第3話 禁断の恋の裏

 秋の匂いが漂う中、東京のある高校は今日も騒がしい。


 朝礼が終わると、廊下に出てはお喋りしたり、教室内でお喋りをしたり本を読んだり授業の予習をしている人がいる。


 その代わり、廊下が騒がしい中、川島里美はぼんやりと廊下の窓の外を眺めている。


「里美~~」

「ん? 何?」

「いやぁ、だってぼんやりと外を眺めているからさ、」


 友達の舞はにこやかに話しかけながら里美の肩に手を置いた。


「なんか悩みでもあるのか? 言え」

「無いよ。悩みなんて」

「本当かぁ?」

「本当よ! もぉ! しつこいなぁ」


 じゃれあいながら、廊下を歩いていると、


「こらこら二人共、歩きながらじゃれあうのは危ないぞ!」

「あっ! 正吾先生!」


 目の前には目鏡をかけ、髪をショートヘアのおしゃれ男子にしスーツをまとった格好の水谷正吾がは担当の歴史の教科書を持ちながら二人の前に歩み寄った。


「全く、舞さんは少し落ち着きなさい。元気なのはいいですけど」


 呆れている正吾に、舞は手を挙げながら返事をした。


「はいはーい、分かりました」

「ふぅ、でわ授業がそろそろ始まるから教室に戻りなさい」

「「わかりました」」


 二人は元気よくいうと、正吾はずれた目鏡をかけなおしながら、歩き出した。


「いやぁ、やっぱり正吾先生は真面目だねって、里美顔赤あいよ?熱あるの?」

「えっ!ちょっと熱いだけだよ、大丈夫!」

「ふぅーん、まっいいけど」


 里美は赤らめた頬を手で押さえながら教室まで歩き出した。


 頬を赤らめたのはある秘密があるからだ。


(私と……正吾先生と付き合ってるなんて、言えないわよ)


 里美は今、禁断の恋をしてるのだ。


 十月のはじめに里美は正吾に告白をし、断れるのを覚悟をしていたが正吾は照れ臭そうにその告白を承知してくれたのだ。


 その後、正吾の家に行き始めると、すぐに初夜の迎えたのだ。


(正吾さん、今日も昼食のとに)


 学校が終わると、たまぁに先に帰る振りをして正吾とこっそり一緒に帰っている。正吾と


 友達にも言えない、親にも言えない行為をしているのでそのスリルがたまらないのだ。


 数時間後、午前の授業が終わり昼食が始まった。


 里美はを舞や他の友達に見つからないようにこっそり屋上へ向かった。


 ドキドキしながら、屋上に着くとまだ誰もいない。


(まだ来ていないの……かな?)


 そう思い、きょろきょろ辺り見回すと誰かが里美の顔に手を覆った。


「きゃ!」

「だーれーだっ?」


 悪戯っぽく話す正吾に、里美は思わず笑ってしまった。


「もぉ~、正吾さんやめてくださいよ! びっくりしちゃいましたよ」

「ハハっごめんごめん、さっ、食べよう」


 昼食のときも、時々に正吾と食事をしている。このときはとても幸せな時間だ。


 にこやかに話しながら、正吾は何かに気付いた。


「あっ、里美」

「はい?」

「ご飯粒付いてるぞ」


 そう言い、ご飯粒をつまみ食べた。


 里美は思わずキュンとしてしまった。


 この後は、学校が終るとホテルに向かうのだ。


 里美はこの時間が止まればいいのにと、ずっと思っていた。


 ただし、里美は正吾のことで最近悩んでいることがある。何かを気にしている素振りを見せている。ホテルに向かう途中だってチラチラ周りの様をうかがっているのだ。


 行為を終わった後は、スマホを見ているの。


(まさか浮気だなあんてね……)


