第6話 絶対におごってはいけない

息子には小さい頃から絶対におごるなと言ってきた。

弱い子を見下したり、偉そうな態度をとるとその都度厳しく叱ってきた。

息子は謙虚な子に育ち、大学生になった。


その日息子は高校の部活の後輩が大学に合格したお祝いに食事に行くと言った。

それで私は久しぶりに会社の友達と晩ご飯に行くことにした。


レストランにいて席に案内されると、隣の席に偶然にも息子がいた。

食事を食べ終わった後しばらくして息子が言った。


「しばらくバイトの日が続くし、そろそろ帰るか」

「はい」

「じゃあ割り勘で」


顔から火が出そうだった。

私は息子の方を見た。


「昔から絶対におごるなと言ってきたじゃないか」と言われている気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る