第4話 リスベルの最後

数日が経過した。


 報酬の金塊の準備は,およそ1ヶ月ほどかかるとの連絡があった。金鉱脈から金を採掘して,さらに金塊だけを集める。それくらいは必要だった。


 リスベルは,指輪の亜空間から女王からもらった魔法書を出して,降雪魔法陣の解読に着手していた。超古代文字なので,全部を解読することはできない。でも,これまでの検討結果から,6割ほどの文字を解読することができた。わからない部分は,文脈と類推から試行錯誤していくしかない。


 リスベルは,地面に検討中の魔法陣を書き,小雪がそこに霊力を流すという作業だ。幸い,小雪は充分に霊力を与えられていると千雪から聞いていたので,遠慮なく霊力を魔法陣に流した。


 リスベル「また失敗だ。これで100回目だな」

 小雪「でも,まだ1週間しか経過していませんよ。金塊も準備できていないですから,のんびりしましょう」

 

 そんな会話を聞いていた軍師の助手が口を挟んだ。


 助手「あの,今は,完成までどのあたりなんでしょう?」

 リスベル「一番,大事な部分だ。ここを突破すれば,あとは,なんとでもなる」


 リスベルは,自分の後ろに控えている処女だった女性ゴブリンを見た。彼女は,ゴブリンなので慎重は130cm程度しかなかったが,でも,Eカップのおっぱいをしていて,ゴブリンのくせに,もちもち肌で小雪を抱くのと同じくらい超気持ちいい女性だった。


 リスベル「ちょっと,休憩だ」


 リスベルは,その女性ゴブリンの手をひっぱてカーテンで隠したベッドに連れていった。


 こうなると,2時間くらいはベッドから出てこない。軍師の助手は,自分のテントに戻った。


 小雪は,テントから出て,人気のないところに来た。そこで,亜空間から羅針盤を出して,転移座標点を割り出した。その情報を木片の上に霊力の刀で切り刻んで,転送魔法で颯太の元に送った。


 その後,颯太は転移魔法で小雪の元に来た。そして,小雪を連れて女王のもとに転移した。


 ー ゴブリン女王国,女王の執務室 ー


 ゴブリン女王は,150歳と思えないくらい,若くて美人だった。


 ゴブリン女王は,このゴブリン大陸では,死にたくなかった。月本国に戻って死にたかった。そこで,無理を承知で,小雪にこの女王国に,新女王として残ってほしいとお願いした。小雪は,優れた能力がある。その能力があれば,そのうち,このゴブリン大陸を統一することもできるはずだ。それに,魔大陸からこのゴブリン大陸に,ときどき使者が来るので,魔大陸に帰ることもできる可能性がある。


 小雪は,ゴブリン女王からの提案を保留した。決して悪い話ではない。リスベルを連れて月本国に帰ったところで,見知らぬ国だ。それなら,このゴブリン大陸にいて,魔大陸に行くチャンスを待ったほうがいいのかもしない。


 小雪は,1週間に一度ほど女王に呼ばれて,この女王国に新女王として残ってほしいと依頼された。それに,もう,子供を産む必要がないので,今の霊体の体でも問題はない。


 小雪は,ひとつの条件を出した。


 小雪「このゴブリン大陸から魔大陸に行く方法を見つけてください。それがあれば,喜んで残ります」

 女王「わかりました。では,その方法を探してみましょう」


 小雪は,どうせ発見できないだろうと思って,そのような条件を出した。その後,小雪は,颯太が起動した転送魔法陣によって,元いた場所に転送された。


 

 颯太は,女王に言葉をかけた。


 颯太「どうでしょう?小雪さんは,残ってくれるでしょうか?」

 女王「間違いなくここに残ると思うわ。それを確実にするために,魔大陸へ行く方法をさらに調べてちょうだい。過去に誰々が来たかという情報でもいいわ。竜騎ゴブリン国と停戦協定をしているから,彼らからの情報も入手してみてちょうだい」

