第12話お見合い大作戦
ー 上空のフララ ー
この大陸の上空では,高度によって,風の流れる方向が決まっている。フララは,そのことがわかってから,南から北側に流れる風を捕まえて,わざわざ風魔法を使うこともなく,王都方面に向かった。このまま行ってしまうと,ガルベラ女王国の王都ラガロン市に行ってしまう。フララの目的地は,ガルベラ女王国の王都ではなく,メランブラ女王国の王都クルゲラ市なのだ。途中で,東方向に方向転換しないといけない。
フララは,空中の高度を変えて,東風を捕まえて,東方面に移動した。途中,何度か地上に降りて,道を数回訪ねることはしたが,4時間ほど飛行して,目的地の王都クルゲラ市に着いた。
まだ,午後5時ごろで,日は沈んでいなかった。フララは,適当に若い女性を見つけて,ペンダントをこっそりと彼女の鞄の中に放り込んだ。
フララは,これで,刺客たちは,私が王都クルゲラ市に来たことを知るだろうとほそくえんだ。
フララは,エバルダの記憶を頼りに王都の町中を散策した。だが,結局,娼婦街の方に向うしかなった。胸元の大きく開いた服,15歳の絶世の美人,それだけなら,まだいい。でも,35kgにもなる超爆乳は,もう病的な化け物だ。道行く男どもは,彼女に声をかけることはなかった。なにか,『病的な病を持っている美少女』という認識をもたれたようだ。
フララは,この町を火の海にするのを,数日後に行うことにした。それまでは,どこまで,身を隠す必要がある。当然,その場所は,娼婦街に決めていた。
娼館の女将に,自分を使用してくれるように依頼したが,なぜかことごとく断られた。さすがは,女将だ。伊達に女将をしているわけではない。フララを見て,一瞬で,トラブルメーカーになると判断した。
フララは,がっかりした。せめて,娼婦くらいにはすぐに採用されると思ったのだが,それさえもままならない。
さらに,ブラブラと歩いていくと,ストリップショーの場所があった。フララは,ここなら,採用してくれるものと思い,この主人に自分を採用してくれるように依頼した。主人は,フララをまじまじと見て,フララに裸になるように言った。
フララは,なんのためらいもなく裸になった。フララの超美貌,35kgにもなる超爆乳,片方だけでも17.5kgにもなる胸,そして直径6cm長さ6cmにもなる巨大な乳首,,,人寄せには,最高だった。
だが,主人は,危険な臭いを感じた。このような商売をしていると,危険人物は一目でわかる。それが生き残るための処世術だ。
主人「すばらしい体だ。ぜひ採用したいところだが,あなたは,あまりにも危険な臭いがする。残念だがほかをあたってくれ」
フララは,その危険な臭いについては,よくわからなかった。
フララ「危険な臭いって,どうして分かるのですか?」
主人「あなたは,もう何人も人を殺してきた臭いがする。刺客の臭いと同じように感じる。いや,それ以上に恐怖を感じる。たぶん,今のあなたでは,どこに行っても採用されないだろう」
フララ「・・・・」
フララ「さすがですね。私は,もう何人も人を殺してきました。今,この国の女王からも命を狙われています。すでに,この国最高レベルの刺客が何度も私を殺しに送られてきました。幸い,幸運に恵まれて撃退できました。私は,その逆襲にために,王都に来ました。数日後には,この王都を火の海にします。それは,間違いなくです! この話をあなたにした以上,あなたは,この場で,死んでもらいます。残念です。長生きしたかったでしょうに,,,」
主人「な,なんと,,,でも,ここには,S級魔法士が3名もいるのだぞ! そうやすやすと殺されてたまるか!」
