第16話 キダルたちを部下にする

フララは,どれくらい意識を飛ばしていたのだろうか?気がついたら,自分は誰かに運ばれているようだった。


 フララ「え?誰?」


 フララを運んでいた男のひとりは,フララに言った。


 「お?気がついたかな?お嬢さん。もうちょっとおとなしくしてちょうだい。もうすぐ,着くからね」


 フララは,男たちに尋ねた。


 フララ「どこに着くのですか?私を犯すのですか?私,まだ処女です。あなた方にあげるつもりはありません」


 この『処女』という言葉に,男どもは興奮した。


 男「お嬢ちゃんは,処女ですか,,,へへへ。じゃあ,もうすぐ,女になるのだね。優しくしてあげるよ。よし,ここなら,誰もいない」


 男たち5名は,フララを草むらのところに放置した。


 この状況は,フララが望んでいたことだとはいえ,意識を失ったのはまったくの不覚だった。


 男たちは,女性を犯すときは,まず,女性の魔法を封じる必要がある。魔力封鎖錠を使うのが基本だが,かなり高価なもので一般人には手が出せない。もうひとつの魔法封じは,魔力無効化結界でフララの体を覆う方法だ。だが,せいぜい1,2分しか有効ではない。実用性に乏しい。


 この状況では,そんな面倒いことはしなくていい。ただ,『魔法を使えば,殺す』と脅せばいいだけだ。それに,15歳くらいの少女が使う魔法など,せいぜい初級魔法程度だ。恐れる必要などない。


 男たちは,匕首を出して,少女に迫った。


 男「われわれに危害を加えると,お前の命が死ぬことになる。わかったな?」

 

 フララは,納得して返答した。


 フララ「私は,処女です。でも,生きていくためお金を稼がないといけません。それで,娼婦になるためにこの娼館街に来ました。この場で私の処女を奪ってもいいですけど,お金が手に入らないと思います。私を娼館に売れば,かなりのお金が手に入ります。それとも,あなた方が客を取ってきて,私にあてがってくれますか?私の美貌なら,一回金貨5枚でも,買う人はいると思います。処女の私なら,金貨50枚はいけると思いますよ。私をあなたが方のお抱えの娼婦にしてください。客がいないときは,いくらでも私を抱いてください。あなた方に損はないと思います」


 この提案に,男たちは,顔を見合わせた。今,フララの処女を奪うか,それとも,彼女を使って金儲けをするかだ。


 答えは,すぐに出た。フララを使って金儲けすることにした。それに,客がいない時は,自由にフララを抱けるのだ。こんな美味しい話はない。処女など,金持ちの客にくれてやれ!!


 ボス格の男がフララに言った。では,宣誓契約をしろ。一生,俺たちの奴隷になれ。


 フララは,この提案に同意して,宣誓契約をした。その宣誓契約の内容は,ただの2項目だけだ。『一生,男たちの奴隷になる,契約の破棄は男たちからしかできない』それだけの宣誓契約だ。それ以外の条項はない。事実上,意味のない宣誓契約だ。


 男たちは,まったく宣誓契約というものに慣れていなかった。


 宣誓契約が終了した後,男どもの行動は早かった。旅館の2部屋を借りた。一部屋はフララと客用だ。もう一部屋は客の待合室だ。本来,このようなアレンジをする仕事は,女性のほうがいいのだが,何分にも,そんなことは言ってられない。


 客引きを担当する子分格の4名は,フララの裸体の写真を何枚か撮影した。そして,処女を買ってくれそうな金持ちの客引きを行った。


 ボス格の男は,客の待合室で,子分たちからの連絡を待った。




 ブルルルーー!


 電話が鳴った。


 客引きしている部下からだ。


 部下A「ボス,金貨50枚は無理ですが,25枚ならOKの客が見つかりました」


 ボスは,この値引きに同意した。


 部下B「非処女なら,金貨3枚ならOKの客なら見つけれます」


 ボスは,この値引きにも同意した。



 ーーーー

 しばらくして,最初の客が待合室に来た。そして,ボスに金貨25枚を支払った。待合室の部屋から,壁を隔てたフララのいる部屋には,壁にあるドアから往き来することができる。客は,そのドアからフララのいる部屋に移動した。客の持ち時間は30分だ。


 客は,フララを初めて見た。そのあまりに美しい美貌に心を奪われた。


 フララは,すぐに客から精力と寿命エネルギーを奪うことができる。でも,フララはそうしなかった。折角の機会なので,『霊綾正典』にある膨大な霊体魔法を試すことにした。


 ピュー!!


