第13話セダル様の覚悟
ー 王都の市街地 ー
その日の夕方,王都のあちらこちらに号外が出た。それは,王都市民をネブル村に移住してもらうというお触れだ。即時,実行するように命令が出された。
そのお触れの隣に,男性の顔写真つきの変ったお触れがあった。
『親愛なるフララ様
私は,王族のセダルです。19歳です。あなたを見つけないと3日後に,私は死ぬ運命です。でも,死ぬくらいなら,あなたに殺されたいです。王宮の門は,あなたを歓迎しています。あなたの安全は保障します。明日までに,ぜひ来てください。死ぬ前に,あなたに会いたいです。ぜひぜひ来てください』
この文章は,一瞬で,王都の皆が知ることになった。
「え?イヤーーー!セダルさまーーー浮気者!」
「私のセダルさまーーーどうして,どうして,私でないの?」
「セダルさまーーー!私は,二番手でいいわーー私をだいてーーー」
などなど,乙女,女性たちの慟哭が町中に響きわたった。
「ふん!セダルのどこがいいんだよ!ちょっと,顔がよくて,ちょっと,頭がよくて,ちょっと,魔法がうまくて,,,,」
「それって,やっぱり,おれたちは,醜男で,無能ってことだな,,,」
「やっぱり,雲の上の人はちがうな,,,」
男たちは,自分たちがセダルよりも劣ることを自覚せざるをえなかった。
「でもよ。このフララって,だれよ?」
「わからん?聞いたこともねえ」
「きっと,美人なんだろうな?」
町中で,フララが誰なのか,議論した。だが,誰も知るものはいなかった。フララの仲間以外には,,,
ーーーーー
ー 主人の別荘 ー
この情報は,すぐにフララの知ることになった。S級魔法士A,名をトルザンというが,トルザンは,掲示板を写した写真を,携帯でフララに見せた。
トルザン「フララ様。王族のセダル様が,フララ様に会いたがっています。どうしますか?セダル様は,この国No.1のハンサムで,頭がよくて,魔法もSS級レベルだそうです。結婚相手には申し分ないでしょう」
フララは,渡された携帯を見た。
ドキン,ドキン,ドキン
フララは,未だかつて,男性に恋心を持ったことはなかった。だが,この写真に写っている顔写真をみて,初めて,恋心を持った。15歳の乙女の気持ちが蘇った。
フララ「トルザン,私,,,王宮にいくわ!」
トルザン「へへへ,セダル様の精力と寿命エネルギーを奪うのですね?」
フララ「たぶん,そうなるわね。それに,安全を保障するって,言うのだから,そうそう嘘はつかないでしょう」
トルザン「私もそう思いますね。でも,王宮から出たら,マークされると思いますよ」
フララ「そうね。もうこの別荘には戻れないわね。避難所を確保してから,王宮に向かうのがいいわね」
トルザン「わかりやした。そのように手配しましょう」
フララ「ところで,失踪者は,合計でどれくらいになったの?」
トルザン「だいたい1万人ちかくはいきましたよ。もう,火の海作戦に移ってもいいんじゃないですか?王都に住人がいなくなれば,火災で,女,子供が巻き添いになる心配はありませんぜ」
フララ「そうね。それが一番ね。じゃあ,後で連絡するわ。避難所の確保をしてちょうだい」
トルザンは,仲間を連れて行動に移った。
その後,フララは,トルザンから,避難所の確保をしたとの連絡を受けた。フララは,ちょっと,化粧をして,自分の服装を確認してから,別荘を出た。
すでに,夜の7時ごろになっていた。ここから,王宮まで,徒歩で1時間だ。だが,フララは,空中浮遊が使える。20分ほどで王宮に着いた。
ー 王宮 ー
王宮の門番は,空中からゆっくりと舞い降りる絶世の超爆乳美女を見た。門番は,フララに会ったことはないが,すぐにフララだと判断した。
というのも,フララは,魔力の波動を持たない美女だとすでに知れ渡っているからだ。
