第6話ナタハル領主とマイラ
ー ゴゲラート領主の屋敷 ー
ダンが一日の勉強が終わるのは,午後3時だ。それからは,自由時間だ。ダンはひとりで魔法の勉強をしたりする時間だ。だが,ダンの頭の中は,雪生のことで一杯だ。どうすれば雪生を抱けるのか,自由時間になると,そればかり考えている。
ダンは,あるとき,ネットで『チユキ』が指名手配になっている写真を見つけた。これって,もしかして,雪生ではないのか?どう見ても,うり二つだった。そこで,これを使って,雪生を脅迫することにした。
ダン「雪生,この携帯の写真を見なさい!この殺人犯のチユキって,お前のことだろう?お父様やお母様には,黙ってやるから,お前の体を抱かせなさい」
雪生「いずれは,バレると思っていました。今,この国では,私のこのポスターが盗まれて,死者が続出しているようです。ダン様も,その写真ばかり見ていると,死んでしまいますよ」
ダン「確かに,この写真を見続けると,死んでしまうから,削除するようにと,なんどもネット配信されている。ということは,雪生を抱くと私は死んでしまうのか?」
雪生「はい。もう何人も殺してきました。私は,契約で,ダン様には,危害を加えることはできません。ですが,不可抗力は別です。ダン様は,私に体に触れてはなりません。見るだけなら,問題ないと思いますけど」
ダン「触れてはいけないか,,,なら,手袋をすればいいのか?下半身も何かでガードすれば問題なのか?キスはしてもいいのか?」
雪生「手袋なら,触っても問題ないです。下半身は,私の霊力の層でガードすれば,問題ないでしょう,,,,そうですね,,,私自身を霊力の層で,覆ってしまえば,回避できるかもしれません,,,でも,もし,他の人に見つかると,私は首になってしまいます」
ダン「大丈夫だ。この部屋は内側から鍵がかかっている」
雪生「ダンさんへの性的なサービスは,報酬に含まれていません。私にメリットがありません。何か,魔法石とか,お金になるものをください。ならば,抱いてもかまいません」
ダン「わかった。では,待っていなさい。宝物庫から何か持ってくる」
ダンは,童貞が卒業できると思って,嬉しくなった。宝物庫の鍵のパスワードは,以前,こっそりと盗んだので知っていた。ダンは,宝物庫の中から,宝石を頂いた匕首を奪った。これなら,雪生にあげても活用してもらえると思った。
ダンは,すぐに自分の部屋に戻った。すると,部屋には置き手紙があった。
『30分ほど留守にします。ちょっとだけ待ってください』
ダンは,少しがっかりした。でも,待つことしかできなかった。
ー デラブラ市郊外にあるナタハル領主の屋敷 ー
デラブラ市の郊外にナタハル領主の屋敷がある。メランブラ女王のいとこに当たる。男は,遊んでばかりいるので,国王や上位の役職には向かないというのが,この新魔界の定説になっている。だから,戦闘員は別として,女性が主な主要ポストにつくのが一般的だ。だが,依然として,農作物や農夫を管理するのは,王族が担当している。
最近,このナタハル領主の屋敷にメイドとして採用された女性がいる。マイラだ。マイラは,雇われてから,わずか数日で,ナタハル領主のお手つきにあっていた。
マイラ「領主様,だめです。体を売るのはお仕事に含まれていません」
ナタハル領主は,マイラを左手で首の部分を羽交い締めにして,開いている胸元の隙間に右手を突っ込んで,左側の乳首を思いっきりつねった。そして,顔を自分のほうに向けさせて,唇をキスで奪った。マイラは体の力を抜いた。この状況ではもう抵抗できない。へたに抵抗すれば,領主に危害を与えてしまいかねないからだ。マイラは,契約で領主の家族に対して,いっさいの加害行為をしてはいけないのだ。たとえ,手込めにされても,いっさい反撃できないという契約だ。
マイラは,38歳。中肉中背で,Dカップの豊満なおっぱいをしている。ナタハル領主は,無抵抗のマイラの服を手際よく脱がしていった。そして,マイラは,ナタハル領主に犯された。これを契機に,マイラは,毎日のように犯されるようになった。3回目に犯されるとき,マイラは,携帯で雪生に緊急連絡を送った。メールの文面は,すでに準備していた。
『雪生,今,ちょうど領主様に犯されているところです』
これだけのメールだ。
緊急連絡を受け取った雪生は,ちょうどダンが貴重品を探しに出向いていたので,メモを置いて,標的魔法陣を起動した。
ボァーー-!!
