【守ってあげたい 06】
恋唯と若子はハンスに言われて、二階の部屋へと戻った。
服やこちらの下着と思わしきもの、履けそうな靴などを、部屋にあった鞄にまとめて入れさせてもらったのだ。
ハンスに中を確認してもらおうとしたが、もう使う人はいないのだから、全て持って行ってもいいのだと首を振る。
「私たちを逃がしたことがお城の人たちに知られたりしたら、ハンスさんは大丈夫なのですか?」
「どうだろうな。まあ、あんたたちの逃亡に協力したことが知られて罰せられても、俺一人が死ぬだけだ」
すでに覚悟を決めているのだろう。どこか清々しい表情でハンスが言う。
若子が心配そうな顔をしているので、恋唯が代わりに聞いた。
「罰せられるんですか? 私たちはハズレ異世界人ですし、管理がイストさんに一任されているのなら、いなくなっても騒がれないかと思いましたが」
「まあ、罰は下るだろうさ。いずれにせよ、俺はずっと、イスト様の行いを咎めることさえ出来なかったんだ。……せめてもの罪滅ぼしだ。長いこと助けられず、すまなかった」
「い、いえ、そんな。おじさんのせいじゃないですよ……!」
「支度が出来たらのなら陣に入りな。今後のことは弟と相談してくれ。あいつは俺と違って頭がいいから、きっと何とかしてくれる」
恋唯と若子の二人はしっかりと手を繋いで、太陽の陣に足を踏み入れた。
二人を包み込むように足元から光に照らされ、視界が白くなる。
「こんな国に喚んでしまい、本当に申し訳なかった……」
恋唯も若子も眩しさに目を閉じる。
年老いた男の後悔の声だけが、かろうじて耳に届いた。
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