門番は,フララに質問することもなく,門を開けた。
門番「あなた様は,フララ様ですね?」
フララ「そうです。セダル様に会いに来ました」
門番「お待ちしておりました。すぐに連絡しますので,少々お待ちください」
門番は,すぐに女王秘書に連絡した。それから,まもなく,女王秘書,ボボ隊長,ベベ隊長らがやってきた。
彼女ら3名は,フララを初めて見た。そして悟った。彼女らの負けだと。その美貌,その爆乳,その冷酷な気品,,,どれをとっても,フララに勝るものはなかった。
女王秘書「フララ様ですね?お待ちしておりました。この王宮では,フララ様を害するような行動は取りませんので安心ください。お望みなら,宣誓契約していただいてもかまいません」
フララ「いいえ。その必要はありません」
女王秘書「では,こちらに,セダル様が,お待ちしております」
女王秘書は,王宮の貴賓室に案内した。
ー 王宮貴賓室 ー
王宮の貴賓室は,とても豪華に造られていたが,唯一無いものがあった。ベッドだ。急遽,ベッドが運ばれて,かつ,蚊除けのピンク色の蚊帳も用意された。その他,飲み物,ケーキ類,など,準備万端だった。
このお見合い大作戦では,間違いなくフララは,王宮に来るだろうと秘書は確信していた。だって,セダルの顔写真を見たら,どんな女の子だって,メロメロになるのは明白だったからだ。セダルの最大の武器は,その,甘いマスクにある。その武器こそ,TU級魔法や剣技にもまさる武器だ。
フララは,貴賓室に通された。セダルは,普段着でフララを出迎えた。セダルは,立ち上がって,深々と礼をした。
セダル「フララ様。よくぞ,おいでくださいました。私が,セダルです。今日,明日に限ってですが,女王様から全権を預かっております。どうぞ,着席ください」
フララ「ありがとうございます」
フララは,着席した。
セダルは,他のものたちに席をはずさせた。
セダルは,自分の苦境を脱する起死回生の策はもっていななった。ただ,自分の苦境を伝えるだけだ。
セダル「フララ様。私は,王族でありながら,あと2日後には死ぬ運命です。あなたを討伐できないからです。私の実力ではとても討伐することはできません。せめて,この童貞を卒業してから死ぬことに決めたのです」
フララ「その言葉,ほんとうかどうか,試していいですか?」
セダル「かまいません」
フララは,立ち上がって,その場で,オンピースの服を脱いだ。22kgもの超爆乳のおっぱいと,直径4cm長さ4cmの乳首が露わになった。
セダルは,その爆乳の大きさにびっくりした。一瞬で下半身が反応してしまった。
フララは,全裸になって,また,ソファに座った。
フララ「私の胸には呪詛が掛けてあります。触れば半日後に死亡します。いかがですか?」
セダルは,一瞬,怯んだ。だが,これも,運命だと思った。それに,呪詛なら,解除できるかもしれないという,一縷の望みもある。
セダル「わかった。その美しいおっぱいに触りましょう」
セダルは,恐る恐る,そのおっぱいに触った。22kgにもなるおっぱいなのに,べろんと垂れたおっぱいではなく,柔らかいが,張りのある,大型ドンブリを逆さにしたような形状をしていた。
フララ「触りましたね,,,この呪詛は,解除することはできません。あなたの命はあと半日です。あなたの覚悟,よくわかりました」
セダル「そうですか,,,あと,半日ですか,,,でも,童貞を卒業するには,充分な時間だ」
フララは,少し笑って言った。
フララ「そうですね。この体でいいなら,いくらでも,抱いてください」
この時,ケンから緊急連絡が入った。それは,隣国のガルベラ女王と約束した,子供が産めるフララの魔体を入手した,というものだ。
このタイミングで,こんな,自分の魔法因子による魔体が入手できるとは思っても見なかった。
ボァーー!!!
