第3話お助けヒロイン
「私以外の女子と話さないでって言ったよね?それに昨日遊びに行ったあの女子誰?」
瀬谷真琴と遊んだ次の日。
学校に向かうと不破聖は僕のもとを訪れる。
彼女は何故か昨日のことを知っていて僕は怪訝な表情を浮かべる。
「何で知ってるの?そもそも僕らはもう別れたし…」
素っ気なく伝えても彼女は引き下がることもなく口を開く。
「私は別れるって了承してないんだけど?」
「そんな横暴ないだろ。僕は別れるって言ったんだし。ごめん。もう無理だから」
正直に伝えても彼女は臆することもない。
「本当に悪い子。自分から告白してきたのに勝手に別れを告げてきて…。もう鎖に繋いで飼い殺したいわ…」
現在は選択授業の音楽が終わった後の音楽室。
音楽室と言えば防音設備が整っている。
大声で助けを呼んでも誰も来てくれない。
彼女は音楽室の扉の前で僕を待ち構えている。
「もう逃さないんだから。このまま私の家に行こうね?痛い思いはしたくないでしょ?」
そう言うと彼女は鞄の中からスタンガンのようなものをちらつかせて僕を脅した。
「分かるでしょ?気を失うぐらいの電圧はあるよ?」
(やばい…!このままじゃあ…)
そう思ったところで音楽室のドアが急にガラッと開いた。
「あれ?どうしたの?佐伯くんと不破さん。お邪魔だった?」
そこに職員室に帰ったはずの音楽教師がやってきて不破聖はすぐにスタンガンを鞄の中にしまった。
「何でもないです!すぐに帰りますね!行こう?佐伯くん」
不破聖は僕の目を力強く覗き込み、僕は若干の恐怖を覚えた。
「あぁー…。佐伯くんは残ってもらっていい?さっきの授業で注意しておきたいところがあるから」
若い音楽教師の古井ミカは僕をその場に呼び止めて不破聖に教室に帰るように指示した。
「不破さんは先に教室に帰りなさい」
不破聖は若干、顔を引き攣らせると仕方なく頷いて音楽室を後にした。
音楽室の扉が閉まって不破聖がその場を後にしたのを確認すると古井ミカはホッと一息吐いた。
「ふぅ。大丈夫だった?何があったの?」
事情を瞬時に察したらしく古井ミカは僕に問いかけた。
「いや、ちょっとした痴情のもつれのような感じです…」
正直に答えると彼女は納得したように頷いた。
「そうね。彼女は私が来た時、何かを隠したものね。何を持っていたの?凶器とか?」
それを耳にして僕は一つ頷いた。
「凶器というかスタンガンだったと思います。護身用に持っていたって言われれば躱されますし追求は不可能だと思います」
「なるほど…。頭の良い子ね。何かあったら言って?生徒の身の安全を守るのも教師の仕事だから」
そう言うと彼女はスマホを取り出した。
「連絡先交換しておきましょう。事情を知ってしまったからには最後まで付き合うわ。困った時はいつでも連絡して」
僕らは連絡先を交換して音楽室を後にした。
音楽室を抜けて長い廊下を歩いていくと渡り廊下の端で不破聖は僕を待っていた。
「先生と何を話してたの?」
その言葉に僕はゴクリと生唾を飲み込んで適当な言い訳を口にした。
「さっきの授業で寝てたのを注意されてたんだ」
そう言ってどうにか躱すと僕らは教室に向かう。
彼女は僕の背中にスタンガンを押し当てていて逃げ場なんてどこにも無かった。
しかし教室に向かう途中の廊下で偶然にも瀬谷真琴と遭遇して彼女と目が合う。
彼女は僕のピンチを察したらしく声を掛けてくる。
「先輩!昨日の責任取ってもらいますよ!ほら!早くこっち来る!行きますよ!」
瀬谷真琴は僕の腕を強引に引っ張って逃げるようにその場を後にした。
「大丈夫?あの女でしょ?」
それに頷くと彼女は学校の中庭まで僕を連れ出した。
「ってか今日も早退してバックレる?あの女やばいよ…。今日のは完全に目がイッてたもん」
その言葉に頷くと僕らは二日連続で学校をサボるのであった。
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