彼女のSNS

ゆう

第1話

大好きな友人が亡くなった。彼女のSNSをどうするか、なかよしの友達グループで話し合った。


友人の一人は、アカウントをすぐに閉じるべきだと言った。彼女の写真がネット上で放置されたままになることを心配しての意見だった。彼女のことを心配していた。


友人の一人は、SNSを残してほしいと言った。自分が見たいから残してほしいと言った。


できるなら、彼女がしたいようにしたかった。それが正解だと思っていた。


彼女のご家族は

「SNSのことはわからないから任せたい」と言った。


春のはじめに、初めて彼女の家に行った。お仏壇にお参りをして、彼女の携帯電話から、彼女のSNSに訃報を知らせる投稿をした。


花が大好きだったので、さいごの写真は友達みんなで贈った四十九日のお花のアレンジにした。


「残したいです。でも、それはわたしのためです。だから、きれいに残そうと思います。ずっと見るから、ずっと残っても大丈夫なようにしたいです。」


ご家族からは「それでいいよ」と言われた。


彼女の書いた文章や、彼女の写真で溢れたSNSは、たまに見返すとやっぱり楽しい。自分のSNSを開いたとき、友達の一覧にいる彼女のアカウントを見つけて、嬉しくなる。ちょっとだけ、安心する。


わたしは結局、彼女のSNSアカウントを閉じることができなかった。アカウントを消すことは、世の中からもう一回彼女を消すことのように感じて、どうしてもできなかった。


どうせできないから、残す一択だった。これは亡くなった彼女本人の希望ではなく、彼女の心配をした友人の意見でもない。100%わたしのため。


もしも彼女に聞けたなら、何て言うかなと想像することがある。


頭のなかで、「それでいいよ」と言われた気がした。

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