 そう疑うこともあったが、疑うことをやめた。


「あっ、そうそう里美」

「ん? 何?」

「実はさ、プレゼントがあるんだよ」

「何ですか?」


 正吾はポケットから何かを取り出した。見てみると小さい袋があった。


「はい!」

「うわぁ、ありがとうございます」


 ワクワクしながら中身を開けてみると、水色のブレスレットだった。


「可愛い、どうしたんですか?」

「実は家族旅行のお土産なんだ」


 頭を掻きむしながら、照れ始めた。


「はぁ~大事にします!」


 興奮をしながらも、里美は手首にブレスレットを付けた。


 太陽に当てながらチカチカ光るブレスレットに、里美は喜びながらまた正吾に笑いかけた。


「あぁ、本当にうれしいです。ありがとうございます」

「あぁ、良かった」


 正吾は笑いながら里美の頭を撫でまわした。


 そうして2人は、気付かれない様に別れた。


 里美は辺りを見回しながら教室に戻ろうとすると、誰かに抱き着かれた。


「きゃ!」


 後ろを見てみると、舞が頬を膨らませながら抱き着きながら文句を言ってきた。


「ちょっと! 里美! またあんた、私を掘ったからしにして、何処に行ってたの?」

「ごめんごめん、あと私この後、用事があるから今日も一緒に帰れないの」


 手を合わせながら謝り、用事のことをいうと舞は文句を言い張った。


「はぁ? 今日も? もぉ最近一緒に帰れなてじゃん!」

「何か奢るから許して!」


 里美がそういうと、舞はニッコリと笑いながら目を輝かせ、再び抱き着いてきた。


「やったー! じゃあ今度奢ってね! もぉそろそろチャイムがなるから明日ね!」


 そう言い、舞は教室まで駆け足をした。


 2時間後、全ての授業が終わり里美はソワソワしながら帰りの準備をし終わり小走りで人気のない待ち合わせ場所に行った。


 数分後、車のエンジン音が聞こえてきた。見てみると、灰色のオデッセイの車があった。


 正吾が窓から顔を出して、手を振った。


「よっ! 早く乗りな」


 里美は返事をし、にこやかに車に乗り込んだ。


 車が動き始めて10分後、建物やホテルがある点々と光っていた場所に近づいてきた。


「なんか……綺麗ですね。」


 里美がそう言うと、正吾はにこやかに話しかけてきた。


「それはそうだよ、夜にはここはキレイな光に染まるのだからな」


 そう言い、さっそく二人は行きつけのラブホに着いた。


 里美は家から持ってきた別の服に着替え、ホテルの中に入った。


 中に入れると、好きなベットルームの数がある。


 正吾は選びながら“どれがいい”と里美に問いかけた。里美はもじもじしながら指をさした。


 2人は鍵を受け取り、書かれた番号の部屋に行った。


 入ると、最初は正吾は先に風呂に入っていた。最後には里美が風呂に入っていった。


 シャワーを浴びている時も里美は心臓がドキドキしていた。


 風呂から上がると、正吾はバスローブを着てながらベットに座りこんでいた。里美の顔を見るなり、立ち上がって里美の腰に手をまわした。


「さぁ、おいで」

「……はい」


 里美は正吾の思うままにベットに倒れこんだ。



 数分後、里美はいつの間にか裸のまま眠ってしまた。行為の最中に気絶をしてしまったのだろう、隣ではいびきを立てている正吾が隣で寝ている。


 けれど、里美は正吾の何かを隠すような振る舞いが気になり、浮気を疑う里美は正吾のスマホについ意識を向けてしまった。


 寝ている隙に顔認証でロックを解除した。


 メッセージの履歴を見てみると、


(ん? これは)


 履の下から3番目には、片手でピースをした二つに結び、目を加工で隠している女のアイコンがあった。名前はペンネームなのかわからない名前のBと書いてあった。


(まさか、何で)


 驚きを隠しながら開いてみると、結構なトーク履歴があった。


 スマホを持っている手が震えていた。その前にも心臓がドクドクと響いていた。


 その後は、正吾が起き上がらない様にスマホを戻し、正吾を起こしてホテルを去った。


 車の中でも、あまり会話を交わさなかった。


 里美が暮らしている一人暮らしのアパートに到着をし、正吾は笑顔で車を走らせて帰っていった。


 そんな里美は、放心状態のまま自分の部屋へと転がり込み、ベットに乗り込んだ。


 白い天井を見ていながらあのことが浮かび上がる。


(どうしよう、気になる)


 枕をギュッと抱きしめながら考えているとある事を思い付いた。


 ベットから飛び起き、自分のパソコンに向かい、闇掲示板を開いた。


 他の友達から聞いたことだ。


 ある所の古びた建物の地下に、闇記者と言う看板が掛けられていて掲示板を開き、自分の電話番号の四桁を入れ、何曜日に会うかと何時に会うかをを入れたら場所が出るのだという。


