普通じゃない人の普通

おしょうしな

読み切り

 「僕はね、誰にも嫌われたくないんだ。」

もっと具体的にはどうかっこいいのかを求められる年齢のその男は、抽象的なことしか離せなかった。好奇心はある、人と話すことも苦でない、やる気もある。けれど彼には決定的な欠点があった。彼は中身が子供なのである。どう子供かというと、自分の人生は与えられるものだととらえている点だ。だから彼の行動は常に誰かが最後には尻を拭ってくれる、助けてくれると思った行動である。人が彼を避けるのは必然だ。では彼はどうすればいいのか。彼自身も分からない。いや、分からないからこそ今日までそう生きてこれたのだ。そんな中で私は生まれた。

 「僕、私の意見を聞いてくれないか。」

僕は答える。

 「いやだ。これ以上傷つきたくない。」

私は話す。

 「ここで話を聞き一瞬の傷を負うのと、聞かないで大きな失敗を社会で起こし一生の傷を負うのではどちらがいい。」

 「分かってるさ。」

僕は深くため息をつく。

 「僕。私はね、現実の自分のダメさに目を瞑ってはいけないと思うんだ。」

 「そんなの言われなくたって分かってるさ!」

 「いいや分かっていない。その証拠に、今日だって同じミスを繰り返したじゃないか。プリントするだけにコンビニを3往復したのだよ?なぜ確認をしない?」

 「だって、確認するのが面倒だったんだ。どうせ合っていると思っていたし。」

 「3往復する方が、私には面倒だと思えるんだけどね」

 「ほんと、その通りだよ。」

 「僕。そろそろ目を開けなければならないよ。でなければ、君の周りには目を瞑ったような人ばかりが集まる。傷を舐め合い、理由を作って何もやらないような人とばかり一緒にいるようになる。そうすればいずれ、君はその中の一員になってしまうよ。そうはなりたくないだろ。」

 「なりたくない。でも目を開けるって具体的にどうすればいいのさ。」

 「簡単さ。ダメな自分を受け入れるんだ。受け入れた先に、ダメな自分である前提で全てを考えることができる。そこがスタートラインさ。」

 「でも怖いよ。」

 「大丈夫だよ僕。君には私がついているじゃないか。常にそばにいるさ。いつも私は君の味方だよ。」

 「、、、分かったよ。明日起きたらやるさ。」

そうしてまた、同じ日を繰り返す。

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普通じゃない人の普通 おしょうしな @kojimay1029

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