第2話ヤンデレの恐怖

付き合って一ヶ月が経過した。

不破聖はどうやら束縛が激しいタイプだと感じるようになる。

「学校でもどこでも私以外の女子とは話さないで?私だけ居ればいいでしょ?」

それを耳にして僕は苦い表情を浮かべて首を傾げた。

「彼女は不破さんだけでいいけどさ…。それでも女子友だちと話しちゃいけないなんて困るよ」

そこまで言うと彼女は、はぁとため息を一つ吐いた。

「どうして言うこと聞いてくれないの?私だけ居ればいいでしょ?それ以外に何が必要なの?」

彼女は虚ろな目をしたまま僕に問いかける。

「友だちは必要だよ。きっと一生モノでしょ?」

僕の言葉を耳にすると彼女は意味がわからないとでも言いたげな表情で首を傾げた。

「私だって一生一緒に居るよ?恋人と友だちどっちが大事かなんて言わずもがなでしょ?」

ハッキリと断言する彼女の言葉に同意はできなかった。

「うーん。どっちも同じぐらい大事でしょ?」

僕の言葉を耳にすると彼女は完全に否定するように首を左右に振った。

「友だちはいつか居なくなるわ。進路が別になったり結婚したりしていつか疎遠になる。でも私は居なくならない。だから私だけを見ていて?」

「平行線だね。僕はどうしたって少なくても友だちを大事にしたいよ」

そこまで会話をすると彼女はもう一度ため息を吐いて決定的なことを口にする。

「もう悪い子なんだから。佐伯くんはずっと私に飼われていればいいの。何処にもいかずにずっと私の家で飼われ続けていれば良いんだから」

言い忘れたが現在は彼女の家に来ている。

おうちデートというやつだ。

「怖いこと言うね…。そう言えば今日ご両親は?」

「いないよ。私はここで一人暮らし」

それを耳にして僕は若干の恐怖を感じた。

「へぇ…。じゃあそろそろ帰ろうかな…。若い男女がいつまでも密室にふたりきりはちょっとね…」

「なんで?せっかく来たんだから泊まっていけばいいでしょ?」

そう言うと彼女は部屋のドアに向かおうと立ち上がる。

(このままではやばい…!)

そう感じて僕は荷物も持たずに瞬時に立ち上がり彼女の部屋を飛び出して、そのまま家も飛び出して行った。

猛スピードで帰路に着いて僕はすぐに彼女にメッセージを送る。

「ごめん!束縛が激しい女子は勘弁だから別れる!ごめんね!」

そこまで送って僕は彼女の連絡先を削除して着信拒否とメッセージのブロックをした。

それでひとまずは安心した僕をもう少し叱ってやりたかった…。




次の日、学校に向かうと僕のもとに不破聖はやってきて口を開く。

「これ。昨日の忘れ物だよ」

そう言うと彼女は僕の鞄を机の上に置いて続けて口を開いた。

「どうして着信拒否とブロックなんてするの?なんで?なんで?なんで?」

彼女の虚ろな表情を目にすると荷物を持ってその場を後にして屋上へ逃げ込んだ。

幸いなことに追いかけてくることもなくホッと一息吐いた。

恐怖を感じて屋上で時間を潰すことを決める。

そこには先客がいたらしくこちらを覗いていた。

「誰?私の一人の時間を邪魔するのは」

そこには派手な見た目のダウナー系の女子が一人で黄昏れていて僕らは会話をすることになる。

「ごめん。ヤンデレから逃げてきたんだ…」

息を切らして慌てて口を開くと彼女は薄く微笑んだ。

「ヤンデレ?厄介な女に捕まった?」

それに頷いて答えると彼女は薄い微笑みを絶やすこと無く言葉を続ける。

「キミ。名前は?」

「佐伯進です。キミは?」

「瀬谷真琴。一年生」

「僕は二年生。よろしくね」

彼女は僕の言葉に頷いて軽く挨拶を交わす。

「それでヤンデレって誰のこと?」

「ん?不破聖って元彼女」

それを耳にして彼女は何かに納得したように頷いた。

「あぁ…。何となく分かるよ。あの人そんな感じするよね。目がイッてる時あるもん。聖女様とか言われてるらしいけど私はそんなイメージないな」

お互いそれに頷くと僕らは屋上で時間を潰していく。

予鈴が鳴ってもその場で時間を潰してそのうち意気投合して連絡先を交換した。

彼女は不破聖とは違って僕にスマホを寄越すようには言わない。

簡単に口頭でIDを交換しあって連絡先を交換する。

僕は少し首を傾げていると彼女は不審に思ったらしく問いかけてくる。

「どうしたの?」

「いや。その元恋人と連絡先を交換した時、スマホを貸すように言われたんだよね…。でも普通、連絡先交換する時ってID言うぐらいだよね?」

僕の言葉を耳にして彼女は薄く笑うと不可解なことを口にした。

「盗聴アプリでも入れられてるんじゃない?」

それを耳にして僕はスマホの中を調べて…。

一つのダウンロードした覚えのないアプリを発見する。

「まじでそうっぽい…」

そんな事を口にしてそれをすぐさま削除した。

「助言ありがとう。助かったよ」

「いえいえ。そうだ。良かったらこのまま学校サボろうよ。遊びに行かない?」

それに頷くと僕らはそのまま学校を後にして街に遊びに向かうのであった。

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