フララ「では,その魔法士をここに呼んで来てください。私を奇襲してもかまいません」
主人「・・・」
主人は,一瞬,立ち上がったが,また,座り直した。
主人「失礼だが,あなたには,魔法の波動を感じない。でも,強者であることは感じ取れる。いったい,あなたは何者なんだ?」
フララ「コードネーム『チユキ』といったらわかるでしょうか?隣国では,大量殺人で指名手配を受けていました」
主人は,その話を,もちろん聞いたことがある。この国でも一万人以上が『チユキ』の画像で死んでしまった。
主人「・・・,この話を聞いた以上,私は,ここで死んでしまうのだろうな?」
フララ「場合によっては,活かしてあげてもいいです。私の報復の手伝いをしてださい」
主人「? 何を手伝えばいいんだ?」
フララ「簡単なことです。私は,ここの観客を皆殺しにします。その処分をご主人にお願いしたいのです。死体はミイラになりますので,重たくないです。持ち運びも楽ですよ」
主人「な,なんと,,,」
フララは,言葉を続けた。
フララ「つまり,私が観客を次々と殺し,ご主人はその死体を片づけていくだけです。協力してもらえますか?」
主人「そんなことしたら,私も捕まって殺されてしまう!!」
フララ「ご主人は,ただ,私に脅迫されて行ったと言えばいいでしょう。それに,ご主人は,いっさい,知らぬ,存ぜぬで通せばいいのです」
主人「・・・,わかった。S級魔法士を呼んでくる。彼らにも説得してほしい」
フララ「問題ございません」
3名のS級魔法士が主人に呼ばれて,この場にやってきた。30代前半の壮漢な若者だ。
彼らのうちS級魔法士Aは,フララを一目見て「やばい」と判断した。
S級魔法士Aは,すぐに両膝をついて頭を下げた。彼の行動は早かった。それが,彼の命を救った。
S級魔法士A「ど,どうか,お命だけは,お助けください!!なんでもします!」
S級魔法士Aは,人一倍,直感の鋭い人物だった。霊的感覚も鋭かった。そのため,フララの持つ恐怖・畏怖の波動を敏感に感じ取ることができた。
その姿を見たS級魔法士BとCは,その動作を真似た。彼らは,S級魔法士Aが,危険察知能力に優れていることを充分に知っていたからだ。
S級魔法士B「私もあなた様に従いします。どんな命令も実行します!」
SS級魔法士C「同じく,私もあなた様に従います!」
フララは,まさか,私の雰囲気だけで,私の強さを理解するとは思ってもみなかった。世の中は広いと思った。
フララ「そうですか,,,あなたがたを殺せなくて残念です。あなたたちは,今,魔力を行使できません。すでに魔力を封印しました。もし,少しでも敵対行動をとるのでしたら,すぐに,ミイラにして殺すつもりでした。命拾いしましたね。フフフ」
彼らは,すぐに,魔力を自分の体に流してみたが,フララの言う通り,まったく魔力を行使することができなかった。今の彼らは,赤子同然の状態だ。
S級魔法士A「確かに,魔力を封じられています。これは,,,あなた様は,神ですか?悪魔ですか?」
フララは,ニコッと笑った。このような台詞は,千雪様に与えられてこそふさわしいものだ。でも,このように言われて,フララもまんざら悪い気はしなかった。
フララ「フフフ。お世辞と受け取りましょう。これから,この劇場に来る観客を皆殺しにします。あなたたちは,ミイラになった者たちの後始末をお願いします。観客の指輪,貴重品などの遺品回収もお願いしますよ」
S級魔法士A「・・・,わかりました。ですが,宣誓契約でわたしたちを拘束しなくていいのですか?国王軍や憲兵隊に密告するかもしれません」
フララ「別に,そうならそれでいいのです。この王都で大暴れするだけです。そうでなくても,数日後には,この王都を火の海にします。協力してくれますか?もっとも協力しないなら,この場で死ぬだけですか,,,」