フララ用の魔体がフララのそばに転送された。ケンが,標的魔法陣でフララの元に転送させたのだ。
フララは,その魔体を見てびっくりした。その魔体は,まさに,『フララ』だった。魔界で,リスベルに殺される前のフララだ。綺麗なワンピースを着せられていた。
フララは,自分の魔体を見て,涙が出た。ボロボロと涙が出た。
セダルは,フララのそばに突如現れた眠れる美女を見て言った。
セダル「フララ様。この眠れる美女は,いったい,,,誰ですか?」
フララ「この女性こそ,私なのです。私は,魔界で殺されました。その時の私の姿です。今,支配しているこの肉体は,私の支配者,千雪様の体なのです」
フララは,セダルに向かって言った。
フララ「セダル様,よろしければ,この横たわっている肉体で,セダル様に抱かれたのです。よろしいでしょうか?巨乳ではありませんし,たいして美人でもありません。でも,この体なら,妊娠することも可能なのです。生殖機能部分は,人間の組織で出来ています。卵子には,私の魔法因子が含まれてします」
セダル「その魔体医療技術は,隣国のガルベラ女王国のものですね?半日しか時間がないけど,正直言って,両方のフララを抱きたいのですが,,,いかがでしょう?」
フララは,その言葉に顔を赤くして頷いた。
フララの霊体は,すぐに,横たわっている魔体の頭部に組まれている霊体格納魔法陣の核に飛び込んだ。
フララの霊体がこの魔体を支配してみてみると,これまでに感じたことにない,『しっくり感』を感じた。フララは,独り言を言った。
フララ「これが,本来の『自分用の魔体』を支配する,ということなの??肌の毛一本一本まで,感覚を知覚することができるわ!!」
フララは,これまで使用してきた霊力の肉体を亜空間収納に格納した。
今,この空間には,セダルと生前の姿をしたフララしかいなかった。セダルは,フララにだけ,裸にさせているのもまずいと思い,セダルも,服を脱いで全裸になった。
セダルの精悍な裸体が露になった。フララは,セダルを見た。もう少し,早くこの体が手に入っていたら,セダルに呪詛の体を触らせることもなかったのにと後悔した。だが,もう遅い。セダルの寿命は,あと半日しかない。
セダルは,フララをお姫様だっこして,ベッドに運んだ。
セダル「フララ様,では,抱きます。初めてなので,下手くそですが,我慢してください」
フララ「いいえ,セダル様。嬉しいです。この体を支配してみて,初めて,自分の体を全身全霊で感じることができます。私は何度も犯されてきました,,,でも,この体で,抱かれる感覚は,なにものにも代えがたいものです。セダル様,どうぞ,全力で抱いてください!!」
セダルは,軽く頷いて,フララの唇にキスした。
そして,かわいいCカップのおっぱいをやさしく触り,乳首にもキスした。
これまでの肉体では感じることのできなった感覚が,フララを襲った。その感覚は,もし生身の体であっても,感じることはできなかったであろう,甘く,切なく,そして,歓喜に満ちた感覚だ。
このときを経験することで,フララは,もうあとはどうなってもいいと思った。千雪を裏切ることはできないが,このまま,征服をやめて,月本国に帰ったとしても,決して千雪の命令違反にはならないだろうと思った。
・・・
セダルは,生前の姿をしたフララを抱いた。
そして,また,フララの体の上に倒れて,体を休めた。それから,まもなく,セダルは仮眠してしまった。フララも,セダルの体の重さを感じつつ,そのまま仮眠した。これまで,ほとんどまともに寝たことが無かったので,とっても気持ちのいい仮眠だった。
ー 2時間が経過した ー
セダルが,先に目を覚ました。フララのかわいい乳首を吸いながらフララを起こした。
セダル「フララ?起きた?」
セダルは,フララを呼び捨てにした。
フララ「?セダル様?わたし,,,寝ていたのですね??このところ,一睡もしていなかったので,しっかり寝てしまいました」
セダル「そうですか。では,フララ,あの,巨乳の体を抱きたいのだけど,いいですか?」
フララ「殿方は,やっぱり巨乳が好きなのですね?」
セダル「まあ,,,そうかもしれません」
フララ「では,体を換えます。どいていただけますか?」
セダルは,フララの体から離れた。その一瞬で,魔体の体と霊力の体が入れ替わった。この入れ替えの速度こそ,フララの得意とする能力だ。決して,誰にもまねはできない。霊力の体の表面には,すでに薄い防御層があるので,精力や寿命エネルギーが奪えない状態だ。
セダル「これは,驚いた。こんな一瞬で替わるものなのか?」
22kgものおっぱいをした霊力の体を支配したフララは,ニコニコと笑っていった。すでに,以前の魔体は,亜空間に収納した。
フララ「セダル様。あなたは,いくらでも,この呪詛の体を抱いてもいいのですよ。セダル様は,もう,死が確定しているのですから。遠慮無く,最後の時を楽しんでください」
セダル「そうですね,もう遠慮することはないのですね」
セダルには,もう,何も恐れるものはなかった。あと10時間後には,死んでしまう。それまでは,自由なのだ。健康体なのだ。
