【きっと美味しい 04】
広場に行けばまた嫌がらせをしにくるかもしれないというリリーの言葉通り、ロッゲンはやって来た。
エダの銅像に見守られながら、リリーは勇気を振り絞る。
「もうリリーが不安になるようなこと言ったり、石を投げたりするの止めて! この間怪我して、とっても痛かったんだから!」
「はあ? どこに怪我なんかしてるんだよ。元気そうじゃん」
綺麗な金髪に可愛らしい顔立ちで、しかしどこまでも不遜にロッゲンは言い放つ。
「それはあたしの回復スキルで治したからです~! リリーちゃん可哀想だったんですよ!? 好きな女の子泣かすなんてサイテー!」
「誰が誰を好きだって!? ていうかアンタ誰だよ!」
「アルバン先生のところでお世話になってる者です~!」
威勢の良い若子を見て、恋唯はちょっとびっくりしていた。相手が異性でも、カミルやロッゲンといった子どもが相手ならすらすらと話せるようだ。
「こんにちは、ロッゲンさん。私は昨日も会いましたけど、覚えていますか?」
リリーを庇うように恋唯が前に出ると、ロッゲンがたじろぐ。
「リリーさんが怪我をしたのも、泣いていたのも本当のことです。ロッゲンさんは何がしたいのですか。リリーさんの気を引きたいにしても、やり過ぎではありませんか?」
「気を引きたいわけじゃねえよ! さっきからオレがそいつのことを好……好き……だとか、そんなわけねーし!」
ロッゲンはわかりやすく顔を真っ赤にしている。
「そいつの母親がお母様のことを困らせてるから、その子どもをオレがやっつけてやってるだけだ!」
「お母さん同士の問題のことは私にはよく分かりません。けれどそれがリリーさんを傷つけていい理由にはなりませんよ」
ロッゲンの二の腕辺りを恋唯が掴んだ。
大人からそんな扱いを受けたことがないのか、ロッゲンが戸惑って、怯えた様子で恋唯を見上げている。
「どうしても、ごめんなさいが言えませんか? 悪いことをしたという自覚は持てませんか?」
「オ……オレは悪くない!」
「じゃあこれからも、リリーさんにああいったことを繰り返すつもりなんですね」
腕を掴まれたまま、ロッゲンは一瞬、リリーの方を振り向いた。
小さな体を怒りに震わせているリリーと目が合って、ロッゲンはすぐに目を逸らす。
ロッゲンが幼い恋愛感情を拗らせていることに、恋唯も気付いてはいた。
だが彼は、リリーに対する態度をこれからも変えようとしないだろう。
「ロッゲンさん。貴方はきっと……」
きっと、美味しいはず……。
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