S級魔法士A「は,はい! 何でもします。火の海に協力します!」
S級魔法士B「私もです!」
S級魔法士C「同じく,私も協力します!」
フララ「そう?それはよかった。では,どうすれば,効率よく王都を火の海にできるか,考えてちょうだい。実行は,,,そうね,,,一万人くらい殺したあとがいいかな?」
主人「一万人?」
フララ「そうよ,,,私の裸の写真を撮って,大量に印刷してちょうだい。それを,観客の勧誘の道具にします。くれぐれも,憲兵とか,国王軍の目につかないようにですよ!くれぐれも,印刷の作業員や観客の勧誘員は,素手でそれを触らないこと!この体には呪詛が仕込まれているから,素手で触ると,翌日には死んでしまいます!厳重に注意して作業してください」
主人「あの,,,でも,1万人も殺す必要があるのでしょうか?」
フララ「いえ,ありません。でも,それが,千雪様の望みです。それに,私にとって,死は,いえ,肉体の死は,死ではありません。あなた方の霊体は,苦悩というものを経験しなさすぎます。もっともっと,苦悩を経験すべきです。その機会を私は彼らに与えるのです。ある意味,私は,人々を助けているに等しいのです。決して殺しているのではありません」
ここまでくると,主人も,S級魔法士A,B,Cも話についていけなくなった。
このメランブラ女王国では,コードネーム『チユキ』の顔写真は出回らなかった。アングラで,『チユキ』のネット画像が出回り,死者が少なからず出たものの,その後,ことごとくその画像は削除された。そのため,だれでも,コードネーム『チユキ』という大悪人の女性がいることは知っていたが,その顔がどのようなものなのかは,いっさい知る方法がなかった。
ー ストリップ劇場・開演 ー
ここのストリップ劇場は,午後6時から開演する。通常なら,6名の踊り子さんが,20分交代で2時間で一巡し,3巡するのが通常のスタイルだ。ただし,今日から,当面の間は,6名の踊り子さんは,一人3分だけになった。最初の20分で6名の踊り子さんが演舞を終了し,その後,残りの100分をフララが担当する。かつ,この100分間は,6名の踊り子さんも,対応していくという,変則的な方法で行うことになった。
♪♪♪♪♪♪~~
なまめかしい音楽が流れて,一人目の踊り子が現れた。30秒ほど踊った後,一枚一枚と服を脱いでいった。その動作は,決して,慌てている様子はなかった。1分経過すると,全裸姿になった。
・・・
彼女の舞台が終わると,次はフララだ。
司会者が,次の演舞者であるフララを紹介していった。
司会者「では,本日のメインイベント,超爆乳の持ち主,『爆乳のお龍』,登場でーーす!!」
『爆乳のお龍』と呼ばれたフララは,すっぴんで,なんら化粧もせず,その15歳に見える素顔をそのまま晒した。服装は,普段着ているワンピース1枚だけだ。
フララは,ステージの中央に着て,お辞儀をしたあと,ワンピースを豪快に脱いで,その豊満な裸体をさらけ出した。
「おおおおーーーー!!」
「すげーーーー!!」
「おったまげた!!!」
「吸いてぇ----!!」
「犯してーーー!!」
などなどの声が観客から出た。
司会者「では,いまから先着25名の方,チップ不要で,彼女の体に触る時間を設けます。
「おれおれおれ!!!」
「いや,俺が先だ!!」
「まて,おれだ!!」
会場は,騒然となった。だが,それを見越した司会者は,続けて言った。
司会者「安心してください!!15分ごとに,25名ずつ割り当てますから,ここに順番に並んでください」
ドドドドドーーー!!
