第2話子犬のケン

 この国では,農作物の管理は王族が管理している。ナトルア市周辺の農作物についても,王族が管理していて,その屋敷では,常に家政婦の募集があった。だが,給与があまりよくないため,というよりも,娼婦の仕事から見れば低いため,あまり,住み込みの家政婦の仕事を選ぶ女性はあまりいなかった。いたとしても,50歳過ぎた女性がほとんどだった。ましてや,外見が15歳の雪生が選ぶような仕事ではない。


 そのため,受付嬢は,超絶美人の15歳くらいの乙女が,給与のあまりよくない住み込みの家政婦の仕事を選ぶことに違和感を覚えた。


 受付嬢「あの,雪生さん,あなたのような美貌と若さでしたら,ほかにいくらでもいい仕事がありますよ。体を売らなくても,一緒にお酒の席に付き合う仕事もありますし,1日デートという仕事もありますよ」


 雪生「いえ,結構です。住み込みの家政婦をしたいのです。紹介していただけますか?」


 受付嬢「そうですか?わかりました。先方へは私から連絡しておきます。これが,屋敷への道順です。徒歩で3時間程度ですが,馬車であれば1時間でいけます。森林区を2カ所通過しますが,そんなに危険な道ではありません。でも,あなたの場合は,,,よくわかりません」


 この新魔界陸では,携帯などの技術は月本国から入ってきているが,自動車の技術はまだ入っていない。そもそもガソリンがないのだ。そのため遠距離の移動方法は徒歩か馬車しかない。


 転移魔法での移動も可能だが,磁場嵐がよく起こり,転移失敗による事故も時々起こる。いざっという時以外は使うことはない。ただし,都市ごとに,磁場嵐でも影響を受けない転移ゲートを設けているので,お金さえ出せばゲートを使うことはできる。ただし,魔界と同じように高額なので,普通は護衛付きの馬車を使うのが普通だ。


 雪生「そんなに危険でなければ,徒歩でのんびりと行きます。急ぐこともありませんので。ありがとうございます」


 雪生は子犬を抱いて,徒歩で北側の城門に向かった。そこから城壁を超える。


 町中を歩いていると,雪生のあまりの美しさに,何度も何度も男どもから声をかけられた。おまけに都市を護衛する衛兵にまで声をかけられる始末だ。でも,さすがに町中で,かつ日中に問題を起こすような無謀な連中はいなかった。


 雪生は北側の城門を抜けた。


 城壁を出てから屋敷まで,2カ所ほど小規模の森林を通り抜けなければならない。そこは,強盗・盗賊にとって絶好の襲撃スポットだ。腕に自信のあるもの以外は,護衛を従えて通過するところだ。


 だが,雪生には護衛はない。雪生は念話でケンに,雪生が襲われても一切の手出し無用と伝えた。


 雪生が城壁から出ていって,この森林を通ることが判明してから,雪生を尾行していた何人かの連中は,急ぎ最新鋭の携帯で電話連絡していた。これらの通信機器は,すべて月本国からの輸入品だ。すでに町中でも携帯電話会社が数社あり,魔力電波網を使って全土の新魔大陸をカバーしている。


 雪生『ケン,もし私が襲われたら,すぐに身を隠すのよ。一切の手出しは無用よ。知っていると思うけど,この肉体が破壊されても犯されても,この肉体を捨てるだけだから。でも,この指輪だけはケンが預かってちょうだい。この指輪さえ守ってくれれば,私は安全だから。それがケンの役割よ』


 ケン『わかった。私は雪生の数メートル後ろを歩くことにする』


 ケンは,雪生から20メートル後方からついていくようにした。


 しばらく歩くと,8人組の男連中が,雪生の進路をふさいだ。雪生にとっては,充分に予想された行動だった。こんな森林を乙女ひとりで歩いているなど,『どうぞ犯してください』と言っているようなものだ。


 8人組が現れた時点で,ケンはすぐに茂みに隠れた。8人組にとって,子犬などまったく眼中にない。


 8人組のボスが雪生に声をかけた。


 ボス「お嬢さん,こんなところをひとりで何をしたいの?私たちが,いいこと教えてあげようか?」


 雪生は,モジモジとしながら,何も答えれなかった。やはり,前世のトラウマが多少とも残っていたのかもしれない。


 ボァーー!!