雪生がマイラのそばに転移した。そこは,物見やぐらの見晴台のところだった。地上から10メートルはある高さだった。
ナタハル領主「なんだ?お前は?人の情事を邪魔しおって!!」
ナタハル領主は,誰であれ自分の情事を邪魔されるがもっともいやだった。もっとも,それは誰でも同じことだが。
ナタハル領主は,彼のもっとも得意とする念動力を発動した。
雪生の体は霊体でできているため,その重量は30kgにも満たなかった。
フワーーー!(雪生の体が持ち上げられて,手すりを超えて飛ばされた)
雪生「キャーーー!」
ズドーーーン!
雪生は,10メートルの高さから落とされてしまった。
ナタハル領主は,何事もなかったかのように,マイラのDカップの胸をきつく握りしめて,抱いていった。
ナタハル領主は,即決で邪魔者を片付けたので気分がよかった。ナタハル領主は,マイラに言った。
ナタハル領主「マイラ,あいつは,お前の仲間か?この高さで落ちたら助からんぞ。あいつを心配しないのか?」
マイラは,少し赤くなった顔で返答した。
マイラ「あのかたは,この国を征服にきました。こんなことで死ぬようでは,とても征服などできないでしょう」
「ハハハーー」
ナタハル領主は,可笑しくなった。
ナタハル領主「この国を征服だと?今,うわさされてるコードネーム『チユキ』が言うのならわかるが,たかが小娘ごとき,容易くここから落とされてしまう小物など,眼中にないわ!!」
だが,そうは言ったものの,あの小娘の顔つきは,どことなく,指名手配中の『チユキ』に似ていた。
服装を整えた彼らは,物見やぐらから降りて,死んでいるであろう『小娘』を見に行った。
その『小娘』である雪生は,まだ,その場に倒れていた。
ーーー
雪生は,物見やぐらから飛ばされたあと,慌てて,自分の体に,霊力の層を何重にも覆った。その層は,硬い層と柔らかい層を交えたもにした。落下する一瞬の時間では,それしか思いつかなかった。
地上に落下したものの,うまい具合に霊力の層が働いて,クッション代わりになった。大事な雪生の二体目の体は無傷だった。今の雪生の霊力を操作するレベルでは,この霊力の体を修復する能力はまだなかった。そのため,大事に扱わなければならない。
雪生は落とされた地点で,いまだ寝転がったままだった。どうして,雪生は,落とされたのか?何がよくなかったのか?いろいと反省する点があった。雪生は,自分では戦闘能力は高くないと思ってる。確かに今では10倍速が使えるのだが,10倍速が客観的にどれだけ強いのかがまったくわからない。何分,戦闘経験がないからだ。あわよくば,雪生の美貌と巨乳だけでこの国を征服できれば,もっけの幸いと思ってる。それに,もし,この体がダメになったら,最後の残りの体に乗り移って,すぐに月本国に帰るつもりだ。すごくがんばったけど,征服は無理でしたと千雪様に報告する予定だ。
いろいろと考えたが,征服のための基本方針は決まった。別に,落とされたままの格好で考えることでもないのだが,ついつい,この体勢で考えてしまった。
その基本方針とは,領主を仲間にして,王子を手玉にとって,この国を征服するという色仕掛け作戦だ。全面的に戦いが避けられないのなら,さっさと月本国に逃げるというものだ。
雪生にとっては,すばらしい案だと思った。もっとも,人生経験の少ない雪生が考えれるのは,この程度しなかった。そんなことを考えながら,マイラたちがこの場所に現れるのを待った。
ーーー
しばらくして,マイラを連れたナタハル領主がすっきりした顔をして現れた。
ナタハル領主「お?血が飛び散っていないな。死んでいないのかもしれん」
マイラは,雪生に向かって声をかえた。
マイラ「雪生様!死んではいないですよね!こんなことでは死にませんよね。世界征服するのでしょう?こんなことで死んではダメですよ!」
マイラは,何度も世界征服という言葉を使った。マイラは心から雪生が世界征服できると信じていた。だから,世界征服を公言することに,まったく躊躇わなかった。