すぐに,初回,2回目,3回目の25名が決まった。順次,4回目,5回目と順番が決まっていった。会場整理員は,番号札を渡していって,並ぶ必要がないようにした。このことで,会場はスムーズに運んだ。
カーテンの内側では,フララと25名の観客が,15分ごと,もっと正確に言うと,10分間で観客全員をミイラ化してしまい,残りの5分間で観客の遺体と遺品回収が行うという割り振りだ。
司会者「では,最初に25名がステージに上ります!!その後は,ステージをカーテンで仕切ります。観客は,すいまんが,自分の番まで,辛抱強くお待ちください。できるだけ,スムーズに順番が回るようにします」
観客席にいる観客は,カーテンを見ても何も面白くない。そこで,急遽,そのカーテンの外側で,観客席に見える位置で,6名の踊り子さんに,今度は,ゆっくりとストリップショーを演じてもらうことにした。
ー ストリップ劇場の外ー
ストリップ劇場の外では,2名の勧誘員が,即席で印刷したフララの全員の裸体の写真を配って,客を勧誘していった。
勧誘員「お客さん!!今日は,この爆乳の女の子の体に触れますよ。しかも,チップなしです!!一度,見ていってあげてください!!」
そのように言って,勧誘員は,惜しげも無くはがき大の写真を無料であげていった。印刷会社は,特急で,どんどんとフララの裸体を印刷していって,30分おきに500枚単位で,写真をストリップ劇場に届けていった。
ー ストリップ劇場 ー
ストリップ劇場は,2時間で一巡だ。フララの持ち時間は100分,実際には,105分になってしまったが,15分で25名をミイラ化にしていったので,105分で375名をミイラにしていった。
フララは,2名の精力・寿命エネルギーで片側のおっぱいが1kgほど増大していくのだが,この調子で増大していってしまっては,どうしようもないので,5分間の後片付け時間で,おっぱいに貯まった精力・寿命エネルギーを凝縮していくことを試みた。それも,半端ないほどの凝縮だ。
シューーー!!シューーー!!シューー!!
25名の精力・寿命エネルギーを吸収した結果,当初,35kgの重量だった胸が,48kgにもなってしまった。そこで,2倍濃縮を試みた。その結果,両方で24kg程度の胸に変化してしまった。すでに,35kgもの超爆乳の写真をばらまいていてしまったので,実際には,少し隔たりが生じてしまったが,両方で24kgのおっぱいなら,客もさほど文句はでないだろうと,フララは思った。
フララは,105分かけて,375名の男たちをミイラ化した。本来なら,約190kgもの考えられないおっぱいの大きさになるのだが,フララの絶え間ない濃縮を行った結果,10倍濃縮を行うことができるようになった。その結果,フララの胸は,22kg程度の,なんとか人前に出ても,ぎりぎり許せる大きさになった。乳首も,直径4cm長さ4cm程度の大きさで,やはり,ぎりぎり許せる大きさになった。
ここで,フララは,約20分の休息がある。この10倍濃縮でも,とても足りないことが判明した。フララは,この20分をかけて,さらに,高濃縮を行うことにした。
3巡目が終わった。この日の仕事は,終了した。ミイラ化した総勢は1125人だ。このミイラの死体は,S級魔法士たちが転送で,一目のつかない山奥に送った。
フララは,30倍濃縮を達成して,22kgのおっぱい,直径4cm長さ4cmの乳首を維持できた。
フララは,膨大なエネルギーを吸収したものの,どっと疲れが出た。いったい,自分は何のために,こんなことをしているのか,よくわからなかくなってきた。
ーーー
この日,関係者で反省会を行った。
参加者は,フララ,主人,S級魔法士A,B,Cの5名だ。ほかにも数名,スタッフはいるが,このメンバーで充分だった。
S級魔法士A「今日,一日で,ミイラになった人数は1125人。1万人まで,まだまだです。思い切って,日中もしていきましょう。午前9時から12時までの2巡,午後2時から6時までの2巡,連続で,午後6時から12時までの3巡,合計7巡繰り返しましょう。早く1万人達成しますよ」