 8人組の2名が,魔法で,雪生の全身に,魔法無効化結界が施された。魔力を消費する魔法だが,彼らは魔法石を使ってそれを発動させた。そうすることで,1時間くらいは持続させることが可能だ。魔法石を購入することができるくらいの金があれば,いくらでも娼婦を買うこともできるし,愛人だって雇うこともできるはずだ。だが,その貴重な法石を消費してまでも,雪生を犯したかった。雪生の美貌には,それだけの価値があるということだ。


 雪生は,オーラを見ることができる。悪霊大魔王としての経験があるためだ。オーラを見れば,人種,性別,年齢,戦闘力,得意技,性格,家族構成など,かなりの背景知識を知ることができる。


 千雪は,8人組のオーラを見て,彼らはこの新魔界で生まれ育った人間だと判明した。この新魔界の人口の9割を構成する一般人だ。魔界の人間と変わらないが,新魔大陸のほうが魔素の質が違うためか,オーラの質も魔界の人間とは異なっていた。


 彼らの戦闘力は,ごく一般的で中級か上級魔法士レベルだ。その非力を補うため,貴重な魔法石を数個持っていた。


 ボス「お嬢さん。あなたの体に魔法無効化結界を施した。抵抗しても無駄だよ。おとなしく我々の慰みものになってくれれば命まではとらないよ」


 ボスも含めて,オーラを見ることのできないものには,雪生が人間でないことを見抜くことはできない。


 千雪の元で『48式』は練習してきたので,簡単な武術のまねごとはできたが,雪生は抵抗をするのを止めた。もともと戦闘などしたこともない。


 雪生「わかりました。抵抗はしません。私は処女です。どうか,痛くしないでください。この体に傷をつけないでください。やさしくしてください。殺さないでください。服はこれしかないので,破らないでください。お願いします」


 雪生は,霊的には処女ではない。だが,この霊体の体としては処女だ。だから,処女と言っても間違いではない。


 「ハハハハ」

 「ハハハー」 

 「フフフーー」


 8人組は,勝ち誇ったかのように笑った。


 ボス「素直で結構だ。では,そこの草むらに行って裸になれ。脱いだ服を下敷き代わりにすれば,少しは痛くはないだろう」


 雪生は,言われた通り草むらに移動して,上下のジャージを脱いだ。雪生は下着を着ていなかった。上着のジャージを脱ぐと,Bカップの胸が露わになった。下のジャージを脱ぐと,パンティーもしていなかった。運動靴も脱いだ。服と靴はこれしかないので,大事にする必要があった。


 雪生は,脱いだ上下のジャージを地面に敷いて,その上に横になった。


 雪生「お願いです。始めてなので痛くしないでください」


 雪生は,処女のように恥じらいを込めて言った。そのように言うことで,無謀な虐待的な犯し方はしないだろうとの期待があった。その言葉とは裏腹に,胸の乳首や股間部を隠すような行動はとらなかった。


 雪生の真っ白な玉のような肌を見て,8人組の全員の下半身は勃起状態になった。雪生が全裸になったので,8人組の全員も同様に全裸になった。あとは,雪生を順番に犯すだけだ。


 犯す一番手はボスだ。当然のことだ。ボスはBカップのかわしい乳首を優しく触って,そして乳首を吸った。母乳は出なかった。おっぱいや乳首の柔らかさは,ほんものの肉体のそれとまったく遜色なかった。


