第5話遂にヤンデレに捕まった

次の日、学校に向かうとクラスのウェーイ系グループに所属している女子友達が話しかけて来る。

「最近元気無くない?なんかあった?」

周りを確認すると不破聖はとんでもない視線をこちらに送っていた。

視線だけで女子生徒を射殺すほどの鋭い眼光でこちらを睨めつけていた。

「まぁ…。何でもないよ。心配ありがとう」

そこまで言って会話を打ち切ろうとするのだが相手は話を終わらせなかった。

「もしかして聖女様と別れた?振られたんでしょ?」

からかうように笑って僕に声を掛けたのを確認した不破聖はガタッと席を立ってこちらにやってきた。

そのまま空席の僕の隣に座ると腕を組んでくる。

「別れてなんかないですよ。今もラブラブです。ね?進くんっ?」

その言葉に僕は否定の言葉を口にしようとするのだが…。

ふっと不穏な空気を察して不破聖の方を振り向くとハイライトのない真っ黒で虚ろな目がこちらを覗き込んでいて恐怖を感じて僕は何も言えずにいた。

「なんだ〜。じゃあ喧嘩でもしたの?聖女様と付き合えたんだから大事にしなさいよ〜!」

そう言うと女子友達はウェーイ系の輪の中に戻っていき僕と不破聖のふたりきりの状況が出来上がってしまう。

「私達は別れてなんかないからね?誰かに余計なことを言ったら分かってるよね?」

彼女は僕の耳元で小声でそう告げると僕の頭を撫でてから立ち上がった。

「良い子だから言うこと聞くんだよ?」

僕は恐怖でそれに頷くと震え上がるような思いを抱く。

「今日は一緒に帰ろうね?」

選択肢など僕には無く頷くしか無かった。

予鈴が鳴ると彼女は自席に戻っていき僕は嘆息した。

まず彼女はスタンガンを所持している。

それで脅されたら僕は言うことを聞くしかない。

彼女からは逃げられない。

何故なら彼女は運動神経も抜群なのだ。

走って逃げても追いつかれる。

同じ学校に居る限り逃げ場など存在しない。

しばらくすると授業が始まっていき本日の時間割を確認した。

5時間目に音楽の授業がある。

それが幸いと感じたのか僕はすぐに音楽教師の古井ミカにメッセージを送る。

「助けて下さい!放課後に怖い思いをすることになりそうです!」

メッセージを送ると直ぐに返事が来る。

「わかった。じゃあ5時間目の授業が終わったら呼び止めるから。そのまま私が家まで送ってあげるわ」

「家も危ないんです!バレてしまっていて!」

「そうなの?それじゃあ私が匿ってあげようか?」

「良いんですか?」

「親御さんには私が話をつけるから大丈夫よ」

「ありがとうございます」

藁にもすがる思いで様々な問題には目もくれずにメッセージのやり取りを終えると、不破聖の様子をちらっと覗いた。

彼女は机の下でスマホを確認していてウンウンと何度か頷くと妖しい笑みを浮かべながらこちらをちらっと覗いた。

それに恐怖を感じたが無事に1時間目の授業は開始されていき僕も授業に集中していた。

しばらくすると1時間目の授業中に彼女は突然サッと手を上げた。

「先生すみません。具合が悪いので保健室に行きたいのですが」

そんな事を言うと担当教師はクラスの保健委員を探した。

即ち僕なわけで…。

「佐伯。付き添ってやれ」

彼女には全てがバレているようでギクッとして僕は背筋が寒くなるのを感じた。

だが仕方なく僕らは立ち上がるとそのまま教室を抜ける。

彼女は珍しく無言のまま一階にある保健室を目指すと思っていたのだが…。

僕らは何故かそのまま職員室に向かう。

担任の先生を呼ぶと彼女はふたりとも早退することを告げて教室に戻った。

「何してるの?早退ってどういうこと?」

慌てて問いかけても彼女は黙ったままだった。

教室に戻って担当教師に早退する旨を告げて鞄を持つと僕らは学校を後にする。

「ダメじゃない。先生に助けを求めるなんて。本当に悪い子なんだから。お仕置きは何が良いかな?」

彼女は僕の手を引きながら強制的に帰路に着いた。

思った以上に力が強くて抵抗しても無駄な気がした。

それにスタンガンを出されたら結局言うことを聞く羽目になるので全ての抵抗を無駄に感じたのだ。

学校を出ると駅までバスで移動してそこからは電車に乗り込んで彼女の家に向かう。

為す術もなく彼女の家に入ると彼女は鍵とチェーンを閉めた。

「まずは服を脱ぎなさい。その身に刻み込んであげる」

彼女は妖しい微笑みを浮かべて僕に命令をする。

(僕はこれからどうなってしまうんだ…!)

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