 颯太「了解です」


 小雪の霊体を,このゴブリン大陸に引き留める作戦が着実に進行しつつあった。


 ーーー


 さらに2週間が経過した。報酬の金塊がリュックサック一杯になったので,リスベルのもとに送られた。


 リスベルは,その金塊を見て,がぜんやる気が出た。リスベルは,指輪にその金塊を入れた。


 リスベル「よし,では,そろそろ降雪魔法陣を完成させるか」


 リスベルは,これまでの失敗から,どうすば成功するかを,すでに頭の中に構築していた。そして,その魔法陣を地面に書き直した。


 リスベル「小雪,少しでいいから,霊力を4箇所から流しなさい」

 小雪「了解です」


 小雪は,言われた通りにした。小雪も,いやっというほど,この修正されてきた魔法陣を見てきたので,どこがどうなっているのかを理解することができた。


 ヒューーン!ヒューーン!ヒューーン!ヒューーン!


 4箇所から流れた霊力は,すべて途切れることなく発動し,小さな雲が生成されて,少量だが,雪が舞ってきた。


 軍師の助手は,びっくりした。ほんとうに雪が降ったのだ。しかも,周囲の温度が低下している!!


 助手「これって,もしかして,成功なんですか?!!」

 リスベル「ああ,成功だ。まず,小雪に完璧に覚えてもらって,上空から雪を降らせる技を習得してもらう。それができれば,小雪から助手のあなたにその技を伝習してもらえばいい」

 助手「は,はい!!すぐに軍師様に報告します!!」


 助手は,慌ててテントから出て,軍師に報告しに行った。


 小雪は,リスベルに言った。


 小雪「リスベル様,この件がけりがつけば,月本国にわたしと帰ってもらいます。いいですね?」

 リスベル「心残りはあるが,ゴブリンを抱くのもあきたし,月本国に戻ってもいい」

 小雪「この指輪の有効期間も,あと少ししかありません。2,3日くらいで目処をつけてください」

 リスベル「ふふふ。わたしの仕事は終わった。あとは小雪の仕事だ」

 小雪「・・・」

 

 リスベルは,後ろに控えてあいる新しく来た処女の女性ゴブリンを連れてベッドに消えた。


 小雪は,降雪魔法陣を実践的に起動するため,助手に適当な場所を選んでもうことにした。助手は,一辺が20メートル程度にもなるコの字型の壁面に囲まれた場所を選んだ。


 助手「小雪さん,ここなら適当だと思うのですが?」

 小雪「そうね。あなたも,降雪魔法陣は,すでに覚えたのでしょう?」

 助手「はい,イメージだけはしっかりと覚えています」

 小雪「では,まず,わたしから,実践的に起動してみるわね。わたしは,霊力を使うけど,魔力を使っても起動するはずよ」

 助手「はい!」


 小雪は,コの字になった場所の中央に立った。


 小雪「じゃあ,私が,手本見せるわね。果たして,うまくいくかどうか,わたしもわかrたないけど,実演してみるわ」


 ボボボボーーーー!


 小雪の上空10メートルほどの高さに,直径20メートルにもなる巨大な降雪魔法陣を発動させた。


 助手「え?こんなに大きく魔法陣,わたしには無理!!」

 小雪「ここまでではなくても,小さくでもいいのよ。わたしには,膨大な霊力があるからね」


 小雪は,千雪の言った『膨大な霊力』を,無限に使える霊力と勘違いしていた。

 


 シンシンシンーーー(雪が降る無音の音)


 コの字型の上部に雪を降らせる雲が集まってきて,周囲の気温がどんどんと下がり,零下10℃にもなった。そして,雪がどんどんと降ってきた。


 天候系の魔法は,思った以上に霊力を消耗する。実は,小雪には,もうほとんど霊力がなかった。これまでの度重なる実験で,すでに枯渇状態に近かった。それが,この大型魔法陣を発動させたことで,霊力をすべて使い切ってしまった。でも,小雪は,霊力の枯渇を知るすべを持たなかった。


 小雪は,大型の降雪魔法陣を発動することに成功したので,助手に実演させることにした。


 小雪「では,あなたの番よ。小さい魔法陣でもいいから,発動させてみて」

 助手「はい!頑張ります!!」


 助手は,頑張って,降雪魔法陣を発動させた。


 小雪「そうそう,その調子よ。まあ,半径1メートルしかないけど,でも,成功には間違いないわ。テントの中なら,これくらいでいいでしょうね」

 助手「はい,ありがとうございます!!もうちょっと,自分で頑張ってします」

 