主人「でも,コンスタントに人集め出来るかが問題だ。日中は,ストリップ劇場ではなく,大型料理屋と提携していくのがいいのかもしれん。無料だったら,トイレに来る人を捕まえれば,いくらでもいる」
S級魔法士B「料理屋に女性客が来ないように,男性専用の格安日ということにすればいいのでは?どうせ,人が死んだら,遺品でお金はいくらでもあるんだし,,,」
S級魔法士C「それに,金貨5枚も出せば,収納指輪のパスワードを解除してくれるサービスもあるから,なんとかなると思う」
そんなこんなで,いろいろと議論をした結果,日中は特定の施設を使うのではなく,遊園地,公園などの男性トイレの裏側にフララが潜んで,トイレに来る男性を順次ミイラ化していく,という方法をとることにした。この方法なら,短時間で場所を変更できるし,騒ぎが大きくなる前に,別の場所に移動することも可能だ。射精行為を経ないで殺していくので,奪える精力は少ないが,それはやむなしという判断だ。
当面は,この作戦でいくことにした。また,ストリップ劇場は閉鎖する。明日になれば,失踪事件に発展してしまうためだ。遺物の収納指輪は,約3割ほどが,パスワードなしで中身を見ることが可能だ。その遺物だけでも,ストリップ劇場を閉鎖しても,充分におつりがでるほどの資産があった。
かくして,主人の別荘,王都の東側の郊外に位置するのだが,そこをフララたちの活動拠点とすることにした。
翌日から,フララたちの活動時間は,午前10時から午後4時までの6時間とした。襲うのは,1時間ごとに,遊園地,有名な公園,繁華街の公衆トイレなど6カ所だ。1時間ごとに場所を変更していくことにした。
この方法では,連続的に精力・寿命エネルギーを奪っていけるので,一日に約2000人の男どもをミイラ化することが可能となった。
フララの胸は,22kgの胸で,直径4cm長さ4cmの乳首を維持しつつ,40倍濃縮を達成していった。
ーーーー
ーメランブラ女王の執務室ー
メランブラ女王の執務室では,緊急会議が招集されていた。議題は,フララ討伐と,失踪事件とフララの関係だ。
メランブラ女王の国王軍は,有能なSS級戦士2名,その他戦士12名が,当時は雪生と名乗っていたが,フララによって殺され,かつ,この国でも,一位二位を争うほどの手練れで,フララ討伐のために送った刺客,モゴルダとゾベルダも失ってしまった。
モゴルダとゾベルダの戦闘時の状況は,録画されていたので,状況ははっきりとわかる。戦闘ではフララは完全に負けていた。しかし,フララは,姑息な手法でモゴルダとゾベルダを死に追いやったことが判明している。
メランブラ女王は,再度,この録画から,フララの『異能力』を分析させた。
国軍の女性隊長ボボは,女王に報告した。
ボボ隊長「女王様,では報告します。最初のモゴルダとの戦闘では,フララは,何ら攻撃的な行動はしておりません。モゴルダの強さを理解したのでしょう。モゴルダは,フララに,殺傷行為をしてはならないという宣誓契約をさせたにもかかわらず,フララはモゴルダを殺しています。つまり,フララにとって,殺傷行為の理解が,一般人と異なっていると判断します。つまり,フララは,死傷という意味を,肉体への死傷ではなく,霊体への死傷と理解したのであれば,フララのこの行動は,理解可能になります」
メランブラ女王「なるほど,,,そう,理解すればいいのか,,,フララは,宣誓契約に慣れているのかもしれないわね」
ボボ隊長「そういうことになります。次に,ゾベルダの件ですが,フララは,彼のTU級の火炎弾攻撃を防御できなかった,いや,出来ない振りをしたと判断します。火炎弾攻撃を完全に防御している間に,フララは,自分の肉体を亜空間収納に収めるという行動を行いました。その行動をしているにもかかわらず,防御層が生きていた,ということは,防御層は,完全に本人の支配から独立して存在していたことになります。これは,恐るべき能力です。私も霊力を見ることができるようになってから,改めて霊力の恐ろしさを再認識しました」
