何も心配はせずにそのまま目的地のパンケーキ屋に向かう。

そのまま日が暮れるまで僕らのデートは続き、本日は何事もなく瀬谷真琴との休日デートは終了するのであった。




初めて私の尾行がバレてしまう。

最初に彼に目をつけていたのは私なのにまた別の女性とデート…。

偶然、街で見つけた佐伯進を尾行していたら何故かバレてしまった。

私は怪しいのだろうか?

でも、今日は不破聖の姿はなかった。

ただのデートなら甘んじて受け入れよう。

そんな事を生徒会長である清涼院雅は帰宅した一人の部屋で思うのであった。

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