セダルとフララは,それから,数時間かけて,性を貪っていった。
ーーーー
セダルは,フララに,今後の予定を聞いてみた。
セダル「フララ,今後は,どうするのですか?まだ,人殺しを継続するのですか?」
フララ「いや,もう終わりにします。この世界から去るわ。セダル様の死ぬ姿を見たくないの」
セダル「そうか,,,それなら,死に行く私の願いをひとつ聞いてくれないか?」
フララ「私にできることなら,なんでもするわ」
セダル「私の任務は,フララの,この霊力の体を破壊することだった。その体を破壊させてもらえないだろうか?私の最後の願いだ」
フララ「そうですよね,,,でも,,,」
フララは,さすがに,霊力の体を差し出すのは躊躇った。でも,,,でも,,,セダルに抱かれて,セダルを愛し始めて,,,セダルにお願いされては,断るわけにもいかなかった。
フララは,セダルが命をかけてその霊力の体に触ったことを思い出した。そうなのだ。セダルは,死を覚悟したのだ。その彼からのたってのお願いだ。
フララは,同意することにした。
フララ「セダル様。わかりました。セダル様は,その命をかけたのですものね。どうぞ,この体を破壊してください。目撃者が必要ですよね。どうぞ,お呼びください」
セダル「ありがとう。では,少々待ってくれ。今,呼んでくる」
セダルは,貴賓室から出ていった。
フララは,今,支配している爆乳の霊力の体が気に入っていた。でも,セダルがこの体を破壊したい,と言われて,,,結局,断れなかった。
フララは,裸体のまま,起立した姿勢を保ち,亜空間から魔力の体を出して,そこに乗り移った。
魔体を支配したフララは,服を着て,セダルを待つことにした。
フララ「霊力の体さん。ありがとう。よく1万人もの人の精力と寿命エネルギーを吸収してくれたわ。今から破壊されると思うけど,でも,あなたのこれまで頑張ってきたことに感謝しています。ほんとうにありがとう。この世界に来て,生前の姿の魔体になれて,おまけに,妊娠もできる可能性があるだなんて,ほんとうに嬉しい。夢みたい。千雪様,ごめんなさい。千雪様からいただいた霊力の体に展開している防御の層は解除します。千雪様,,,ごめんなさい,,,」
フララは,誰も支配していない霊力の体に向かって一礼した。魔体の目から涙が流れてきた。
その後,セダルは,女王秘書,ボボ隊長,べべ隊長を連れてきた。彼女らは,全裸の爆乳のフララが立っているのを見た。そのそばには,見知らぬ女性がいた。
セダルは,その見知らぬ女性を皆に紹介した。
セダル「彼女は,私の婚約者です。フララといいます」
「フララ??」
「あの,ターゲットのフララ??」
「じゃあ,その裸の女性はだれ??」
女王秘書たちは,状況がよく飲み込めていなかった。
セダル「いやだなーー。たまたま同じ名前だけの話ですよ。その霊力をもち,呪詛の体を支配するフララは,死を覚悟しました。反省して,死を受け入れました。いまから,この魔法剣で,一片の肉体の形も残さずに,切断していきます。見ていてください!!」
セダルは,剣をだした。そして,その霊力の裸体に向かっていった。
シュパーー!!シュパーー!!シュパーー!!シュパーー!! シュパーー!!シュパーー!!シュパーー!!シュパーー!! シュパーー!!シュパーー!!シュパーー!!シュパーー!!
何十回となく,振るわれた剣は,霊力の体をズタズタに切断されていった。手,足,胴体などというヒトの体の一部だと判断するのもできなくなるほどだった。
シューーー-----!!!!
切断された体は,素の霊力に戻り,アメーバーのように,お互いがくっついて,テニスボール状に変化していった。
この現象を見たセダルや女王秘書,ボボ隊長,べべ隊長は,目を疑った。初めて見る現象だからだ。
実は,魔体のフララも初めて見る現象だった。
この時だった。
ダー--ン,ダーーーン!!ダーーーン!!
王宮に爆発音が鳴り響き,その振動で,フララたちは,尻餅をついてしまった。その勢いで,ボール状になった霊力の塊は,すーっと透明に変わって,粘液状に変化して,フララの魔体の股間部を経由して,子宮内部へと侵入していった。この事実は,フララ以外,だれも気がつかなった。
フララは,先ほどのテニス状のボールを見たとき,完全に,その霊力の塊を制御できていることを認識した。かつ,この魔体の体は,自分の魔法因子をもとにしているので,その制御力は,千雪の魔法因子を元にした霊力の体よりも,何倍も精緻に制御できることを知覚した。
フララは,いい意味でやばいと思った。
その意味は,すなわち,たった今,フララは圧倒的なパワーを得てしまったのだ! これまで以上に,精緻に展開できるパワーだ。
フララは,今,この王宮の外で何が起きているか分からなかった。でも,なんら恐れる感覚はなかった。
セダルは,この部屋の中で,一番か弱いであろうフララを抱いて言った。
セダル「フララ!!大丈夫か!お前は力がないのだから,私の後ろで隠れていなさい」
フララは嬉しくなった。これが殿方に守られる,ということなのか!?
