第10話 進化する侵略者 7

 俺たちはバリケードを飛び越えることができた。それどころかビルも飛び越えてしまい、飛行機のパイロットと目線が合いそうな上空に到達してしまった。

「何万人への影響を顧みずに止めてしまうなんて、私たちを捉えるのに随分躍起みたいだね」

「おい! そんなこと考えてる場合かよ!」

 俺はジェリーに話しかけた。今まで沢山危険な思いをしてきたが、流石にこれは危なすぎる。

 一瞬静止した体はすぐに地上に引き戻される。

「一体どうやって降りるつもりなんだよ」

「そうだな……。これからどうやって追っ手をまこうか」

「聞いてんのかよ!」

 体はどんどん加速していく。見下ろしていたビルがみるみる近づいてくる。俺がバタ足したってクロールしたって、迫り来る地上は止まらない。

「何かに頼って逃げ切る方法はやめた方がいいね。今回みたいに予定が狂いかねない」

「その反省はいいから、下! 下ー!」

「それも普通に逃げ回ってたらどうしても目立ってしまう」

「ああ、もう直ぐ地上にぶつかる……」

「何か、姿をくらませれる手段が思いつきそうな気が……」

「……ブツブツ言ってないで、どうにかしろこのタコ!」

 おれの頭で考え事をしてるジェリーを殴った。

 突如、襟足を引っ張られるような力を感じた。全身に重力を感じ、ピンと足が伸びた。近づいていた地上が止まっている。

「君、さっきからうるさいよ」

 頭上を仰いだ。さっきまで頭で餅みたいになってたジェリーは、薄く広がっていた。その姿はまるで、グライダーのようだった。

「滑空して地上に降りるまでに、僕に時間をくれるかい?」

 落下が止まってから、俺は急に落ち着いた。

「はい……」

 地上からはサイレンの音が絶え間なく聞こえている。米粒のような人々が忙しなく動いている。その光景を見ながら。俺は怒られた子供のように俯いて飛行していた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る