マイラにそう言われては,その期待に応えるしかなかった。
雪生「そうですね。こんな高さから落ちたくらいで死んでは,とても世界征服なんてできませんからね,ふふふ」
雪生は,「ふふふ」と笑うことで,マイラの期待に応えるポーズをした。マイラは,自分の体を犠牲にしてまで雪生の美人局の罠に協力してくれたのだ。それに答えるのは当然のことだ。
雪生は,ゆっくりと立ち上がった。
ナタハル領主は,立ち上がった雪生の顔を初めてじっくりと見た。それは,まさしくコードネーム『チユキ』のそれだった。
ナタハル領主「お前,もしかして指名手配中の『チユキ』だな?よくこんなところに現れたな」
ナタハル領主は,念話で,護衛隊長に,指名手配中の『チユキ』が物見やぐらのところに出現した。デラブラ市の憲兵隊に連絡するように緊急伝言した。
この場で,ナタハル領主がすることは時間稼ぎだ。転移で逃げられては困る。すでに大量殺人者なので,ナタハル領主は,一人で戦闘行動に出るという馬鹿げた行動はしなかった。
デラブラ市はメランブラ女王国だ。この国では,まだ雪生のポスターによる実質的被害はほとんどない。たが,ジブルダがビデオの編集作業を行って,サーバーに保存した雪生の全身の全裸姿の写真が裏ネットワークに流出してしまった。それを入手した若者たちは次々と命を落としていき,いたずらに若い命が失われていった。
デラブラ市の憲兵隊は,至急,王都の憲兵隊に連絡した。王都の憲兵隊長はそれを受けて,メランブラ女王に連絡した。彼女の反応も早かった。すぐに,ガルベラ女王に連絡した。ガルベラ女王の対応も早かった。当たり前だ。これ以上,無駄に若い命を失わせてはならないからだ。
だが,場所がメランブラ女王国の領土内であるため,勝手な真似はできない。助太刀という意味で,US級魔法士のウラバーレとTU級魔法士のトレーランの2名を派遣させることにした。メランブラ女王国での最強の2名だ。彼女らは,もう決して同じヘマはしないと心に誓っている。彼女らは,すぐに戦闘装備を準備して,出発ゲートから指定された転移地点への出発した。
ーーー
一方,ナタハル領主の『おまえは『チユキ』だな?』という問いに,雪生は何も答えず,自分の要求を彼に言った。
雪生「領主様,マイラは私の庇護下にあります。マイラに手を出してただで済むと思いですか?」
ナタハル領主は,ニヤっと笑った。これで,『チユキ』と思われる女性と会話ができ,時間かせぎができると思った。ナタハル領主は,護衛隊長に,魔法石を使っていいから,『チユキ』の周囲に転移防止結界を構築しろと,念話で命じた。
護衛隊長は,まだ,雪生の視界の中には姿を現わしていない。各方面からの援軍を出迎える仕事があった。そこで,転移防止結界の仕事を副隊長に命じた。
副隊長は,部下5名を連れて,物見やぐらのそばに来て物陰に隠れて,ナタハル領主と向かい合っている,ワンピースの女性を目で捕捉した。ワンピースの胸元はくっきりと開いていて,4kgもの重さをしたIカップの胸の形がはっきりと認識できた。
副隊長は,部下の5名にワンピースの女性を中心として10メートルの外側に,1面が20メートル角になる箱形の転移防止結界を構築させた。この結界は,普通の人には見ることができない。術者だけは,魔力の波動を感じることができ,構築が成功したかどうかがわかる。
部下Aは,副隊長に報告した。
部下A「副隊長,転移防止結界の構築が成功しました。でも,ここは原っぱです。動かれては,すぐに結界の外に出られてしまいます」
副隊長「では,物見やぐらに登って,上方から見て,敵がどのように動くかを予想して,次の結界の準備をしていきなさい。魔法石は充分にあるはずだ」
部下A「了解しました」
部下Aはほかの4名を連れて物見やぐらに登って,次の結果の準備を始めた。副隊長は,念話で,隊長に『チユキ』が今,どのような状況であるかを,逐次,報告した。彼らは,連係プレーの取れる連中だった。