メランブラ女王「つまり,ゾベルダは,フララに完全に騙されたというわけか?」
ボボ隊長「はい。あの火炎弾攻撃中では,フララの霊力の細かな動きなど観察することは不可能です。私もビデオで何十回も見て,やっと識別できたくらいです。その時点で,ゾベルダの敗北は決したとみていいでしょう。後は,フララは,霊体として行動し,エバルダの肉体を奪い,ゾベルダに何らかの魔法陣を植え付けて,火炎魔法で肉体を焼消しました」
ボボ隊長は,一息入れて,話を続けた。
恐るべきは,フララの霊体としての活動力です。一瞬で,エバルダの霊体を退けて,その魔体を自由に制御したことです。フララの最も恐るべき『異能力』というべきでしょう。つまり,肉体を殺しても,周囲に,魔体保持者がいれば,その肉体が奪われる可能性が高いと思われます。霊体を殺す方法が,宣誓契約違反以外に知られていない状況では,フララを肉体の死だけでなく,霊体の死まで追いやるのは,極めて困難かと思います」
ここまでの話を聞いて,メランブラ女王は,しばらく黙った。そして,口を開いた。
メランブラ女王「フララの肉体を破壊して,かつ,周囲に魔体がない場合は,どうなるの?」
ボボ隊長「通常であれば,うばうべき肉体がないため,いずれ,霊体は浄化されて消えてしまうでしょう。もっとも,フララの場合は,地獄行きかもしれませんが,,,」
メランブラ女王「つまり,彼女の近くに魔体がなければいいってことね?」
ボボ隊長「・・・,たぶん,,,」
メランブラ女王は,甥のセダルに向かって言った。
メランブラ女王「セダル,いままでの話を聞いて,フララに勝てる自信はあるの?負ければ,確実に死よ。相手は,決して情けをかけないわ」
セダル「私の能力では,フララと戦って勝てる自信はありません。戦えば,確実に私は死ぬでしょう。でも,話が通じる相手なら,戦いとは別の手段で,例えば,ゲームによる勝負という方法もあります。とりあえず,フララの所在が分かれば,会ってみたいと思います」
メランブラ女王「セダル,これはゲームではないのよ。もう,いいわ。あなた,もう家に帰りなさい!!」
セダル「・・・,でも,もう女遊びをしてしまいました,,,」
メランブラ女王「それがどうしたのよ??」
セダル「フララ討伐に参加しないと,勘当されます」
メランブラ女王「じゃあ,勘当でいいじゃない。私の息子になりなさい! あなたが,王位継承権第一位になるわよ」
セダル「・・・,でも,,,それって,すぐに他の親戚に殺されるって,ことですよね?」
メランブラ女王「そうね。暗殺はなくても,次期王位に就くにふさわしい能力を発揮しないとだめでしょうね。SS級魔法士だけでは不十分だわ。フララを討伐くらいできないと,誰も納得しないでしょう」
セダル「どのみち,フララを討伐しないとダメなのですか,,,やっぱり,ゲームで勝負はしてくれないでしょうね,,,わたしは,,アカデミーでは,主席でした。魔法だって,私の右に出るものはいませんでした。座学でも主席でした。でも,そんな私でも,実践では,なんの役にもたたない,,,フララと戦えば私は死ぬ。戦わないと勘当される。女王の息子になれば,フララと戦わねばならない,,,私って,この国で,一番不幸なのかもしれません」
メランブラ女王「セダル!お前は,ほんと情けないわね。お前のレベルで,アカデミー主席なら,この国に,もう未来はないわ。あーー,でも,今は,そんなことはどうでもいいのよ!!それよりも失踪事件よ,失踪事件!」
メランブラ女王は,女性の憲兵隊隊長,べべに尋ねた。
メランブラ女王「ベベ!失踪事件を報告してちょうだい!!」