 ボス「うめーー!!おっぱいは小さいが,この初々しい肌は最高だぜ。では,犯すぜ!!」


 ボスは雪生を犯した。数分で果てた。2番手も雪生を犯した。やはり,数分3分で果てた。彼の顔は,満足げで『もう死んでもいい』というような恍惚とした顔をしていた。それ以降,3番手から8番手まで,ほとんど同じように3分程度でことを終えて,人生最高の満足感を味わった。


 8名全員が雪生を犯し終わるのに,30分もかからなかった。雪生の体の中に注入されたネバネバの液体は,雪生の体から出てくることはなかった。


 雪生を犯した8名は,もう2度と雪生を犯す元気はなかった。なぜか,体からどんどんと精気が抜けていく感じがした。その感じはだんだんと強く感じてきた。


 8人組のメンバーは,皆が20歳から25歳までの若者だった。だが,彼らの顔は,すでに,40代,50代へと変化していた。そこから,さらに,60代,70代,80代へと変化していき,90代,100代へと変貌することによって,彼らは静かに息を引き取った。


 彼らの体はミイラ化していた。


 雪生の陰部から精気を奪ったあとの残りカスが排出された。


 8人組がミイラ化になって死んでいるのを見て,雪生は,この霊力の体には,とんでもない能力を持っていることを初めて知った。千雪がこの世界を征服しなさいと命じた意味がわかった気がした。


 それに,Bカップだった胸がDカップに変化しているのに気がついた。2人で片側のおっぱいがワンランク大きくなる勘定だ。


 雪生『おっぱいが大きくなっているわ。これって,精気を貯めた結果なの?』


 雪生には,よくわからなかったが,霊力のパワーが何倍にも膨れ上がっているのがわかった。このことによって,霊力のパワーを即席で引き上げるには,男どもの犠牲が必要であることが,なんとなくわかってきた。


 茂みに隠れていたケンが雪生に寄ってきた。


 ケン『何?このミイラは?襲ってきた連中なのか?』


 雪生『どうもそうみたい。この体に備わった能力みたいだわ。自分でもよくわからないの』


 ケン『さすがは千雪様の体というべきか?どんでもない能力だな。とりあえず,彼らの持ちものをチェックしよう』


 ケンは,ミイラ化した8名の持ち物をすべてチェックした。各自が,皆,亜空間収納用の指輪をしていた。その亜空間には,貴重な魔法石が収められていた。それ以外に,地面にも魔法石が4個ほど転がっていた。彼らが魔力無効化結界を構築するのに用いたものだ。だが,充分に魔力が残っていた。


 ケン『これだけの魔力があれば,S級どころか,SS級レベルの魔法を20発は発射することができる。なんとも,驚くべき収穫だ』


 雪生『私は,魔力は必要ないから,ケンが貯めてちょうだい。たくさん貯まったら,人間の魔体を買うこともできるのでしょう?』

 

 ケン『確かにそうだな。こんな強盗まがいの方法で魔力を奪うのは性に合わないが,でも,雪生さんの世界征服のためには,必要な行為だと思う』


 雪生『まだ,森林が続くのよ。同じように離れて行動しましょう』


 雪生は,服を着て,何事もなかったかのように歩き始めた。ケンは,8人の死体を火炎魔法で消去してから,雪生から20メートルほど離れてついていった。


 暫く歩くと,今度は,16名ほどの小隊レベルのごろつきが現れた。そのボスが,ゆっくり歩いて来る雪生に声をかけた。


 ボス「ほう,,,よく無事だったな。前方には,ほかのごろつきが陣取っていたはずだか,そこで,犯されなかったのか?」


 雪生「はい。犯されました。でも,おとなしくしていたら,すぐに解放されました。もうこの身は,処女ではありません。汚れた体です。この身でよければ,どうぞ犯してもかまいません。でも,体は傷つけないでください。殺さないでください。無事に屋敷まで行きたいのです」


 「クククーー」

 「ハハハーーー」

 「へへへーー」


 薄笑いがごろつきどもから聞こえてきた。

 