 フララは,最初に客に,霊体魅了魔法陣を展開した。発動まで,わずが2秒しかかからなかった。ある意味,精神支配と同じ作用を持つ。でも,精神支配は千雪でも3分も必要とする。それが,霊体魅了魔法陣ではわずか2秒でいい。


 フララに魅了された客は,フララの言いなりだった。その効果は絶大だった。


 フララ「この場で自慰しなさい」

 客「はい」


 客は,数分後,出すものを出して,その直後に気を失ってしまった。その後,精力と寿命エネルギーが奪われていき,ミイラ状になってしまった。フララは,ミイラになった体を窓の外から放り投げて,風魔法を吹かせて,その死体を森の中に捨てた。


 その一連の作業は5分もかからなかった。


 フララは,待合室にいるボスに次の客を呼ばせた。


 ボスは,あまりに早いと思ったが,別に不思議に思わずに,次の客に金貨3枚を受け取って,フララの部屋に行くようにした。


 2番目の客も5分で終了した。


 フララは,ボスに客を複数名,最大5名まで,同時に入れるようにお願いした。その代わり,費用は銀貨5枚にすると指示した。金のない若者をターゲットにするためだ。


 すぐには集らなかったが,30分後には,最初の5人組が見つかった。


 フララが客を取り始めて1時間が経過した。


 控え室にいるボスは,子分たちに客引きの中止を命じた。


 4名の子分全員が戻り,ボスを含めた全員がフララの部屋に集った。フララは,バスローブを羽織っていた。


 ボスたちは,フララの体型が少し色っぽくなった気がした。


 ボス「フララ,たった1時間で金貨100枚集った。これからは,俺たちを相手にしてもらう時間だ。さっさと脱げ。ふふふ」


 フララ「あら?何か勘違いしていない?あなたたちは,私に命令しているの?私は,奴隷だけど,気にくわない命令は拒否できると理解するわ。それに,今までの客はどうなったか聞かないの?」

 

 ボス「え?表のドアから帰ったんじゃないのか?」


 フララ「いいえ」


 ガラガラガラ!!


 ドアの窓がひとりでに開いた。


 ボス「え?」

 子分「何?窓がひとりでに??」


 ボスは,S級魔法士だ。敵の強さについては,充分に理解できる自信がある。フララには,まったく魔力の波動を感じない。つまり,魔法が使えないはずだ。なのにどうして念動力ができるのか?

 

 フララ「その窓から死体を捨てたわ。風魔法で森まで飛ばしたのよ」


 ボス「フララ!お前,,,念動力が使えるのか?お前からはまったく魔力の波動を感じないぞ!」


 フララ「説明するのも面倒いわね,,,」


 フララは,別の霊体魔法陣を起動した。霊体同期魔法陣だ!!


 子分のひとり,サムが,急に言葉を続けた。


 サム「わたし,フララよ。この子分の意識を私と同期したのよ。さて,私のこと,説明するわね。わたしは,コードネーム『チユキ』よ。それくらいは知っているでしょう?」


 ボス「なに?」

 子分「あ,あの,大量殺人者『チユキ』?」

 子分「今でも,死人がでているっていう,あの『チユキ』?30万人以上も殺したって」

 子分「・・・」


 サム「そうよ。正解よ。この1時間で,30人ほど客を呼んでくれたのには感謝するわ。おかげて彼らの精力と寿命エネルギーを奪ってあげたわ。その結果,,,私のおっぱいが,こんなに大きくなったわ」


 サムは,おっぱいを見せた。だが,男のおっぱいなど,見たくもない。


 フララは,バスローブを脱いだ。その胸は,もともとBカップだったのに,両方の乳房で6KgになるKカップになった。


 ボス「??」

 子分「??」

 子分「??」

 子分「??」


 サム「このおっぱいの中には,30人もの死亡した客たちの精力と寿命エネルギーが貯まっているのよ。別に,こんなことしなくてもいいのだけど,巨乳に変ると,男たちを誘惑しやすいでしょう?戦いにだって,有利だしね」


 フララは,サムへの同期を解いた。


 サムは,いままで意識を失っていたが,今,意識を取り戻した。サムは,上半身が裸だった。


 サム「え? なんで裸になっているの? え?」


 ボス「・・・」

 子分「・・・」

 子分「・・・」

 子分「・・・」


 フララ「さて,本題はこれからです。この体に触った人は,半日後に死亡します。この体には呪詛が植え付けられています。ボスは,何度も触ったから,絶対に免れません。客引きした人たちは,私の写真を撮りました。そして,たぶん,その画面に触ったのでしょう?つまり,あなた方全員が,半日後に死ぬことになります。別に,こんなこと,言うつもりなかったけど,せっかく,一生懸命客引きしてくれたので,教えることにしました」


 ボスたちは,驚愕した。な,なんと,あと半日の命だと?