 助手は,そう言って,小雪の存在を忘れて,降雪魔法陣の練習を続けた。


 でも,,,


 小雪は,霊力がなくなると,意識を失って,まもなく小雪の体の活動が停止するという事実を知らなかった。


 小雪は,その場に倒れた。雪がすでに10㎝ほど積もっていた。それがクッション代わりになって,小雪の倒れる音がしなかった。助手は,小雪が倒れたことにまったく気がつかなかった。


 助手は降雪魔法陣を何度も発動させt,どんどんと雪を降らせていった。その雪は倒れた小雪の体全体に降りかかり,ほどなくして,小雪の体を完全に雪で覆った。地面から50㎝程度の積雪になり,周囲が真っ白になってしまった。



 1時間ほど経過した。


 助手は,練習を中止した。成功だ。小さい魔法陣でも,何個も並列に起動すれば,それなりに低温にすることができることを発見した。そして,小雪の評価を聞くために振り向いた。


 助手「小雪さん,どうでしたか?小雪さん? どこ?え? もう帰ってしまったの?」

 

 助手は,あたりが雪で覆われていたので,小雪を発見できなかかった。助手は,すでに帰ったと思った。


 助手は,早速,軍師と国王に魔法の習得に成功したことを報告しに行った。軍師は,席を外していたので,国王に先に報告した。



 国王は,ことのほか喜んだ。これで,女性が生まれる確率が大幅に増加するはずだ。この国が救われるのだ。国王は,小雪とリスベルのために,宴席を準備した。


 国王「小雪さんとリスベルさんに,今日は,宴席だから,出席するように言ってくれないか」

 助手「はい。降雪魔法の練習中に,一足先に帰ったようです。今から,連絡しにいきます。では,失礼します」


 助手は,リスベルのところに来た。リスベルは,女性ゴブリンといちゃいちゃしていた。


 助手「リスベルさん,小雪さんは帰っていませんか?国王が今日は宴会がから,出るようにと言われたのですけど」

 リスベル「そう?まだ帰ってこないな。どっかで油売ってると思う。帰ってきたら伝えましょう」

 助手「はい,お願いしますね。じゃあ,失礼します」


 だが,宴会が始まる時間になっても小雪は戻って来なかった。リスベルは,流石にこれはおかしいと思った。国王と相互安全保障契約をいしている以上,小雪が危害を受けることはない。


 では,どこに?


 リスベルは,小雪の捜索を国王に依頼した。国王は,部下全員に,小雪の探索を命令した。小雪の捜索が徹底的に始まった。この周囲には,1000個以上ものテントがある。各テントを徹底的に調べた。通路,川,崖,そして降雪魔法の練習場,,,,


 その練習場は,雪で覆われていたので,その雪を除雪してみると,,,

 

 「いたーー!! いたぞーーーー!」

 「意識がない。治癒魔法だーーー!だれかーーー,魔法士呼んでくれーーーーー!!」


 小雪が見つかったことを聞いて,リスベルは現場に急いだ。小雪から降雪魔法の伝術を受けた助手も駆けつけた。国王も現場に走っていった。


 そこは,降雪魔法を練習していた場所だった。一面雪景色だったその場所は,すでにすべての雪が取り除かれていた。そして,すでに意識のない小雪が静かに横たわっていた。


 魔法士数名が回復魔法をかけていた。しかし,その努力は意味がなかった。霊力がつきた小雪を救うには,霊力しかない。だが,この場のだけも霊力を生成できない!!

 

 リスベルは,小雪のもとにかけより,小雪を抱きかかえた。リスベルは,叫んだ。


 「小雪ーーーー!どうしたんだ?返事しなさい!!返事しろーーー!」


 小雪は返事しなかった。リスベルは悟った。小雪は死んだのだと。千雪に創られた体とはいえ,霊体はリスベルに殺された処女だった女性だ。リスベルは,間接的にその女性を殺したことになる。それも2回もだ!!