ナタハル領主は,ニヤニヤにながら雪生に言った。
ナタハル領主「お前は,雪生(ゆきお)という名前なのか?では,雪生と呼ぶことにしよう。では,雪生の要求は何なのかな?教えていただけるとありがたいのだが」
雪生「これはまた,従順ですね。大変結構なことです。私の要求は簡単です。今日からは,私の命令に従ってもらう,という単純なことです」
ナタハル領主「なるほど,,,確かに単純なことだな。具体的にはどのような命令が出てのかな?」
雪生「領主様は,マイラを何度も抱きました。妊娠しているかもしれません。子供が生まれた場合は,その子に,この国の国王にしてください」
ハハハーー
ナタハル領主は,意外な要求に思わず腹を抱えて笑ってしまった。
ナタハル領主「雪生,いや,失礼した。あまりに突拍子もない話だったので,思わず笑ってしまった。失礼,失礼」
ナタハル領主は,おかしさを抑えて,雪生に質問した。
ナタハル領主「そうか。その可能性は決して否定できない。私は一応,王族だ。その子供には,確かに国王になる資格はある。だが,今の女王が子供を産めば,その子供が王位継承代一位になる。マイラの子供は,順番でいけば,王位継承は10番目くらいかもしれん。とても無理な話だ」
雪生「王位継承10番目ですか,,,では,1番目から9番目までの方には,この世から消えてもらえばいいのですね?簡単なこではありませんか。それで,メランブラ女王国の世界征服は完了したも同然です。マイラ! よくやりました」
マイラ「雪生様,はい,ありがとうございます」
マイラは得意げだった。
雪生「でも,この方法では,時間がかかりすぎます。いずれそうなるにしても,私のこの体は消滅してしまいます。さて,,,どうしましょうか,,,」
雪生は,真剣に悩んだ。そして,いい方法が思いついた。
雪生「マイラ! あなた,今から,この国の女王になりなさい。そして,自分の部隊をつくっていきなさい。まず,領主様の部隊をそのまま自分の部隊にしましょう。うん。それがいいわ」
雪生は,天然だった。なにせ人生経験がほとんどない。雪生の参謀になるような人物はいなかった。
ナタハル領主は,雪生がいったい何を言っているのかよく理解できなかった。思考回路が何十段階も飛んじゃっているのだ。それはそれで面白いのだが,でも,ナタハル領主の理解できるように説明してほしかった。
ナタハル領主は,衛兵隊長に援軍の集合状況を聞いた。
衛兵隊長『はい。デラブラ市から憲兵隊50名,王都の正規軍から精鋭10名,ガルベラ女王国から援軍2名が参集しました。現在,4チームに分かれて,『チユキ』の東西南北の場所に転移する準備が整っています。命令があればいつでも転移してすぐに攻撃可能です』
ナタハル領主『わかった。今から5分後に一斉攻撃せよ。もし,状況が変化した場合,偵察している副隊長の指示で攻撃せよ』
衛兵隊長『了解です』
副隊長『了解です』
ナタハル領主は,時間かせぎで,雪生に質問した。
ナタハル領主「マイラが勝手に女王と名乗るのはいいが,誰も彼女のいうことは聞かんぞ。力や金の無いものには誰も従わない」
雪生「王族の血筋だけでは,国王になれないのですか?」
ナタハル領主「簡単に言うとそういうことだ。金も大事だが,最終的には,圧倒的な力だ。力がすべてだ。それがあればいくらでも金を稼ぐことができるし,多くの兵隊も雇うことができる」
雪生「そうなのですね。圧倒的なパワーですか,,,今,マイラの息子が,荒野で魔物退治をして,レベルアップを図っています。彼に圧倒的なパワーを身につけてもらえばいいのですね?彼に,金を稼いでもらって,軍隊を組織していくという理解でいいのですか?」
ナタハル領主は,可笑しくなった。国王になるのは,そんな単純なことではない。やむなく,真面目にアドバイスすることにした。
