第7話 進化する侵略者 4
手を挙げるとタクシーはすぐにつかまった。タクシーが俺のよぐ横にとまると、後部座席のドアが開いた。
「いいかい、運転手に怪しまれるような動きをするんじゃないよ。君の声はマスクのおかげで聞こえないけど。私は君の一挙手一投足まで目を向けていられない」
俺は小さくうなずくと、タクシーに乗り込んだ。
「お客さん、どちらまで」
俺は駅まで向かうよう頼むと、目をつむった。
「俺は寝たふりをしておくよ。次の指示はお前に任せる」
「懸命だね。わかったよ」
視覚を遮断し、俺の感覚は耳に集中する。エンジンの音と通り過ぎる車の音がする。その中で、確かに運転手の存在感がある。俺は妙に運転手を気にしてしまい、ジェリーに話しかけた。
「なあ、ジェリー」
「なんだい?」
「お前って研究室からずっと逃げてきたんだよな。その、怖くなかったのか? 追っ手の存在に押しつぶされそうにならないのか?」
さっきから人目が気になって仕方がなかった。一度向けられた銃口と冷酷なまなざしは俺の心臓を握りつぶそうとしていた。もしジェリーもその気持ちを抱え続けているのならば、どれほどの苦しさなのだろうか。
「怖いに決まっているじゃないか」
ジェリーはいつもの調子で続ける。
「君と出会った時もそうさ。走るのをやめたら撃ち抜かれることは明白だった。あの時はヘリコプターを乗っ取ろうとしたんだ。だけど、失敗したな」
こいつの調子は無機質なようで温かみがある。人じゃないのに人のように感じてしまうことがある。
「じゃあ、俺と一緒だな」
「そうだね。君も疲れているだろうから、少しだけでも寝ていてもいいよ」
緊張の糸は張り詰めたままだが、ジェリーも不安や恐怖を感じていることを共有すると。少し気が楽になった。
「リョウ、起きろ。リョウ!」
耳元でジェリーの声がした。いつの間に寝ていたようだった。脳が一気に覚醒する。
「ついたのか?」
「いや違う、緊急事態だ」
「緊急事態?」
「ああ、私たちの動きがばれている」
そんなばかな。俺は思わず目を開いた。タクシーの運転手はミラーで俺を見た。
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