 さすがにそれは,いくら極悪非道なリスベルでも受け入れられなかった。


 助手は,その場に崩れた。

 

 助手「わーーん。わーーん。私のせいですーー。小雪さんが,雪の上で倒れたの,気が付かなたーー。ごめんなさいーーい。ごめんなさーーい。わーーん。わーーん!!」


 リスベルは,感情の高まりを少し抑えた。死んだものは生き返らない。せめて,助手の負担を軽くしてあげたかった。リスベルは,助手にやさしく語った。


 リスベル「助手さん,あなたのせいではありませんよ。何も責任を感じることはありません。国王,どうぞ,彼女を責めないでください。彼女は何も悪くはありません。雪に埋もれた小雪を,だれが気づくことができるでしょう。不可抗力です。誰も悪くありません。


 連日,魔法陣の検討で,ほぼ霊力を使い果たしていたのでしょう。さらに降雪魔法を使ったときに,限界に達して意識を失ったのだと思います。これも,彼女の運命だったのかもしれません。


 もともと,私はこれまで多くの罪を犯してきました。小雪が魔界で生きていた時,彼女を殺したのは私です。彼女はこの小雪の体を得たものの,間接的にわたしによって殺されたようなものです。


 わたし,わたしこそが,小雪の代わりに死ぬべきなのです!! 


 神様,指輪の精霊さま,大地の大いなる神々さま,誰でもいいです。偉大なる力のある生命体の皆さまがた,お願いします。お願いでします。お願いします。


 私の命を差し上げます。こんな罪を背負った体ですが,差し上げます。八つ裂きにでもなんでもしてください。その代わり,小雪を生き返らせてください。小雪の魂を救ってください!!どうか,どうか,小雪を生き返らせてください。お願いします!!!」


 リスベルは,顔面に涙を流して,心から訴えた。誰に,ということではない。誰でもよかった。そんな力のあるものならば,誰でもよかった。


 雷雲がリスベルと小雪の頭上に集積した。そして,巨大な雷が落下した。


 ゴゴゴゴーーー,ゴゴゴーーー,ピカーーーー!


 その雷は,リスベルの指輪に落下した。そして,その雷のエネルギーは指輪に吸収された。


 その指輪は,その後,巨大な魔法陣を3重にも構築したのだ。


 1つ目は時間逆行魔法陣だ。小雪の肉体が死亡する前の状態に戻すためだ。その魔法陣が発動した。魔法陣の中央部にある時計の針がゆっくりと逆行しだした。その発動した魔法陣は赤とピンクと黄金色に光を放ち,とても美くしかった。小雪は,死亡する前の時間まで巻き戻された。そして,小雪は,心臓の鼓動を回復し,息も回復した。


 2つ目は,超究極治癒回復魔法陣だ。その魔法陣が発動した。金色の微粒子が降り注ぎ,小雪の体表を覆った。そして徐々に体内に吸収されていった。この魔法陣により,小雪のもっともよい状態になる。つまり,霊力を豊満にある状態に回復した。


 小雪はゆっくりと目覚めた。そして,自分がリスベルに抱きかかえられていることを知った。


 小雪「リスベル様? どうしたのですか??なんで,そんなに泣いているのですか??」

 リスベル「小雪ーー!生き返ったのか?やったーー!やったーー!神様,指輪の精霊さま,大地の大いなる神々さま,偉大なる力のある生命体の皆さまがた,ほんとうにありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。どうぞ,どうそ,私の命を奪ってください。お願いします。お願いします!」


 3つ目の魔法陣が発動した。それは,肉体生贄魔法陣だ。これは,人を生き返らせるための代償として,生贄として肉体を精霊に提供するための魔法陣だ。白く光った微粒子がゆっくりとリスベルを包んだ。リスベルは理解した,自分はまもなく肉体が消滅すだろうということに。


 リスベル「小雪! 今,やっとわかった。この指輪の力が。これは,死亡した最愛の人を復活させることができる指輪だ。たとえ,その人がどのように死のうとも,生きていた時にまで,時間を逆行させてしまうという奇跡の力があるようだ。しかも,体力,魔力,霊力も完全な状態にしてね。