フララ「はい,セダル様。隠れるようにします」
フララは,弱々しくセダルの後ろに隠れた。
ボボ隊長とベベ隊長は,セダルとその婚約者フララを守らなければならないという使命感を感じた。
ダーーーン!
貴賓室のドアが,爆風で吹っ飛んだ。
セダル,ボボ隊長,ベベ隊長らは,防御魔法を瞬時に起動して,破壊されたドアの破片が爆風で飛び込んでくるのを防御した。
破壊されたドアの背後には,鷲の外観をしたヒト型の魔獣がいた。それも10名だ。左手には,魔法石をいただいた指輪を3本もしていた。魔力不足を魔法石で補っている証拠だ。
魔獣のボスが,セダルたちに声をかけてきた。
ボス「この王宮は,遷都して無人になったのではなかったのか?無駄な戦いはしたくない。この場所から去るなら,追撃はしない。さっさと去れ!」
ボボ隊長「遷都はするけど,まだ途中なのよ,あなたがたは何なの?なんで攻撃してるの?」
ボス「われわれは,お前たちの言う北部領域の魔獣族だ。この王宮が遷都する情報を得て,破壊しにきた。王宮を破壊した実績があれば,われわれの評価は大幅にアップするからな,ふふふ」
ボボ隊長「なるほど。無人でも,破壊した実績が大事なのね。なんかサラリーマン根性丸出しね」
ボス「まあ,そうだ。それに,別の仲間が,王都を今,順次,火炎攻撃中だ。無人だが,王都が火の海になれば,われわれ『鷲躍小隊』の名前が,俺の王国で有名になるからな,ふふふ」
ボボ隊長「北部領域って,王国なの?ぜんぜん情報がないんだけど」
ボス「ああ,そうだ。そんなことより,さっさと逃げるのか,それとも,ここで,戦うのか?」
ボボ隊長「どうも,わわわれに分が悪いようだわ」
セダル「ここは,逃げましょう。ベベ,転移の準備をしてくれ」
ベベが,転移を発動しようとしたときだった。
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
『鷲躍小隊』の魔獣10体が,その場に倒れてしまった。それを見たベベは転移魔法陣の発動を中止して,魔獣の様子を見にいった。
ベベ隊長「セダル様,全員死んでします!!死因は不明です。これは,いったい,どうゆうことでしょう??」
セダル「・・・・,わからんが,とりあえずは,逃げなくてよくなった,ということかな?」
このとき,フララが,セダルの仲間に重要なことを言った。
フララ「セダル様は,あの巨乳の体に触りました。呪詛がかけられているのを知ってさわったのですから,セダル様は,もうまもなく死んでしまうことになります」
この言葉を聞いて,魔獣から魔法石などの貴重品を奪っていたベベは,すぐに反応した。
ベベ隊長「セダル様!あの体に触ったのですか!どうしてですか!触ったら死ぬって,百も承知のことでしょ!」
セダルは,返事に困った。『どうせ死ぬなら,童貞を卒業してから死にたい』なんて,本当のことを言いたくなかった。
そこで,ちょっと,綺麗な言い訳を考えた。
セダル「これは,あの爆乳のフララとの取引だ。私の命と引き換えに,爆乳の体を破壊してもよいという取引だ。私はもうじき死ぬ。女王様によろしく伝えてくれ」
ボボ隊長は,すぐに延命策を見つけた。
ボボ隊長「秘書! すぐに霊媒師と魔体調整師を魔体研究所に呼んでください!セダル様の霊体を確保して,魔体に移します!」
女王秘書「分かったわ。すぐに連絡するわ。セダル様,すぐに魔体研究所に移動してください! ボボ隊長,ベベ隊長! 魔体研究所までセダル様の護衛をお願いします!」
ボボ隊長「了解!!」
ベベ隊長「了解!!」
セダルは,死ぬ覚悟は出来ていても,やっぱり死は怖かった。すぐに,王宮から1kmほど離れている魔体研究所に向かって出発した。その後をボボ隊長とベベ隊長が続いた。
魔体のフララは,女王秘書とともに貴賓室に残された。女王秘書は,電話で霊媒師と魔体調整師に連絡を取ろうとしたが,まったく繋がらなかった。
女王秘書「くそっ! もう! ぜんぜんつながらないわ!」
女王秘書は,窓越しに王都の市街地の様子を見た。
王都の市街地は,火炎がゴウゴウと舞っていって,まさに火の海だった。ボボ隊長から女王秘書に電話連絡が来た。
ボボ隊長「秘書! 魔体研究所には,誰もいないわ!火が廻っていたけど,氷結魔法でなんとか食い止めれたわ。霊媒師と魔体調整師はどうしたの?まだ来ないの?もう,セダル様は,なんか,体調がおかしくなってきたのよ! 回復魔法でなんとか発作を抑えているのけど,もう10分と持たないわ! すぐに呼んで来てーーー!!」
女王秘書「でも,ぜんぜん繋がらないのよ!!もう,間に合わないわ!!」
フララ「・・・・」
フララは,女王秘書の手をとった。女王秘書は見怪訝な顔をしてフララを見た。
女王秘書「?何?」
ボァー-!!