 ボス「そうか?でも,安全のため,魔力無効化結界は張らしてもらうぞ。女を犯すための基本道具だからな。お前を犯すために,金貨100枚もする魔力量を使うのだ。それなりに,楽しませてもらうぞ」


 雪生「私は,一切の魔法攻撃はしません。宣誓契約してもいいです。そのかわり,私をいっさい,きずつけないでください。そうすれば,貴重な魔法石は使わなくていいでしょう?安上がりだと思います」


 ボス「ほほう。性根が座っているな。よし,では,お前は,俺たちが犯している間は,いさいの魔法攻撃をしないこと,そして,俺たちは,お前に一切の体を傷つける行為はしないという宣誓契約をしよう」


 雪生とボスはこの内容で,宣誓契約をした。その後,雪生は,率先して茂みに入って,全裸となり,脱いだ服を地面に敷いて横になった。手慣れた行動だ。


 15名の若者は,全裸となって,雪生を取り囲むようにして,下半身を勃起させていた。雪生の胸は,Dカップになっていて,よりいっそう性的な刺激を誘発していた。


 ボス「ふふふ。すでに,前の連中に,犯されて手際がよくなったようだな。まあいい。では,俺からいく」


 ボスは,玉の肌のようなDカップの乳首をおもいっきり吸ったり,つねったりしてから,雪生を抱いた。


 前回と少し違うのは,雪生は犯されながらも,精気を奪うというイメージを強く念じていた。それは,霊体の欲する本能のようなもので,すぐに,雪生の思念と霊体の本能が同期して効力を発揮していった。雪生の半径1メートルの範囲にいる人物から,徐々に精力・寿命を奪った。


 3分後,ボスが射精を果たしたあと,2番手が犯し始めた頃から,他のごろつき連中が,徐々に体力を消耗して,顔つき・体つきが40代,50代へと変化していった。2番手が果てるころには,この場にいる全員が,80代,90代へと変化していって,全員がミイラ化して静かに息を引き取っていった。


 雪生は,性行為をすることなく,1メートルの範囲内であれば,男性から精気・寿命を奪うことができるようになった。


 雪生の胸は,片側で1.5kgもの重さになるHカップになってしまった。このような変化は,千雪にはなかった。千雪が生身の肉体であるのに対して,雪生は,霊力の体であるという違いのためだろう。


 ケンが,ゆっくりと雪生に近づてきた。雪生に声をかえることもなく,骸に残された貴重品を手際よく回収していった。


 雪生『ケン,なんか,手際が良くなってきたわね。こんなんで簡単に魔力や霊力が手に入るんなら,もう,家政婦なんかしなくてもいいわね』


 ケン『でも,こんなことはいずれバレてしまう。やはり家政婦として身を隠すほうがいいと思います』


 雪生『そうね。ところで,私のこのおっぱい,どう?すてきでしょう?』

 

