第6話隠しキャラ的最強お助けヒロインの功績

「服を脱げってどういうこと…?」

動揺して自分の声がガタガタと震えているのが分かる。

「良いから脱ぎなさい。私も脱ぐから恥ずかしくないでしょ?」

そう言うと彼女は躊躇うこと無く制服を脱いでいく。

あっという間に下着姿になると僕にも服を脱ぐように急かした。

「ほら。早く脱いで」

言われた通りに服を脱ぐと僕も下着姿になる。

「そのままソファに座って」

ソファに腰掛けると彼女は何かを持ってこちらにやってくる。

そのまま僕に抱擁するように首に手を回すとそれを装着した。

「これでよし!」

彼女は首輪付きのリードを手に持っていてそれを柱に括り付けると僕の手足を拘束していく。

「これでずぅ〜っと一緒だからね?余計な事は考えなくていいの。わかった?進くんには私だけが居れば良いんだから」

そのまま彼女はキッチンに向かっていき料理を進めていくようだった。

彼女が服を脱いだ理由はなんだろうか?

羞恥心を忘れさせるためだろうか?

それは分からなかったけれど、とにかくこの現状はマズイ。

早く助けを呼ばなければ。

しかしながら手足を拘束されていて動くことは出来ない。

どうすれば良いのか…。

そんな事を思っていると彼女は料理を終えてこちらに戻ってくる。

「インスタントラーメンだけど食べさせてあげる」

そう言うと彼女はソファに置いてあった部屋着を着て僕の前に立ちふさがった。

「先払いでご褒美あげたんだからしっかり言うこと聞いてね?」

下着姿を見せるのがご褒美だったらしい。

彼女が服を脱いだ理由に納得すると一つ頷く。

彼女は器の中の麺を箸で器用に掴むと僕の口元に運んでくる。

急に少しだけ悪い笑みを浮かべてそれをわざと僕の頬に当てた。

「熱いっ!」

びっくりして声を上げると彼女はケラケラと笑った。

「だってお仕置きだって言ったでしょ?私以外の女子と話した罰だよ?でもこれで許してあげるね?進くんは私の可愛いペットなんだから」

そう言った彼女の目はバキバキに開かれていて、けれど目の奥が真っ黒で虚ろな瞳をしていた。

「ふぅーふぅー。はい。あーん」

僕はそれに従って口を開くと運ばれてきたそれを咀嚼する。

「美味しい?」

彼女の妖しい表情に恐怖を感じて頷いてみせるとそのまま食事というよりも餌の時間は続いていった。

「あ!そうだ!先生に助けを求めたんだよね?もう大丈夫ですよって連絡しておかないとね」

そう言うと彼女は僕のスマホを操作して勝手にメッセージを送る。

何故パスコードを知っているかは考えたくもない。

彼女は勝手に何度かやり取りをするとメッセージの相手、古井ミカから電話がかかってくる。

「大丈夫ってちゃんと言うんだよ?」

彼女に冷たい視線で釘を差されて僕は頷くしかなかった。

そのまま通話をスピーカーにすると僕は言われた通りの文言を告げる。

「もしもし?二人で早退したって聞いたけど大丈夫?本当に大丈夫なの?」

古井ミカ先生の声を聴いて僕は安心したのか安堵したのか涙声で答えてしまう。

「大丈夫です…」

危険を察知したらしい古井ミカは少しだけ息を漏らしたが、それでも何でもないように答えた。

「そう。わかったわ。また明日学校で」

そう言うと電話は切れた。

「ちゃんとはっきりと言わないとダメでしょ?怪しまれたら困るんだから」

彼女は一つ僕を叱りつけると軽く頭を小突いた。

「じゃあペットは休んでいなさい。私は今日の授業の遅れを取り戻さないとね」

彼女はそう言った後に先程の失態を咎めていないとでも言うように僕の頭を撫でるとそのままテーブルの上に教科書を広げて勉強を開始した。

(このままじゃやばい!このまま殺されるのか…!?怖い!)

しばらくそんな事を思考していると彼女は自分のスマホを確認して突然フッと立ち上がった。

そのまま何故か僕の拘束を解いて首輪を外すと服を着るように指示する。

「事情が変わったわ。今日は帰っていいわよ」

何が起きたかはわからない。

けれど、どうやら助かったらしい。

それに安堵を覚えて僕はすぐさま着替えて帰路に着く。




「なんであんたが動くのよ」

不破聖は佐伯進を解放した後にその相手に電話をする。

「我が校から犯罪者を出すわけにはいかない」

電話の相手は凛とした女性の声の持ち主だった。

「犯罪じゃないんですけど?」

当然のように堂々と口を開くが相手は状況を察しているようだ。

「拉致監禁は立派な犯罪だ」

「何もしてないんですけど?遊んでいただけだし」

平然と嘘を吐くと相手は電話口でため息を吐いた。

「聖女様のイメージを崩したくないのならこれ以上目立った悪さはしないことだな」

「あんたに関係なくない?」

不破聖は若干の苛立ちを感じて悪態をつく。

「いや、関係ある。彼を狙っていたのは私が先だ」

「それこそ関係ないんですけど?私は告白されたのだし」

若干の優位を感じて相手のスキを突くのだが相手も簡単には崩れたりしない。

「だが振られたのだろう?」

事実を突きつけられて不破聖の表情は歪むが次の質問に切り替えた。

「ってか何で私が彼を連れ出したって知ってるの?」

「生徒会長をナメるなよ?妖精さんにアプリをもらったのはお前だけじゃない」

相手は嘲笑うように口を開くと不破聖は軽く笑う。

「これだから権力者は…」

「忠告したからな」

「はいはい。私は私の好きにするわよ」

「何かがあったら私が動く。それだけは忘れるな」

そこまで通話をすると電話は一方的に切れる。

「また面倒なやつが出てきたわね…。私と進くんのイチャラブ生活には大きな壁があるのね。嫌になるわ」

不破聖は疲れたようにため息を吐くと勉強を再開するのであった。




帰宅すると音楽教師の古井ミカは僕の家を訪れた。

「よかった!本当に大丈夫だったのね…。電話の声で異常を察したけれど何もされてない?」

古井ミカは優しく心配そうに僕に声を掛ける。

そんな彼女を不安にさせないために僕は嘘を吐いた。

「何もされてないですよ。心配ないです」

「そうなの?何かあったらすぐに言ってね?今日みたいにいつでも助けを求めて」

それだけ告げると彼女は家を後にした。

「何かあったら連絡してね」

それを聞いて僕は今日あったことを正直に言おうか迷う。

しかし、僕以外の誰かが傷付くのはごめんなので黙っておくのであった。




ちなみにだが後日、新たなお助けヒロインなどが出てくることなんて現在の僕は知る由もない…。

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