標的魔法陣が発動した。その標的魔法陣はセダルに繋がっていた。フララは,女王秘書を連れて,セダルのもとに転移した。そこには,セダルのほかに,ボボ隊長とベベ隊長もいた。
ボボ隊長「え? 秘書? なんで? ここの座標点知っているの?」
ベベ隊長「そんなことより,霊媒師は? 魔体調整師は?」
女王秘書「ダメなのよ!!ぜんぜん捕まらないわ!」
うううッ
ダーン!!
その時,セダルが,声を上げて倒れた。
ボボ隊長「セダル様ーー」
ボボ隊長とベベ隊長は,急ぎ回復魔法をかけた。その行為を見て,フララは,叱るように怒鳴った。
フララ「無駄よ! どいて!」
フララの,その威厳に満ちた言葉は,ボボ隊長とベベ隊長をひるませた。
フララは,セダルの体を一瞬に凍らせて,頭部分の死亡に至る時間を遅らせた。一般人の死亡の場合,霊体がいったん肉体から離れてしまうと,どこに行ってしまうかわからない。霊体を肉体に留めさせる方法は,回復魔法よりも,この凍結魔法のほうが優れている。
今のフララは,ケンの知識だけでなく,エバルダの知識も持っている。魔体調整師が,そして,霊媒師がどのようなことをするのかを熟知していた。
ケンもエバルダも,この魔体研究所で魔体を得たのだ。ケンの場合は,魔体を得たあと,すぐに,デラブラ市の乙女教の施設に転送された。
フララ「セダル様の魔法因子は,どうやって抽出するの?」
憲兵隊隊長のベベ隊長は,業務上,頻繁にその作業をしてきたので,熟知していた。
ベベ隊長「私がやります」
ベベ隊長は,低温状態になったセダルの頭髪を数本抜いた。そして,ベベの亜空間から魔法因子抽出魔法石を取り出した。この特殊な魔法石は,魔界から導入したものだ。この国では,ベベの他に,魔体調整師と,女王しか持っていない大変貴重なものだ。
この研究所には,魔体生成器が3台ある。その部屋に行くには,パスワードでがっちりとガードされたドアを開けなければならない。
ボボ隊長「でも,魔体生成器は,このドアを開けないといけないのよ。パスワードが分からないわ。女王秘書!!せめて,それだけでも聞いてきてよ!!」
女王秘書は,なんどもなんども電話をしているが,まったく電話に出てくれなかった。王都が火の海になって,この研究所も,火災にあっていたのだがから,全員,避難したのは,容易に想像がつく。
女王秘書「そんなこといったって,,,」
ガチャ!!
だが,その時,ドアのロックが開いた。フララは,そのドアを開けながら言った。
フララ「きっと,神様がこのドアを開けてくれたのね,フフフ」
ボボ隊長「・・・」
ベベ隊長「・・・」
女王秘書「・・・」
呆然としている彼女らを見て,フララは言った。
フララ「さっさと,抽出した魔法因子を魔体生成器に注入しなさい!」
呆然としたベベ隊長は,慌ててその作業をした。魔法因子をその魔体生成器に注入して,魔獣から奪った魔法石を全部,その生成器のエネルギーにした。その量は,充分に生成するに足るものだ。
ブーーン,ブーーン,ブーーン
生成まで約2時間かかる。それまでセダルの霊体がそのまま,肉体の中にじっとしてくれているのか?浄化されないのか?そこが問題だ。そのため,霊媒師が必要となる。霊媒師がいれば,その体にセダルの霊体を移せることができる。
ボボ隊長「あとは,霊媒師ね。どうやって,霊体を保持するればいいの??」
フララ「そんなこと心配するよりも,敵が来たようよ。『鷲躍小隊』の仲間のようね。もっとも,誰かが一足先にケリをつけたようだけど」
ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!
