異性が苦手な2人が出会ったら、キョリ感がバグった。
空羽 碧
1.夏の暑い日に.....①
8月1週目の朝 太陽の日差しがレースカーテンのついた窓から入り込む。
照らされた部屋は、さっきまで動いていたであろうエアコンの冷気をかき消すほど蒸し暑く、目が覚めてしまった。『あちぃ,,,,』
ベッドに転げながらスマホの画面をタップするとちょうど時計の数字が6から7になった。
本来ならスマホのアラームが30分後に鳴る予定なのだが、もう寝ることはできないのでアラームをなしに変更し、エアコンのリモコンを操作し運転ボタンを押し設定温度を24に合わせる。
ピッという音とともに吹き出し口が上下に動き急ピッチで部屋を冷まし始める。
冷ましきるのに邪魔な太陽の日差しを隠すため、厚手のカーテンを閉める。
『最悪な目覚め方だよ....ほんと.....』自然と口にしてしまうほど目覚めを邪魔されたことに嫌な気分になっていた。
涼しくなった部屋を歩き、隅の方に置かれた一人暮らし用の小さな冷蔵庫から昨日コンビニで買っていた菓子パンと抹茶ラテを取り出す。
「一人暮らしの男の朝ごはんなんて、こんなもんだろ。」
誰かになにか言われたわけでもないのに、こんな事を考えてしまうのは食生活が乱れているのが自分でもわかっているからだろう。
台形の足がついているホワイト色の折りたたみテーブルを出しっぱなしにしているので、その上に菓子パンと抹茶ラテとベッドに置きっぱなしのスマホを置く。
『いただきます』
菓子パンを片手に持ちスマホを触っていると、上から天気アプリの通知が届く。
〈 熱中症警戒アラート 涼しい環境で過ごし こまめな水分補給を! 〉
と書かれているので通知を押しアプリを立ち上げると、背景が雲ひとつない青色で 〈 現在 28℃ 晴天 最高37℃ 最低23℃ 〉と表示される。
「めちゃくちゃ暑いじゃん。外に出たくねー。なんでこんな日に学校いかなきゃならないんだよ......」と思ってしまう。
抹茶ラテのペットボトルには水滴がつき、飲もうと持つと下には円型に小さな水たまりができていた。
時計は7:55と表示している。制服へ着替えカバンに荷物を詰める。2万ほどするワイヤレスイヤホンと家の鍵を左ポケットへ、スマホを右ポケットに入れ玄関ドアを開ける。
『行ってきます』
誰もいないが、言うのが習慣になっているので変えられないし、変えるつもりもない。
ドアを閉め、鍵をかける。そのままエレベーターの方へ行き、ボタンを押し1階から呼ぶ。
その間に、LIMUというアプリの右上に赤い丸で1とついているので開く。下のタブをトークにすると、一番上に
タップしトークを開くと0:50に〈 そうかもなw 〉と返信が来ていた。
エレベーターが来たので乗り込み、俺は
〈 おはおは 〉
〈 今日学校行かないといけないけどめっちゃ暑い(。´-д-) ハァ 〉
と送る。
『1階です』という声が聞こえてきたのでスマホをポケットにいれエントランスから外に出る。
家の中にいたときよりも強い日差しが照りつけ、汗が出始めた。
学校に行くために駅に向かって歩く。徒歩5分で着くのでとてもありがたかったりする。
夏休みも中盤になってくるので友達とはしゃぐ小学生の姿がたくさんみえるのだが、今日はとても少ない。
当然ちゃ当然で 熱中症警戒アラート 最高気温37℃ こんな状態だと、どの親でも外に出るのを止めるだろう。
何人かは、公園で遊んでたりするので親の制止を振り切って来ているのだろう。
小学生頃の自分も守らない側の人間だったので、あの子達の意見・考えがすごいわかる。
でも、同時に親の想いもすごくわかってしまう。
「むずかしい年齢になっちゃったな.....」そう思いながら駅の方へ視線を向ける。
アブラゼミの声と子供の『あちぃ~よぉ......今日......』という声が聞こえて、暑さを加速させた。
コンビニで昼ごはんとお茶を買い、8:18分発の電車に乗る。学校近くの駅から5駅離れているので、約25分電車に揺られないといけない。
通勤の時間帯から40分ほどずらしているので、余裕で席に座ることができる。
スマホを取り出すと
〈 おはおは 〉
〈 今日蔵書点検の日だっけか 図書部員さんは大変ですな~まあ頑張りなされw 〉
と返信が来ている。
〈 大変って思うなら、今すぐ準備して学校に来い 〉
〈 やだよ、蔵書点検とかだるいじゃん 〉
〈 しかも今日は
〈 はいはい リア充乙 〉
なんて冗談を言い合える一番の友達が
多分クラス1いや、学年1イケメンだと思う。(他クラスの男子数人としか話してないからわからないけど)
入学初日とか特にすごくて、クラスの女子ほぼ全員が連絡先を聞きに行っていたと思う。
日に日に連絡先を聞きに来る女子は増え、1週間後には先輩もクラスに来ていた。
だが、学年1の美少女こと
「学年1の美少女には勝てない、この2人が付き合うのは必然」という考えが広まり自然と見守るような雰囲気になっていったとか。
付き合うきっかけは、クラスの男子が 『2組に可愛い子がいる。数年に一度レベルだってよ。しかも彼氏もいないみたいだからお近づきになれないかな』という雑談をしているところを聞き、「同じ境遇の人がいるんだ.....話してみたいな」と思ったのが始まりらしい。
そこから、彼女に接触し、話して、一緒に帰って.....といつの間にか一緒にいる時間が増え、GWにデートをしたときに
付き合ってからは、人目をはばからずイチャイチャしてるので男子からの嫉妬 妬みを含む目線がすごいことになっている。まあ本人は気にしてないみたいだけどね。
電車は進み残り4駅、時間にしてあと20分ぐらいだろう。ポケットからイヤホンを取り出し、Bluetoothでつなげサブスクリプション音楽アプリを立ち上げる。ライブラリにはバンド、邦楽ロックといわれるものを詰め込んだプレイリストが表示されている。なぜバンド系なのかというと
気分で選んだ曲は、夏が曲名に入る恋愛映画とのタイアップした超人気曲。リリースから3年たった今でも、飽きられることなく多くの人に聞かれている。季節にぴったりで爽快感ある曲調、サビが終わった後の儚げな歌詞と曲調。自分のことを認めてくれているような歌詞。
この曲に勇気づけられた人はたくさんいると思う。自分もその1人。
アプリをスワイプしホーム画面に戻る。俺は、鳥が上下逆になったアイコンをタップし投稿をスクロールしていく。スマホには手汗で付いたスクロール跡がついていた。
異性が苦手な2人が出会ったら、キョリ感がバグった。 空羽 碧 @yurare445
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