第3話
俺は、アイツと決別した後、悲嘆にくれた。片翼を失った。そんな感じだった。
理由が分からずアイツと俺との関係は切れた。
失意の中、俺にできること。それは歌うことだけだ。
その中で、俺はソロデビューを果たす。
楽器作曲はできないが、作詞の作成はできた。だから最初に歌詞を作り、鼻歌で曲のメロディーラインを演奏者に伝えて作ると言う手法をとった。
5万枚は売れるだろうと思っていたが、その予想は大きく外れる。
初週5000枚。
それ以上はなかなか伸びず、最終売り上げは1万枚に満たなかった。
ショックだった。
俺の歌声が届かない。
なぜだ?俺は自問自答した。
歌唱力や表現力は上がっているし、歌詞の内容も悪くない。メロディーラインも合っている。けれどそれが売り上げに結びつかない。
俺は頭を抱えた。
ソロデビューのスタートは、完全に躓(つまず)いてしまった。
ソロデビューから半年で、サードシングルまで出すが、売り上げはソロデビューシングルに届かず、散々なものだった。
それでも、望みを捨てずに、ソロで初のファーストソロフルアルバムを出す。
これは売れた。3万枚。デビューシングルを追い抜く程度には。しかし、アイツとユニット組んでいた時のような売り上げにはならなかった。
ソロデビューから3年で、7枚のシングル。3枚のアルバムを出したが、どれもファーストソロフルアルバムに届かなかった。
売れない地獄だった。
プロミュージシャンとしては、堕ちに堕ちて行った。
そして、レーベルから次のベストアルバムが売れなければ、契約を解除すると言われた。
結果、ベストアルバムは売れなかった。3000枚と言う過去最低のもので、レーベルから契約解除を言い渡された。
5年でソロ活動は終わった。プロミュージシャンとしても。
俺は、絶望に打ちひしがれ、公園のベンチに携帯電話を握り締めながら座っていた。
ああ、アイツとまたセッションしたい。楽しかった頃に戻りたい。そんな思いが、込み上げて来た。
そんな思いに黄昏ていると、不意に携帯電話の着信が鳴った。
俺はディスプレイを見る。
見た瞬間、体に稲妻が走った。
そこにはアイツの名前があった。
5年間全く連絡を取っていなかった。なのに、アイツから連絡が来た。
嬉しかった。理由も告げず去って行ったアイツなのに。
俺は電話に出た。
「もしもし」
「久しぶりだね」
5年ぶりのアイツの声を聴いたとたん、涙が出そうになった。
「これから会えないかな?今更だけど活動休止の真実を懺悔したい」
終わり クロスⅢに続く
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