 ケン『ああ,まったくだ。今でも,雪生さんを犯したい気分だ。でも,この魔体の体では,いったいどうなるんだろうな?』


 雪生『どう?試してみる?もう,さんざん犯されたし,霊体は,性奴隷や肉便器にされてきたのよ。あなたに犯されても,べつにどうってことないわ』


 ケン『雪生さんを抱いて,この身がなくなっても,後悔はしない。もし,この魔体がおかしなくなったら,私の霊体は,あんたの霊体と一緒にいたい。それでいいか?』


 雪生『まったく問題ないわ。ケンとは他人ではないわ。どうぞ,抱いてちょうだい』


 ケンは,その言葉を聞いて,もうどうにでもなれ,という気持ちになった。子犬の体から,もとのブラック・ウルフの体になった。


 ケン『雪生さん,悪いが,四つん這いになってくれ。背後からならなんとかなりそうだ』


 雪生『わかったわ』


 ・・・

 ケンの貯まった魔法因子が雪生の体内に注入された。だが,その魔法因子は,雪生になんの作用ももたらさなかった。また,ケンにも,なんら悪影響もなかった。


 ケン「ふーーー,よかった。最高によかった。雪生さん,ありがとう。こんな最高の気分になるの始めてだ」


 雪生「そう?私も,前世の記憶も含めて,始めて絶頂感を感じることができたわ。この体を得て,始めて幸せを感じることができたみたい。私こそ,お礼を言いたいわ」


 ケンは,子犬に姿を変えた。そして,また,先頭を歩く雪生の後方を,隠れるようにして,ついていった。


 一つ目の森を抜けることができた。そして,しばらくして,二つ目の森がでてきた。この森は,入り口に,門番のような人が数名立っていた。


 門番「おい,お前,ここを通過するには,金貨2枚を支払え」


 雪生「え?金貨?」


 雪生は,亜空間収納をケンに預けていた。やむなく,後方で歩いていたケンを呼んだ。そして,ケンから収納指輪を受け取って,金貨2枚を取り出して渡した」


 雪生「はい,金貨2枚よ。通らしてちょうだい」


 門番は,ちぇっっと言って,子犬を抱いた雪生を通した。


 その後,門番は,携帯で暗号を仲間に送った。その内容は,『特上品登場!単独行動!』というものだった。この2番目の森は,組織的に盗賊が通行料を取っていた。いつもなら,銀貨1枚程度なのだが,美少女がひとりということもあり,門番が適当にふっかけた。


 門を通り抜けると,また,ケンは,後方に引き下がって歩いた。雪生もケンも組織的に襲われると予想していた。どのように襲われるかが問題だ。


 しばらくすると,急に雪生の体に魔力無効化結界が発動した。


 雪生「え? 急になんで?」


 雪生は,相手の見えない攻撃にびっくりした。もし,これが,爆裂魔法などだったら,一巻の終わりだ。雪生は,まだまだ相手を事前に認識する能力に乏しいことがわかった。いくら相手を殺す技量が高くても,実践で勝てる可能性はかなり低いことが,まじまじとわかった。


 物陰から2名の魔法士が姿を現した。彼らは,以前に遭ったごろつきのような連中とは,一戦を画していた。明らかに『軍隊』として訓練された魔法士だった。雪生は,このように敵として,軍隊としての魔法士に遭うのは初めてだった。


 魔法士A「お嬢さん,こんなところを1人でくるなんて,ちょっとおかしいのじゃないか?魔力の波動がほとんど感じない,ということは,魔法は使えないのか?」


 雪生「以前は,少しは使えたのですけど,今は使えないみたいです。でも,これって,何ですか?」


 「これ」とは,魔力無効化結界のことだ。雪生はもちろんわかっていたが,わからない振りをした。


 魔法士A「魔力無効化結界だ。お嬢さん,宣誓契約をすれば,その結界を解こう。私たちの性奴隷として1週間過ごすこと。その間,お嬢さんは,私たちに魔法攻撃はしないこと。その他,物理的な攻撃もしないこと。例えば,拳で殴るとか,刃物を持って攻撃するとかだ。私たちは,お嬢さんに身の安全を保障しよう。傷をいっさい加えることはしない。しかも,謝礼として,一日金貨20枚を支払おう。1週間で金貨140枚だ。決して悪い条件ではないと思うが,いかがかな?」


 雪生「・・・・」


 雪生はどうすべきか,判断に困った。だが,条件をつけて同意することにした。


 雪生「基本的に同意します。ですが,一日の謝礼金を金貨50枚にしてください。それに,一日の性奴隷の時間は8時間まで。謝礼は1週間分の前払い。それなら同意します」


 魔法士A「ほほう,,,大きく出たな。でも,お前のその巨乳と美貌ならその価値はある。いいだろう」


 魔法士Aと雪生は,宣誓契約を行った。彼は,魔力無効化結界を解除して,雪生を盗賊団のアジトに連れていった。



 ー 盗賊団のアジト ー

 アジトに行く道すがら,多くの労働者と数人の女性の姿もあった。女性たちの姿は,胸をはだけていて,男性の性欲を刺激させるような姿をしていた。明らかに娼婦だ。道すがら,雪生は,この盗賊団の概要を魔法士Aから話を伺った。