ベベ隊長「はい。わかりました。事の発端は,4日前になります。隣国の王族,ダン様に掛けられたペンダントがこの王都で発見されました。持ち主は一般市民でした。ダン様のメイド,つまり,われわれの標的であるフララが,この王都に来たことを意味します。そして,その翌日,ストリップ劇場に見に行った観客がすべて,その日,消えてしまいました。その数,分かっているだけで,1000名強。その後,公園,遊園地などの男性トイレ周辺で,続々と失踪事件が発生しました。もう,この王都は,パニックに近い状態になっています。かなりの住民は,この王都から逃げ出しを開始しています。一刻も早く解決しないと,この王都は,無人のもぬけの殻になってしまいます!!」
メランブラ女王「つまり,今回の失踪事件は,フララが実行犯と見ていいのですね?」
ベベ隊長「何分にも,目撃者がほとんどいませんので,フララが実行犯だとは断定できていません。ですが,ストリップ劇場の周辺でばらまかれた写真に,フララと思われるの裸体が写っておりました。胸には呪詛が刻まれていました。このことから,写真に写っているのはフララであると断定しました。ストリップ劇場にフララが演舞していたこと,そして,その日,1000名以上もの観客が失踪したことから,フララが失踪事件に関与していることは間違いない事実です。観客はミイラ化されてどこかに廃棄されたと見ていいでしょう」
メランブラ女王「つまり,状況証拠からフララが実行犯だと推定したのですね?仲間はいないのですか?」
ベベ隊長「ストリップ劇場の主人と護衛のS級魔法士3名です。彼らは,その後,姿を消しています。現在,かれらの住居をしらみ潰しに調査していますが,まだ見つかっていません。何分,憲兵隊の隊員の中からも,脱退して,王都から逃げる者がいて,調査もうまく進んでいません」
メランブラ女王「やはり,フララの手助けをしている連中がいたのね。万死に値するわ!でも,フララが,か弱い一般市民に手を出すなんて!なんて卑劣な!このままでは,この国は,ほんとうに壊滅してしまうわ!何か,対策はないの?」
メランブラ女王は,怒りの顔をしたが,でも,怒っても何も解決しない。返す返すも,モゴルダとゾベルダがフララを殺し損ねたのが悔やまれた。
ベベ隊長「私の率直な提案を述べます。私は,こうなった以上,王都を放棄すべきだと思います。王宮も今のうち,放棄する準備をすべきです。密かに遷都してしまうのです。王都の東側に30kmほど移動したネブル村に,廃校跡があります。当座の活動には,その場所で活動する,ということも可能かと思います」
ボボ隊長「私もベベの案に賛成です。フララの所在を捕まえられない以上,われわれの負けです。フララの実力をもってすれば,いくらわれわれが全力で追い詰めても逃げられてしまうでしょう。
一般市民を守るためには,王都住民を一時的にでも,他の町や村に移住してもらうのです。フララは,いずれ,隣国のダン様の元に戻るでしょう。その時,その時こそ,今回の借りを還す時です。ダン様という弱点を突けば,いくらでも勝機はあると思います」
メランブラ女王「実を言うと,私もその案を考えていたの。でも,,,そうする勇気がなかった,,,」
メランブラ女王は,溜息をついた。秘書に総務長官を呼んでくるように命じた。
しばらくして,総務長官が女王執務室にやって来た。
総務長官「女王様,何用でしょうか?」
メランブラ女王「例の失踪事件は知っているかと思います。これからも,ますます多くなるでしょう。今のわれわれの能力では,犯人を捕まえることは,すぐにはできない状況です。かつ,犯人は,化け物レベルの異能力者であることも分かっています。そこで,残念なことですが,王都の住民を他の都市に一時的に避難させる方法を至急考えてください。かつ,王府の機能を,一時,他の都市に移します。今日中に,移すべき場所を決めなさい。猶予はありません。明日には,すべての機能の移管を完了したいと思います。これは,決定事項です」
総務長官「・・・・」
メランブラ女王「何か,反論は?」
総務長官「いえ,何もありません。遷都の候補地は,過去にいくつか,候補を挙げたことがあります。その中から,選ぶことになります。問題は,王都の住人です。野宿させることもできないでしょう。仮説用のテントが必要になりますし,食料もどうするかも問題です。ですが,猶予もないのも事実」