人が倒れる音を聞いて,ボボ隊長とベベ隊長は,ドアの外側の様子を見にいった。そこには,『鷲躍小隊』と思われる鷲の姿をしたヒト型魔獣が5体倒れていた。すでに死んでいた。その死に様は,王宮の貴賓室の場合と同じだった。
ボボ隊長とベベ隊長は,この時,初めて理解した。魔獣を殺したのはフララだと断定した。こんなことができるのは,あの,爆乳のフララしか考えられない。でも,あの爆乳の体は破壊された,,,でも,霊体は?どんな魔体にでも憑依できる特殊能力を持つ『フララの霊体』,,,
そこまで考えを巡らすと,答えが自ずと導かれた。でも,今,目の前にいるフララはセダルを助けようとしている,,,今は,セダルが魔体を手に入れるまで,騒がないことにした。
とにもかくにも,最優先すべきは,セダルの『霊体』をなんとか保持することだ。
ボボ隊長とベベ隊長がセダルのもとに戻ってみると,フララは,変なことをしていた。フララは,自分の額をセダルの額につけていた。
ボボ隊長「フララさん?何をしているのですか?」
その質問に,女王秘書が答えた。
女王秘書「セダル様の霊体がもうもたないと判断して,フララ様が非常手段をとっているところです。一番大事な時です。静かにしてください」
女王秘書は,フララをフララ様と呼んだ。なにせ,フララは,セダルが婚約者と決めた女性だ。フララ様と敬称で呼ぶのは当然だと思った。
フララは,自分の霊体をセダルの霊体に接触させた。これは,フララが悪霊大魔王の一部となったときに,身につけた,いや,むりやり身につけられてしまった特殊能力だ。他の誰もまねのできないものだ。霊媒師にだって,真似のできないものだ。
フララは,セダルの霊体をフララの霊体に接触させた状態で,セダルの肉体からはずして,フララの肉体に戻した。
セダルの霊体は,フララの霊体と接触している間は,霊的浄化や輪廻転生による消滅から免れることができる。つまり,神の摂理に抵抗することができるのだ。
フララは,ゆっくりとセダルの額から離れた。セダルの霊体はセダルの体から離れた。セダルの霊体は,今,フララの霊体と接触して,フララの体内にある。フララの頭部にある霊体格納魔法陣に,フララの霊体を経由して繋がっている状態だ。
この状態になってしまうと,フララは,自分の記憶を隠すことができず,セダルの記憶と共有状態になってしまう。
フララは,折角の機会なので,魔体が生成されるまでの間,セダルの霊体に霊力の修行をするようにお願いした。フララは,セダルがこれまで体験したものを追体験をすることによって,魔法の修行をすることにした。
霊体と霊体が接触するメリットは,お互いの優れた点を共有できることにある。
ーーーー
ー 王宮の奥の間 ー
鷲躍小隊は10体で構成されている。その他,鷲翔小隊,鷲変小隊は5体編成,鷲流小隊,鷲駆小隊は15体編成とバラバラだが,総勢50名の規模で,この王都を攻めている。攻めているといっても,急遽,遷都をしている状況を知ったので,鷲総中隊の隊長は,無人に近い王都と王宮を攻めて,手柄を手を入れるという安直な作戦だ。
鷲総中隊の隊長は,王宮の奥の部屋で,のんびりとお茶を飲みながら,部下たちがもたらしてくれるであろう成果を楽しみにしていた。
そこに,一体の鷲魔獣が報告しにきた。
「隊長,大変です。2階の貴賓室と思われるところで,鷲躍小隊10体全員が死んでしました。死因はまったく不明です!!」
さらに,もう一体の鷲魔獣が報告しにきた。
「隊長,報告します。魔体研究所で,鷲翔小隊5体全員が全滅しました。死因はまったく不明です!!」
隊長は,それを聞いて,なにかとんでもない『化け物』がいると直感した。死因が不明ということは,われわれの未知の方法で殺されたことになる。
隊長「わかった。残された部隊で,ヒト化に変身できる能力者は何体いる?」
最初に報告した鷲魔獣が返答した。
鷲魔獣「鷲変小隊の5体は,ヒト化への変身が可能です。そのほか,鷲流小隊と鷲駆小隊にも,確か2体ほど可能な者がいたと思います」