雪生「雪生,正解に近いには近いかもしれん。今,マイラが妊娠していて王族の血筋の子供が生まれるとしよう。さらに,マイラの息子が圧倒的な力を持っているとしよう。そうなれば,次は策士だ。信頼できる策士を見つけることだ。どのような手順で国王にさせるかという方針を立案してもらうことだ。策士を探しなさい。策士を見つけることができれば,もう,雪生は必要ない。さっさと,魔界でもどこでもいいから自分のいた世界に戻ればいいだろう」
雪生は,自分の手の平をポンと拳で打った。
雪生「そうなのですね?よくわかりました。すいませんが,もうひとつ質問させてください。領主様が私の立場だったら,どのようにしてその策士を探しますか?」
ナタハル領主「そうだな,,,王都で引退した国王軍の軍事参謀を策士として選ぶだろうな」
雪生「引退した国王軍の軍事参謀ですか,,,わかりました。ほんとうにありがとうございます」
雪生は,ペコリと頭を下げた。ぽっかりと胸元の開いたワンピースの隙間から,4kgもの重さをしたIカップのお椀型の美しいおっぱいの全貌がはっきりと見えた。
ペコリと頭を下げたことで,視線が周囲から切り離された。その一瞬を見計らって,副隊長は,隊長に『GO』サインを出した。それを受けて,隊長は4班に編成された分隊に『GO』サインを出した。
ボォーー-!!ボォーー-!!ボォーー-!!ボォーー-!!
4班の分隊は,待機していた中庭から消えた。そして,雪生のいる場所から15メートル離れた4カ所の地点に出現した。
バシュー!! バシュー!! バシュー!! バシュー!!
と同時に,S級の100倍にもなる,強力な火炎魔法が4方から発射された。
頭を下げていた雪生は,何かが発射される音だけは聞こえた。すぐに,自分の体表に霊力の層による3重の防御層を施した。この操作は,基本中の基本だ。自分の身を守る基本動作だ。
ドバー!!ドバー!!ドバー!!ドバー!!
4方からのS級100倍もの火炎攻撃が,雪生の体にヒットした。それと同時に,2方向からSS級剣士が飛び出した。彼らは,自己最高の5倍速で移動することができる。しかも,その剣は,魔法剣といってよく,一人の剣には高熱を帯びて,物理的な切断だけで無く,超高熱の刃であり,もう一人の剣は,氷結を帯びて,順次に凍結させて切断するものだ。共に,あらゆるものを切断すると豪語している強者だ。彼ら2名は,メランブラ女王国を背負って立つ高名な剣士だ。
雪生は,ワンピースを完全に焼き払われたが,4方からの火炎攻撃を防ぐことができた。S級100倍程度では,雪生の体に傷つけることはできなかった。
だが,次の瞬間,,,,全裸状態だった雪生の体は,,,
シュパーーーー!!
シュパーーーーン!!
雪生の首は,超高熱の刃によって,いともたやすく跳ね飛ばされ,氷結の刃によって腹部から背中に向けて,上下真っ二つに分かれてしまった。
「キャーー!雪生様ーーー!」
マイラは,その場に跪いて,恐怖のあまり,思わず,ナタハル領主の足元に抱きついた。
マイラ「雪生様が,,,,雪生様が,,,,殺されてしまいましたーーー」
ナタハル領主は,跪いたマイラを慰めるかのように,マイラの肩をポンポンと叩いて言った。
ナタハル領主「マイラよ。雪生は遅かれ早かれ倒される運命だ。この新魔界の戦力をあまくみていた証拠だ。雪生には,実践経験というものが足りない。これでは世界征服どころか,ひとつの町も征服出来まい」
超高熱の刃を放った剣士は,剣を収めて言った。
超高熱の刃の剣士「ふん。『チユキ』と言っても,くちほどにもない。あの4方からの火炎攻撃を防いだのは見事だったが,それだけだ」
同じように,氷結の刃を放った剣士も,剣を収めて返答した。
氷結の刃の剣士「まったくだ。体が硬いかと思えば,ぜんぜんそうではない。もっとも,われわれの剣にかかれば,ダイヤモンドでも切れるがな,ふふふ」
超高熱の刃の剣士「では,勝利宣言をしようか。指名手配中の凶悪殺人犯『チユキ』を討ち取ったり!!!」
オオオオオォーーーー!!