 病気でも,手が切れようか,脚がとれようが,完璧に治してしまうよ。どんな不治の病でも直してしまうと思う。でも,世の中,そんなに甘くない。当然,代償はある。間もなく私の肉体は精霊にささげられる。


 こんな体でも小雪のためになったのなら,ほんと,うれしい。小雪を2回も殺さなくてよかった。


 月本国に帰って,千雪に会ったら伝えてくれ。わたしは,普通ではできない貴重な体験ができた。思う存分,好き勝手ができた。それもこれも千雪のおかげだと。


 小雪! お前は,千雪から別れて,好き勝手に行きなさい。自分の道を歩みなさい。もう千雪に縛られる必要はない。小雪,私の分まで生きなさい。


 小雪,ありがとう。ほんとうに,ありがとう」


 

 リスベルの体は,ゆっくりと白い微粒子によって分解されて,消滅した。リスベルが消滅すると同時に3重の美しい魔法陣も静かに消えた。またリスベルがしていた指輪も寿命を迎えて消滅した。それとともに,その中に収納された黄金も消滅した,,,


 抱きかけられた小雪は,支えが亡くなって,地表に,ドンと倒れた。


 地に倒れた痛みを小雪は,感じなかった。どんな痛みでも快感として感じてしまう体だった。


 小雪は,大声でリスベルを呼んだ。


 小雪「リスベル様ーー! リスベル様ーー!」


 だが,リスベルから返事はなかった。ふと横を振り向くと,霊体が纏わりついているのに気がついた。


 小雪は,もちろん霊体をみることができる。リスベルの霊体は,小雪の傍を離れなかった。


 小雪「国王,すいませんが,この国には,霊体を収納できる瓶のようなものはありますか?リスベルの霊体があれば蘇生できるかもしれません」


 国王「おお,そうか,そうか,そうか。いやーー,奇跡の連続で,理解が追い付かない。昔,魔界の魔法士がおいていった霊体収納瓶があったはずだ。国王秘書,確か,貢ぎ物の中にあったと思うが持ってきてくれないか?」

 国王秘書「はい。確かに以前,いただいたはずです。急ぎ,持ってまいります」


 助手「小雪さん。ごめんなさい。ごめんさない。雪の中に倒れていたなんて気が付かなくて。それに,リスベルさんが,小雪さんの代わりに死ぬなんて,思っても見ませんでした。ごめんなさい!」

 小雪「いいのです。あなたのせいではありません。あなたが謝ることではありません。それに,リスベル様は,ここに霊体として存在しています。まだ,蘇生の余地があります」


 国王秘書は,霊体格納瓶をもってきた。これは,小雪が持っていたものとまったく同じ色と形をしたものだった。小雪はそれを受け取って,その中にリスベルの霊体を収納した。そして,指輪の亜空間収納領域に入れた。


 小雪は,この国を去るため,国王に挨拶をした。


 小雪「小雪がこの国でできることはもうありません。国王,では,ここでお別れです。女王国の女王に報告してから,もとの国に帰ることにします」

 国王「おお,そうか。宴会の準備をしていたのだが,そんな気分ではないだろしな。うん。小雪さん。あんたに会えて本当によかった。小雪さんは,私たちの神様といっていいのかもしれない。毎日,小雪さんを拝むことにするよ」


 小雪「それはうれしいです」

 国王「よし,全員,女神様に拝謁しなさい」


 国王以下,全員は,膝をついて,頭を地につけて小雪を拝謁した。


 全員「はあーー! 女神様,ありがとうございました。ありがとうございました!」


 小雪「皆さまの感謝の言葉,信仰の想い,確かに受け取りました。この国は,これから本当に救われるでしょう。この国がすまます発展することを願っております」


 小雪は,羅針盤を出して,この場所の座標点を颯太に連絡した。まもなくして,颯太が転移してきた。


 颯太は,国王らに挨拶したあと,小雪を連れて女王のもとに転移した。


 