 この森には,小規模だが魔鉱脈があり,そこからの採掘作業を行っている。盗賊団は,その治安維持と売春関係を仕切っている。採掘作業員は,変動するものの,常時50名ほどが働いており,娼婦は10名体勢だ。ただ,娼婦も1週間おきくらいで回転させないと,クレームが発生するので,そのアレンジをするのが意外と大変なことだとも語っていた。


 そんな会話をしているとき,もう1人の魔法士の歩く速度がゆっくりになり,しまいには,歩くのをやめて,その場に倒れた。あまりに静かに倒れるので,魔法士Aは,まったく気がつかなかった。


 倒れた魔法士は,ミイラになっていた。後から来たケンは,そのミイラを人知れずに,火炎で消去した。


 魔法士1名消去完了。


 この行為は,契約違反ではないので問題ない。だって,それは,霊力の体に付随する能力であり,魔力や物理攻撃ではない!



 ー 団長室 ー


 雪生は団長室に通された。団長と言っても40代の中年だ。苦労を重ねて,やっとここまでの組織を作り上げた。魔法が得意というわけではなく,組織作りが得意なタイプだ。


 魔法士Aは,雪生の契約条件を述べた,その上で,採算があうことを説明した。


 魔法士A「雪生は,このように超美人で巨乳です。30分金貨10枚でも充分に売れるでしょう。労働者に3時間提供すれば,一日金貨60枚は稼ぐことができます。残りの時間は,われわれがシェアすればいいと思います。団長,いかがですか?」


 団長「その辺は,お前に任す。私がこの雪生を抱く時間も作ってくれればいい」


 魔法士A「もちろんでございます。団長には,一番最後の1時間を割り振りたいと思います」


 団長「任した。よろしく頼む」


 団長は,雪生の顔を見ても,巨乳を見ても,あまり感情を表に現さなかった。欲に溺れることをうまく律するように普段から努めている様子だった。


 魔法士Aは,もう一人の魔法士が消えたことにまったく気がつかなった。雪生のアレンジで忙しかったからだ。


 労働者に,雪生を紹介して,30分金貨10枚,先着6名という提案をすると,彼らからクレームが出て,15分金貨5枚にしろ,という声が出た。それでも,先着12名しか雪生を抱くことはできない。そこで,一度に,2名が同時に抱く,という条件で,1人15分,金貨3枚,先着24名ということになった。それでも,どうしてもその日に抱きたいという要望が強かったので,1人10分,金貨2枚,一度に3名を同時に相手するということになった。


 これなら,3時間で全員が抱けることになる。その後,盗賊団のスタッフ10名が,30分ずつ抱くことで,8時間を有効に使うことが可能となる。



 ー 雪生の部屋 ー


 雪生には,特別に,やや豪華な部屋が与えられた。ここで,客を取ることになる。仕事の開始時間は30分後だ。8時間で,男ども全員と相手をすることになる。この部屋は,裏口があり,事を果たした連中は,裏口から出ることになる。出入り口が同じだと,バツが悪く感じる客もいるからだ。


 ひとりになった雪生は,はぐれたケンをここに連れてくるため,標的魔法陣を起動してケンを召喚した。


 ボァーー!


 子犬のケンが姿を現した。


 ケン「え?なんで??おれ,召喚されたの?」


 雪生「そうよ。黙っていてごめんね。でも,ケンがどこにいようと,私のもとに呼べるのよ。私は,30分後から客を取ることになるの。それはいいんだけど,今から8時間は,ぜんぜん身動きできなくなるわ。その間,ここの様子を探ってほしいの。魔鉱脈があるらしいわ。できれば,全部盗みたいの。8時間後に,その算段をつけてちょうだい。私を抱く連中は,すべてミイラにして,その死体は亜空間に入れておくわ。