オオオオオォーーーー!!
オオオオオォーーーー!!
オオオオオォーーーー!!
超高熱の刃の剣士の『勝ちどき』を受けて,4方の分隊もそれに呼応して,勝ちどきをあげた。
だが,彼らの愉悦はここまでだった。
まず,超高熱の刃の剣士が老人化していき,そしてミイラの状態になって倒れた。それに伴って,飛ばされた首が元の胴体の方向に移動していった。そして首と胴体が接合して,接合面さえわからないほどに繋がった。
それと時を移さず,氷結の刃の剣士も老人化していった。そしてミイラの状態になって倒れた。腹部から分離された2つの胴体は,何事もなかったかのように接合した。
この事実は,雪生自信でさえもびっくりした。
首を飛ばされても,霊体が頭から離れないのだ。相変わらず霊力の制御ができていた。飛ばされた首は,胴体と離れたが,すぐに霊力の層によって繋がれた。上下に分離された胴体も,すぐに霊力によって繋がれた。完全な接合には,多くの霊力が必要となるが,そのもとになるパワーは,二人の剣士の精力と寿命エネルギーによって補われた。もし,剣士がいなければ,胸に貯蔵された精力と寿命エネルギーを使うことになる。
勝ちどきを上げた4方の分隊は,化け物が蘇生して蘇るのを,恐怖の眼差しで見ていた。首や胴体が分離されてしまったら,いくら魔体でさえも,再生することは不可能だ。いったい,彼らが敵とする『チユキ』とは,どんな化け物なのか!!
雪生は,4分隊のうち,自分から一番近い場所にある分隊,人数にして12名だが,そこに集中して,霊力を伸ばした。全員の体に霊力を流して,魔法発動を阻止し,かつ,足の部分を麻痺させて動かせなくした。
それから,確実に二人ずつ2分かけて精力と寿命エネルギーを奪うことにした。精子から精力を奪えないので,吸収する精力は不十分なものだが,それでも,50%ほどの精力は奪うことができる。
「え?魔力が使えない?体が動かん?」
「あ,俺もだ!」
「私もよ」
「動けん。どうして??」
ターゲットにされた分隊は,まさに死刑執行を待つに等しい状況だった。
だが,残りの3分隊が黙って見てるはずもなかった。近づいて攻撃することにリスクがあるため,3方向から,火炎攻撃,氷結攻撃,さらに,爆裂弾による攻撃が行われた。
ダダダーーーン!!
ドドドドーーー!!
バー--ン!バー--ン!バー--ン!
3方向からの攻撃は,断続的に続いた。だが,その攻撃は,雪生が自分の体の前後1メートルの距離に展開した強力な何重もの霊力の防御結界で難なく防がれた。防御結界が破壊されても,すぐに新しい結界が構築された。そのエネルギーは,順次,生け贄にされた分隊の精力と寿命エネルギーから供給された。
12名の精力と寿命エネルギーを吸収するのに12分程度かかった。その間,絶え間ない魔法攻撃が何度も繰り返された。霊力の防御も何度も破壊されたが,ありあまる精力と寿命エネルギーを使って防御していった。
一分隊を全滅させた雪生は,この成果で満足して,標的魔法陣を使って,マイラの隣に転移した。
標的魔法陣を使えば,転移防止結界など意味はない。それに,雪生は転移防止結界の存在が最初からわかっていた。オーラを見ることができる雪生は,このような結界をみることができた。
マイラを抱いた後,ふたたび標的魔法陣でその場から消えた。消えたのは,雪生といマイラだけではなかった。マイラが抱いていた足の主,ナタハル領主もその場から消えてしまった。
ーーー
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