総務長官は,しばし考えて,この場で結論を出した。
総務長官「では,ネブル村に,王府の機能を集中したいと思います。また,王都の住人もネブル村の周囲に生活してもらうように手配します。即刻,実行に移します。女王様,よろしいですね?」
メランブラ女王は,総務長官が,即断即決したことに驚いた。だが,今の状況では,ベストな選択だと思った。
メランブラ女王「それで結構です。至急,すすめてください。一秒でも遅れると,それだけ失踪者が多くなってしまいます」
総務長官「了解しました。では,すぐに実行に移します」
総務長官は,すぐにその場を去っていった。
メランブラ女王は,睨み付けるようにセダルを見た。
メランブラ女王「バカのセダル!!この遷都の機会を利用して,フララを討ちなさい!!それが命令です。王族としての命令です!!命に代えても討ちなさい!!」
『王族としての命令』,この意味は,非常に重たいものだ。命令の履行に失敗した場合は,死を意味する。この意味はセダルでも充分に理解した。
次に,メランブラ女王は,自分の秘書に命じた。
メランブラ女王「秘書,今から,3日間,女王権限をセダルに与えます。セダルの命令をすぐに実行に移しなさい」
女王秘書「了解しました」
メランブラ女王「私は,いまから,田舎に引きこります。セダルの祖父のところです。討伐に成功したら,そこに来なさい。失敗したら自決なさい。以上です」
メランブラ女王は,その場を去った。
女王のこの言葉に,国軍のボボ隊長と憲兵隊のべべ隊長も焦った。わずか3日間でフララを討伐など,到底無理な話だ。彼女らは,なんとかセダルを助けようと,無い知恵を絞った。だが,無からは何も生まれなかった。
セダルは,この国で小さい頃から,秀才,天才と褒めそやされて育った。努力しなくても,何でもできた。だから,努力などしてこなかった。それに,答えがわかっている座学など,いつも満点をとっていた。魔法だって,少しは努力したが,才能に恵まれて,すでにSS級魔法士に届くほどの能力を持ってしまった。
だが,今の状況は,まったく違う。答えに繋がる道がない! どうすれば正解なのか?誰か教えてくれ!と,セダルは叫びたかった。
セダルは,これまでに絞ったことのない頭を絞った。でも,絞ったことがないので,何も出てこなかった。
セダルは,秘書に言った。
セダル「秘書よ。おれは,3日後に死ぬ。女遊びを始めたが,まだ,おっぱいを触ることしかしていない。せめて,,,童貞を卒業してから死にたい,,,」
女王秘書「セダル様。ご心配なく。私が,その童貞を卒業させていただきます」
その言葉に,ボボ隊長とベベ隊長も反応した。
ボボ隊長「セダル様。いいえ,私が適任です。私も処女です。童貞の人は,処女と結ばれるのが,この国の基本です」
ベベ隊長「セダル様。ボボの甘言に乗ってはいけません。まずは,美人を抱くのが,この世の決まりなのです!!そして,私がその美女なのです!!」
セダルは,最高レベルの美男子だ。王族の女性たちは,皆,セダルを狙っている。次の国王は,自然と,セダルになるだろうと,誰もが思っている。それは,女王とてそうだ。だが,その,国王としての資質を試されるのが,今回のフララ討伐だ。童貞を卒業する云々を言っている暇はないのが,,,
セダルの目の前で,誰がセダルと寝るか,3名の女同士の口論が始まった。セダルは,彼女たちに聞いた。
セダル「お前たち,なんで,そんなに争っているのだ?俺のどこがいいのだ??」
セダルをずーっと,内心,憧れていた女王秘書が率先して言った。
秘書「顔です!!女は,面食いなのです!!」
ボボもベベも同意して,頷いた。
セダル「なるほど,,,では,私の顔写真付きで,フララに見合いを申し込もう」
秘書「えーーーー?」
ボボ「イヤー--!」
ベベ「ダメ--!」
3名の女が,発狂しそうな声を上げた!!
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