 ーーー

ー ゴブリン女王国,女王の部屋 ー


 小雪は,月本国に帰るためゴブリン女王国の女王に挨拶しに来た。


 小雪「女王さま。ただいま戻りました。竜騎ゴブリン国では,低温にできる魔法を習得しましたので,今後,女性が生まれ可能性が高いです。生まれなくても,今後は,両国で協調していけば,いざこざは起きないものと期待しています」

 女王「そうですか。それはよかったです。ありがとうございます。ところで,リスベルさんはどうしたの?」

 小雪「残念な結果ですが,死亡しました。事故死です。小雪の代わりに死にました」

 女王「事故死ですか,,,そうですか。残念です。一姫や二姫は,もう知っているのですか?」

 小雪「いえ,これから報告にいきます」

 女王「そうですか。残念ですが,どうしようもありませんね」

 小雪「では,先に,彼女たちに会ってきます。出発まえに,もう一度,女王に挨拶します」

 女王「そうしてちょうだい」


 

 ーーー

 ー リスベルの部屋 ー


 小雪はリスベルの部屋に来た。


 小雪「一姫,二姫。久しぶりです。元気でしたか?」

 一姫「小雪さん。お帰り。リスベルも一緒ですか?」

 小雪「残念ですが,,,リスベルは死にました。申し訳ございません」


 この言葉に,一姫と二姫は,さほどショックを受けなかった。もしかしたら,リスベルは,もう戻ってこない,と感覚的に察知していた。


 一姫「そうですか,,,小雪さんが来た時点で,リスベルはいずれは月本国に帰るものだとは思っていたのですが,でも,死んでしまったのですね,,,やっぱり悲しいです」

 

 小雪は,リスベルがどのように死んだかを説明した。先に小雪が霊力が尽きて死んだこと,そしてリスベルが,指輪の力で,リスベルの命と引き換えに小雪を蘇生してくれたことなどだ。そして,リスベルは霊体としてまだ生きていることも伝えた。


 一姫「そうでしたか。小雪さまの身代わりに,,,リスベルも本望だったことでしょう。それに霊体としてまだ生きているんぼですから,全然悲しくありません」


 そうは言ったものの,もうリスベルに会えない。一姫と二姫の目から涙が出てきた。


 二姫「リスベルは幸せだったんじゃないかな? 一番大切な人のために死ねるなんて,最高の幸せだわ。それに,少ない時間だったけど,私たちや子供達と一緒に暮らせたし,リスベルの子供もいるしね」

 一姫「ええ,そう思うわ」


 リスベルの部屋には,遺品になるものは,数冊の魔法陣の本と研究ノートくらいだ。


 小雪「この魔法陣の本と研究ノートは,遺品としてもらってもいいかしら?」

 一姫「ええ,どうぞ。もし,リスベルさんが蘇生するなら,有益だと思うわ」

 小雪「ありがとう。では,もらっていくね」


 小雪は,それらを指輪の亜空間収納領域にしまった。これで,この世界から去る準備ができた。


 小雪「一姫さん,二姫さん。リスベル様と一緒に暮らしてくれてありがとうございあます。リスベル様に幸せな家庭の味を味合わせてくれてありがとうございます。リスベル様に代わってお礼申し上げます」


 小雪は,一姫と二姫に深々と頭を下げた。小雪も涙がでてきた。一姫と二姫は,小雪に寄り添った。そして,3人抱き合って泣いた,,,,,


 しばらくして,小雪は涙を拭いた。


 小雪「じゃあ,いくわね。あ,そうそう,もし寂しくなったら,この手紙読んでね。では,今から女王に最後に挨拶にいきます。一姫さん,二姫さん,では,お元気で暮らしてください」

 一姫「小雪さんも元気でね」

 二姫「小雪さん,じゃあ,またね」


 小雪は,再び女王の執務室に戻った。


 ー 女王の執務室 ー


 小雪「女王様,一姫さんと二姫さんに挨拶してきました」

 女王「そうですか,,,では,最後に,小雪さん。心からお願いします。わたしの代わりにこの国を治めてください。小雪さんなら,このゴブリン大陸を統一することができると思います」

 小雪「あの,,,魔大陸に行く方法はわかりましたか?」

 