 ケン「わかった。では,人目のつかないところで,これまで奪った亜空間収納指輪のパスワードを解析して,中に何があるかを調べてみる。もしかしたら,魔鉱脈を奪う有用な道具があるかもしれん」


 雪生「え?パスワードって,すぐに解析できるの?」

 

 ケン「小さい頃,パスワード破りを趣味にしていて,それなりにノウハウを持っている。奪った指輪すべてのパスワードの解除は無理でも,3割くらいは解除できると思う」


 雪生「へえーー!!意外とやるじゃん。じゃあ,頑張ってちょうだい。念話でいつでも通信していいからね」


 ケン「了解した」


 ケンは裏口から出て行った。裏口があるのは便利なものだ。



 ケンは,人目のつかないところで,奪った亜空間収納指輪のパスワード解除を始めた。どんなに堅牢なパスワードでも,魔力を使ってパスワードを入力する限り,その魔力残渣が残ってしまう。たくさん打つキーボードのキーには,油光りがするのと同じだ。


 ケンは,魔力残渣を調べるのが得意だった。小さいころからの趣味だ。その結果,奪った15本もの指輪の内,なんと,すべての指輪で解除が成功した。設定していたパスワードが単純だったこともあるし,盗まれるという発想がなかったことも大きな要因だろう。まったくパスワードを設定していない指輪も3本あったくらいだ。


 亜空間収納の中身を検証した。その結果,特に参考になるものはなかった。あっても,爆裂弾の強力な呪符が数十枚ある程度だった。


 ケンは,魔鉱脈に通じるトンネルの奥を爆破させる案も考えたが,トンネルが陥没してしまって,魔鉱脈が埋もれてしまて,採取困難になるだけだと思い直した。


 現場百編。まずは,現場を見ることにした。ケンは,豊富にある魔法石を使って,さらに自分の体をネズミ大の大きさにして,トンネルの中に入っていった。作業員は,まったく身当たらなかった。

 

 ケン「作業員が見当たらないな。雪生がケリをつけたのかな?わからん。まあいい。このまま,魔鉱脈のところまで,進もう」


 ケンは,独り言を言って,どんどんと奥へと走っていった。


 魔鉱脈の塊,魔鉱石と一般の岩石の混じった岩石がごろごろと転がっていた。ケンは,それらをどんどんと指輪の亜空間収納に入れていった。ここの魔鉱脈は,品質があまりよくなく,純粋な魔鉱石は,数cm角の大きさしかなく,それが,やや高密度に散らばっているような魔鉱脈で,精錬作業にかなりの時間を要すると思われた。


 ケンは,魔鉱脈の知識にはあまり精通していなかった。この程度でも,実は,上質な魔鉱脈であるという事実をケンは知らなかった。ただ,この魔鉱脈は,そろそろ掘り尽くされて,あと数ヶ月で終了するような現場だった。そのため,作業員は,作業効率を遅らせて,できるだけ,長く仕事ができるように,いろいろと小細工していた。つまり,ほとんど掘り尽くしてしまったのだが,それを隠して,小出しにしているという状況だ。


 素人のケンでも,その事実は,おおよそ理解できた。隠していた魔鉱脈の塊を発見したケンは,手持ちの12個の亜空間収納指輪に,どんどんと収納していき,ほぼすべての魔鉱脈の塊を指輪に収納することができた。


 ケンは,トンネルを出てから念話で雪生に連絡した。


 雪生からは,そのまますぐにナトルア市に戻って換金するようにとの指示だ。換金後は,ヒトの魔体を入手してから,雪生に合流するように指示した。


 ケンはその言葉に従った。子犬の姿になってから,転移魔法でナトルア市の乙女教支部の控え室に移動した。魔体の体なので,磁場嵐の影響を受けにくいので,気兼ねなく転移魔法を使うことができる。


 その後,魔鉱石を換金して,ヒト型の魔体を入手することに成功した。ただし,魔鉱脈の量がかなり多かったため,買取額の算出に,およそ1週間もかかってしまったのは計算外だった。

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