 ボス「お,おい,フララ!この呪詛,早く解除しろ!命令だ!お前は,俺たちの奴隷だぞ!」


 フララ「そうよ。奴隷だけど,すべての命令を聞く必要はないわ。私にとって,奴隷とは,気に食わない命令は拒否できるのよ。それに,私は,主人をいつでも殺せるのよ。主人を殺してはいけないという契約はしてないしね」


 ボス「何?それは,俺にとって,奴隷とは,主人への絶対服従であり,主人へはいっさいの危害を加えてはならない,という意味だぞ」


 フララ「それなら,そうと,契約の文言に加えればよかったんじゃない?宣誓契約にとって,両者の認識の違いは,契約に反映されないのよ」


 ボス「何?それはほんとうか?じゃあ,契約の相手が別の理解をしてしまったら,まったくの無効になるのか?」


 フララ「そうよ。そんなことよりも,あなたがた,あと半日の命よ!どうするの?今すぐ私に殺される? それか,最後の時まで娼館で過ごすの?」


 ボス「呪詛を解除する方法はほんとうにないのか?」


 フララ「残念だけど,絶対に解除できないわ。解除できるんだったら,死者が30万人にまで達するわけないわ。でも,,,」


 ボス「でも?」


 フララ「あなたがの誠意次第ね」


 ボス「誠意?」


 フララ「そうよ。誠意を見せてちょうだい」


 その言葉に,すぐ反応したのはサムだった。サムは,その場で土下座した。


 サム「フララ様,いえ,ご主人様。私は,先ほどの宣誓契約を破棄します。そして,いまから,私はフララ様の奴隷です。フララ様,裸のままでは,お寒いでしょう。バスローブをお掛けください」


 サムは,すぐに,バスローブを拾って,フララの肩の上に羽織ってあげた」


 フララ「あら?サムは気が利くのね。じゃあ,あなたの呪詛は,なんとかしてあげましょう」


 サムの行動を見ていた他の子分たちは,誠意の意味を理解した。3名の子分は,まず土下座して誓いの言葉を述べた。


 子分A「私も宣誓契約を破棄します。いまから私はフララ様の奴隷です。フララ様,肩が凝ってきたでしょう?おもみします」

 子分B「私も同じく宣誓契約を破棄します。いまから私もフララ様の奴隷です。フララ様,足が凝ってきたでしょう?おもみします」

 子分C「私も同じく宣誓契約を破棄します。いまから私もフララ様の奴隷です。フララ様,腕が凝ってきたでしょう?おもみします」


 3名の子分は,すぐに,フララのもとに言って,フララの体をほぐした。


 フララ「お前たちも,気がきくわね。しょうがないから,サムと一緒に,呪詛をなんとかしてみましょうか?」


 ボスは,子分たちの『裏切り』を非難することはできない。この状況下では,当然の行為だ。


 ボスの取る行動は,彼らを真似るしかなかった。ボスも土下座して誓った。


 ボス「フララ様。私が,悪かったです。フララ様を誘拐してしまいました。ですが,あの状況では,私たちがそうしなくても,他のものたちがしたでしょう。だからといって,罪を逃れることはできません。ですが,まず,これを全額納めください」


 ボスは,稼いだ金貨100枚すべてをフララに差し出した。


 ボス「フララ様,ぜひお受け取りください。この金額で,私の罪をなんとか帳消しにしていただきたいと思います。もちろん,さきほどの宣誓契約は破棄します。今から,私もフララ様の奴隷です。どのようなことでも命じてください。これでも,S級魔法士です。子分たちも全員S級魔法士かS級剣士です。戦闘能力はかなりのものです」


 フララ「お前は,なんていう名前?」


 ボス「キダルといいます」


 フララ「では,キダル,私は,もっと男どもの生け贄がほしいわ。今まで通り,男どもをここに連れてきてちょうだい。一度に10人でもいいわよ。のぞき見だけするだけと言えば,すぐ来るでしょう。銅貨3枚でも5枚でもいくらでもいいわ。どうせ殺すのだから,金額などどうでもいいのよ。目標は,300名くらいね。それと,呪詛が発動する1時間前には,仕事を止めること。いいわね」


