第4話 進化する侵略者 1

「ここまでくればいったん大丈夫か」

 頭から声が響いた。自分の意志にかかわらず空中飛行をさせられた俺は古めかしい建物の中にたどり着いた。今までのんきに飛ぶカラスやハトをうらやましく思っていたが、考えを改めなければならない。俺は地面に倒れこみ、仰向けになった。

 俺に寄生生物がついてから数十分がたった。体の一部を乗っ取られた俺は、ビルの間をくぐり、住宅街を縫い、やがて人の寄り付かない場所についた。外観を見たところ、ここは廃工場だった。

「ずいぶん疲れているみたいだね」

 また頭から声がした。

「お前……。何者?」

 やけに高い天井を見つめながら俺は言った。そんなことは聞かなくてもわかっていた。こいつは研究員を操って暴れまわってた寄生生物。そいつに俺は寄生されたのだ。

「私はジェリーだ」

「名前を聞いているんじゃない」

 俺は立ち上がった。目線の先に割れた窓ガラスがあった。そこには頭に丸いものがのっかっている俺が映っていた。

「さっきニュースで見た。日本中がお前のことを探しているんだ」

「へえ。やっぱり大事になっているんだね」

 突如頭の丸いものがうごめき、口のようなものができた。こいつ、ゼリー状の物体出てきているんだ。

「ぼくは人類が作り出した初めの人工生命体モデル。ジェリーさ。どうしても成すべきことがあって外の世界へ飛び出してきたんだ」

「成すべきこと?」

「どうしてもやりたいことがあってね。そこで、君に逃げる手伝いをしてもらいたいんだ」

 どうしてもやりたいこと。ニュースでは報道されていないことだ。

 俺を連れ出した理由がどうであれ、俺の取るべき態度は決まっていた。

「そんなこと知ったことか。俺は今からお前を研究者に突き出すんだ。お前みたいな凶暴な生き物、世の中に放しておけるか」

俺の話を聞いて頭の寄生生物は笑った。

「僕って随分危険だと思われているみたいだね」

頭の寄生生物はくねくね動いた。

「ところで君はそんな危険な生き物に連れ去られたわけだけど、世間から心配されてないのかい」

こいつがいうことも確かに気になる。俺は携帯を開くと寄生生物について調べた。

「な、何だこれは」

 俺は携帯を見て驚愕した。寄生生物も携帯を覗き込んだ。


『E-204人工生命体、20代男性に新たに寄生』

『新たに佐藤リョウに寄生。全国で彼の捜索が始まる』

『E-204に寄生されたことで人体解剖が確定した「佐藤リョウ」。その高校生の知人に取材!』


「君、人気者だね」

俺は床にへたり込んだ。初めは事件の様子を観察しているだけだったのに、事件の渦中に巻き込まれていた。

「人体解剖されるって書いてあるね。どうやら君ものこのこと姿を表すわけにはいかなそうだね」

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