 その問いに,颯太が答えた。


 颯太「その問いに,わたしから答えます」


 颯太は,小石大の魔法石を持ってきて小雪に渡した。その魔法石は,普通の魔法石とは違って,そこの魔法石の上部と下部に魔法陣が刻まれていた。


 颯太「かつて魔大陸から来た使者が持っていたものです。代々受け継がれたものです。これが,今でも有効なものなのかはわかりません」


 小雪は,それをマジマジと見た。


 小雪「そうですね,,,この体がどれくらい持つのかわりませんが,思い切って,この魔法石にすべてをかけてみましょう。それに,この肉体が停止したら,颯太さんに霊体を保存してもらえばいいですし,,,」


 女王「え?とうことは,小雪さんは,新女王として君臨してくれるのですね?」

 小雪「はい,ここに残ることにします。女王様は月本国に戻ったら,千雪様にこのリスベルの霊体が入っている瓶を渡してください」


 女王は感激のあまり小雪の手を握って振った。


 女王「小雪さん,ほんとうにありがとう!!ありがとう!!」

 

 女王は,感激のあまり涙が溢れ出した。


 ひとしきり涙を流したあと,女王は落ち着きを少し取り戻した。


 女王「すいません。少々,取り乱しました。小雪さん,女王職の具体的な内容は,颯太に聞けばわかるようにしています」

 小雪「いえ,これはわたしのためでもあります。月本国に帰っても悪魔大魔王の一部に戻ってしまって,また男どもに犯され続ける日々が待っているだけです。それなら,可能性は低いかもしれませんが,いっそ,ここに残って魔大陸に行く方法を探るのがいいと判断しただけです」

 女王「そう言ってもらえると,わたしも気が楽になるわ」


 小雪は,そろそろ女王を月本国に送る時期だと判断して,精霊の指輪を女王に渡した。そして,指輪にお願いする文言を伝えた。


 女王「わかりました。では,そのようにお願いしてみます。ドラゴンの指輪様,お願いです。小雪さんがこの世界に来る前にいた月本国の場所に戻っていただけますか?どうか,どうか,よろしくお願いします」


 ブゥーーーーン!!


 精霊の指輪であるドラゴンの指輪が発動した。そして,女王は,千雪のいた賃貸マンションの一室に転送された。千雪たちは,すでに小雪御殿に引っ越してしまったので,そこにはすでに別の家族が住んでいた。


 そこで,いろいろひと悶着はあったものの,女王は,しばらくその家族の元で過ごすことを許され,その家族が親切にも千雪という異能者の所在を突き止めてくれた。その間,女王は,ゴブリン大陸で起こった出来事を手紙に書いた。そして,宅急便でリスベルの霊体の入った瓶と手紙を千雪邸に送付した。



 一方,リスベルの子供を産んだ一姫と二姫は,2回めの出産を終えた頃だった。だんだんとリスベルのいない寂しさを感じていた。そこで,彼女らは,小雪からもらった手紙を読むことにした。


 一姫「小雪さん,消えちゃったわ。リスベルもいないよーーー」

 二姫「私たち,これからどうするの?」

 一姫「もう寂しいから,小雪さんからもらった手紙読むね。えーーと,,,」


 その手紙の内容は,,,男性自身を具備させる方法が詳細に記載されていた。


 一姫「何,これ。おもしろーーい!!」

 二姫「ほんと,おもしろいね。私たち,合体すれば治癒魔法が使えるわよ。合体して,男性自身をつければ,いいのね? 男性自身は,颯太のを切っちゃえばいいわけか。どうせすぐ回復させるから気づかないわよ」

 一姫「ちょうど,今なら妊娠していないから合体も可能よ。今,やりましょう,颯太呼んできて!」


 一姫と二姫は,颯太の男性自身を材料にして,男性自身を具備させた。精子を造る機能が活性化するには,1,2週間必要だった。


 でも,その後,彼女らは両性具備者として,エッチにはげんだ結果,お互い相手の子供を妊娠することができた。かくして,彼女らは,寂しさを解消することができ,いつしかリスベルの存在も忘れていった。


ーーー


 

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第3節 小雪が行くーゴブリン大陸編ー @anyun55

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