隊長「そうか。9体か,,,では,彼らをヒトに変身させて,誰がわれわれの仲間を殺したのか,探りをいれさせなさい。決して,手を出してはならぬ。たぶん,われわれが束になっても勝てない相手だろう。相手の素性を探るだけでいい。それも,慎重にな。あとで,竜魔獣の隊長に討伐をお願いする」
鷲魔獣「はい。では,すぐに行動に移します」
隊長「まて,これ以上,被害の拡大を阻止するため,調査隊以外は,1時間後にここに集合させなさい。その後,われわれは一足先に北部領域に戻る」
鷲魔獣「了解です。すぐに手配します」
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ー 魔体研究所魔体生成器室 ー
魔体生成器のある部屋では,フララはセダルの魔力操作を修得中で,セダルもフララの霊力操作を修行中だ。
フララは,この魔体を得たので,すぐに月本国に帰りたかった。だがそれ以上に,セダルが魔体を手に入れて延命できるのなら,もっとセダルのそばにいたかった。それが,フララの純粋な気持ちだった。
だが,なぜか,その思いとは裏腹に,子宮に巣くう膨大なエネルギーを持つ霊力の塊から,強烈に,『この新魔大陸を征服しろ』という声が聞こえて来た。それは,やむを得ないことだ。千雪様の命令は絶対だ。無意識にそう感じてしまうのかもしれない。
魔体生成器を発動して2時間後,セダル用の魔体が完成した。この魔体は,魔界のレインボードラゴンや,ゴーレムから派生で創るものとはかなり異なる。魔力で構成されているとはいえ,かなりの部分で生身の肉体と同じだ。食事ができ,味を感じ,かつ,性行為もできる。男性に至っては,自分の魔法因子さえも放出できる。だが,女性の子宮までは,生成できてない。そこが,今後の課題だ。隣国のガルベラ女王国では,生身の子宮組織を培養して,補う方法が確立している。
フララは自分の額を,完成したばかりのセダル用の魔体の額に接触させて,セダルの霊体をその魔体の霊体格納魔法陣に移動させた。
セダルの霊体は,自分の魔体を支配することができた。しかも,霊媒師や魔体調整師もいない状況でだ。
セダルは,ゆっくりと目を覚ました。
セダル「フララ,いや,フララさん。自分の魔体を持ち,かつうまく制御することができました。ほんとうに,ほんとうに感謝します。死を覚悟していたが,まさか,あなたに助けられるとは思ってもみなかった」
フララは,ちょっと嬉しくなって微笑んだ。
セダル「フララは,私の婚約者だよ。では,今からでも,女王に挨拶に行きましょう」
女王秘書,ボボ隊長,ベベ隊長らは,嬉しくで涙が出てきた。ここで,セダルを死なせてしまえば,女王になんて申し開きをすればいいのか分からなかったからだ。
ボボ隊長は,セダルの足に抱きついて言った。
ボボ隊長「セダル様!!よくぞ,よくぞ魔体を手に入れられました!!嬉しいです!!」
それを見たベベ隊長は,セダルの腕に抱きついた。
ベベ隊長「セダル様!!生き返ったのですね!!ほんとうに私も嬉しいです。ボボよりも何倍も嬉しいです!!」
女王秘書も負けていられない。彼女は,背中を抱いて言った。
女王秘書「セダル様,よくぞ生きてくれました!!わーーん!!わーーん!!ボボよりも,べべよりも,もっともっと嬉しいです!!」
ボボ隊長は,セダルにフララの身分について,さらに突っ込んで聞いた。
ボボ隊長「セダル様。フララ様は,いったい,どのような方なのですか?セダル様が助かったのは,フララ様のおかげだと思いますが,どうして,霊媒師もいないのに,魔体調整師もいないのに,セダル様は無事に魔体を支配して制御できるのですか?いったい,フララ様は,どのような方のなのでしょう??」
セダル「・・・」
フララ「皆様の疑いは,当然です。ですが,それは,女王様の前で,説明させていただきます」
セダル「フララ,では,今からいこう。ベベ,転移を頼む」
ベベ隊長「分かりました。女王様の父上君の中庭であれば,安全に転移できます」
彼らは,女王の父親の屋敷に転移した。
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