第3話 逃走する侵略者 3
「気を抜くな。奴は必ず生きてる」
瞬く間にヘリコプターの残骸は包囲された。煙でヘリの様子がよく見えない。
煙の中から白衣の男が現れた。血で体が半分赤かった。包囲している人をにらみつける。敵意があることは明確だった。
「動かなくなるまで打ち止めるな。奴はそう死なん」
寄生生物に銃弾が浴びせられた。体中に当たった寄生生物は体勢を崩し倒れた。倒れた後も這いながらにらみ続ける。まるで何かを探しているようだった。徐々に鈍くなる寄生生物の体。包囲していた人が徐々に距離をつめているとき。
俺は寄生生物と目が合った。
立ち眩みがした気がした。尻もちをついた俺は体を持ち上げた。随分気を取られていた。
立ち上がって周りを見て、俺はあっけにとられた。さっきまでヘリコプターを囲んでいた人々が次は俺の前にいた。
「寄生体が通行人に寄生。捕獲作戦を継続します」
一人が無線に向けて話した。
「あ……。あの」
「君、自分の名前が言えるかい?」
「佐藤リョウ、です……」
「自称佐藤リョウを保護。輸送に移ります」
何が起こっているのか理解が追い付かなった。一人が俺にライフルを向け、体中に緊張が駆け巡った。
「あの……。俺状況が分かってなくて」
「これは麻酔銃だよ。少しの間だけ君には眠ってもらうよ。少しだけ」
今すぐにここから逃げ出したい。そのはずなのに体はびくりともしない。
麻酔銃の引き金が引かれた。目の前の銃声に目をつむった。宙に浮くような感覚を覚えた。
「自称佐藤リョウが逃亡。追跡します」
周りの騒々しさに目を開けた。俺は本当に宙に浮いていた。
「寄生体はレベル1に到達。繰り返す、レベル1に到達」
落下する体を制御できない。俺は思わず叫び声をあげた。
体は自然と着地できた。銃弾をよけながらその場から走り去ろうとする。
「君、高いところは得意かい」
どこからか声が聞こえる。
「いや……、そんなに……」
「じゃあ目をつむったほうがいいかもね」
そう言われると、俺は襟のあたりを掴まれるようにして
宙に浮いた。都会のジャングルを後ろ向きに飛んでいく。体の自由を奪われている俺は叫ぶしかなかった。
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