 キダル「了解しました。フララ様,その巨乳を撮影させてください。すぐに生け贄を連れてこれるでしょう」


 フララ「確かにそうね」


 フララは,掛けてもらったバスローブを再び脱いだ。Kカップの胸が再び出現した。


 キダルと部下たちは,携帯で写真を何度も撮っていった。


 キダル「よし! 野郎ども,フララ様の生け贄を狩りにいくぞ!」


 子分たちは,「OKボス!」と元気な声を発して,旅館から出ていった。


 のぞき見で銅貨3枚は強烈だった。控え室に10名が揃った時点で,となりのフララの部屋に連れていかれた。フララの部屋に入った時点で,霊体魅了魔法陣を植え付けられてしまい,フララの思い通りになってしまう。今では,一度に10名の精力・寿命エネルギーを吸収することが可能だ。


 その後,わずか3時間くらいで,300人の犠牲者を達成した。フララの胸は,相変わらず6KgになるKカップを維持していた。ただし,10倍濃縮状態だ。


 フララにとって,こんなにエネルギーを補給する必要などないのだが,なぜかこの霊力の肉体を支配してしまうと,このようにヒトを単なる餌の対象にしていまう行動をとってしまう。


 それから,400名の客から奪った収納指輪の解錠作業を行った。サムは,解錠作業のスキルを持っていた。もともと,泥棒出身だったため,職業の一環として,そのスキルを身につけてきた。


 その結果,奪った金額の合計は,金貨5万枚にもなってしまった。この金額があると,魔体を手に入れることも可能になる。


 フララが彼らの命を救うとすれば,彼らの霊体を肉体から離して,肉体から離れた霊体が浄化されないように,この世に留めるだけでよい。フララの特異能力を使えばそれは用意にできる。だが,フララには『霊綾正典』がある。せっかくなので『霊綾正典』を使ってみることにした。


 フララは,『霊綾正典』の中から霊体捕獲魔法陣を選んだ。これを使うと彼らの霊体を『霊綾正典』に紐つけすることが可能だ。


 フララは,霊体捕獲魔法陣を展開して,彼らの5体の霊体を『霊綾正典』に紐つけした。そして,霊体を失った5体の肉体から髪の毛を引き抜いた。ついでに,それらの肉体から,精力・寿命エネルギーを吸収して,ミイラになった肉体を廃棄した。


 フララは,霊体となったキダルから,この王都で魔体を手に入れる場所を教えてもらった。このガルベラ女王国の王都では,魔体は,隣国のような魔体研究所ではなく,魔体製造販売施設で入手することができる。


 フララは,そこで,ひとり金貨1万枚を支払い,各自の髪の毛を渡して5体分の魔体を入手する手続きをとった。


 このガルベラ女王国では,製造技術が隣国よりも進んでて,魔体の生成には1時間程度で完成する。その後,フララが霊体を霊媒師に渡して,霊媒師が霊体を魔体に移し,魔体調整師が霊体と霊体格納魔法陣との調整をしていくという手順を取る。もっとも,そのような作業は,フララだけでもできることではあるのだが,,,


 1時間半後,キダルたち5名は,新しい魔体を手に入れて再生した。


 キダルは,改めて,フララに土下座した。子分たちも土下座した。


 キダル「フララ様。新しい魔体をいただき,誠に感謝しております。この身,粉骨砕身,フララ様のために全力で仕えさせていただきます」

 

 フララは,亜空間収納から,魔法石を頂いた指輪10個を取り出した。いずれも,客から奪った指輪だ。それを2個ずつ彼らに渡した。


 フララ「この指輪を着けなさい。少しは,魔力がアップするでしょう。その指輪の魔力を体内に吸収し終わったら,また,新しい指輪を渡します。じっくりと確実に吸収していきなさい。これから,戦争がはじまりますから」


 キダルたちは,顔を見合わせたが,ただ,フララの言葉に従うだけだ。


 キダル「仰せのままに」

 子分たちも,言葉は発しなかったが,恭順の意を示した。



 フララは,彼らを連れて,ダンやエバルダのいる旅館に移動した。キダルたちは,別の部屋をあてがって,しばらく魔力の吸収に集中してもらうことにした。


 

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