(あんなメール見たら、誰だって気になるわよ)


 真剣な顔をしながら、会うのに明日の土曜日にし、時間を決めて入力すると、場所が出てきた。


 メモを取り終わりパソコンの電源を落とし、深いため息をついた。


 風呂に入ってからも、メールのことで胸がぞわぞわしていた。


 自分の部屋に着き、ベットに入り布団の中に入りゆっくりと眼を閉じた。


 翌日の朝、ある少し高めの高級ホテルで闇は目を開けた。


(朝……か)


 起き上がると、腰の痛みが急激に感じられ、思わず一声尾上げた。


 ため息が漏れ、背中をさすりながら隣に寝ている男を睨んだ。


 その男はジュヌ、昨日の晩、店で紗季と飲み更けているとホテルに誘われ、そのまま行為を行なった。


 相変わらずぐっすり眠っているジュヌに殺意がわいた。


(たくっ、人の腰を痛くなるまでやりやがって……)


 髪を掻きむしりながらスマホを取り、電源を入れると眼を見開かせた。


(依頼が来てるわ)

「てかっ、11時か」


 ため息をはきながら、時計を見ると、短い針は丁度八時になっていた。ベットから降り、服に着替えた。


 するとジュヌが起き、寝転がりながら闇の着替えている所を見つめていた。


 闇は着替えながらめんどくさそうに話しかけた。


「何? 続きは無しだよ」


 そう問いかけると、ジュヌは『あぁ』と納得したように話し始めた。


「仕事でしょ?」

「正解、ジュヌのせいで今は腰が猛烈に痛いよ」

「ははは、すまん」


 反省の色を見せないジュヌに、苛立ちそうになった。


「あと、ジュヌ。お前はちゃんとシャワー浴びろよ。私は帰った後に浴びる。そうじゃないと仕事に間に合わない」


 忠告をすると、ジュヌは『はいはい』と生意気な声で言い張った。


 闇は一万円札を2枚テーブルの上に置き、ホテルを出た。


 腰に手を当てながら歩いていると、


「おーーーーーす!」

「⁉」


 紗季に思いっきり背中を叩かれ、闇は思わずの衝撃に腰の痛みがますます増し、その場にうずくまってしまった。


 うずくまってしまった闇を見て、紗季は焦った。


「ちょっ! 闇大丈夫?」


 怒りを混じりながら、顔を上げ睨みつけた。


 珍しく紗季は苦笑いをしながら、問いかけた。


「その顔は……想像絶するほどやられた?」

「あぁ、たくっ。腰が痛いっていうのに」


 腰をさすりながら、紗季の肩を掴み立ち上がった。立つとふらついてしまった。


「おぉ! やっぱりすげーやられたんだね」

「うるさい、お前この後予定あるんだろう。行きなよ」

「いやいや、あんた自分の状態を考えなさいよ」


 心配をしている紗季をはらいながら闇は歩き出した。


「別にいいよ、少ししたら治るから。じゃあね」


 腰に手を当てながら手を振り去っていく、背中に紗季は呆れながら見つめていた。


「もぉ! 仕方ない恋人」


 頬を膨らませながら、闇とは反対方向に向かった。



 電車に乗った里美はその場所に着くまで、考え混んで心がキュッと締め付けられ続けた。落ち着くために、外を眺めたが落ち着きが無くならない。

窓を眺め続けていると、いつの間にか付いてしまった。


 急いで降り、パソコンに書いてあった場所に行った。


 歩いて数分後、紙に書いたのを見るとその場所に着いた。


 3階建ての大きめの建物の割に、つたが真ん中の辺りまでつたっていた。


 見上げながらも、里美は建物の中に入っていった。


 中はBARのような光景だった。地面はゴミとかが散らかりながあらも、建物の中は薄暗く夜になると幽霊団地その物だ。


 寒気に耐えながら、奥にある扉を開いた。


 開けてみると最初は階段が下までズラリとあり、最後らへんにはドアがあった。緊張をしながらも、階段を一つ、また一つと降りて行った。


 ドアに到着をすると、軽く叩いた。


『どうぞ』


 中から女の子の声がし、ゆっくりとドアを開いた。


 開けると、奥のもう一つにドアの二個目のソファには女の子がソファに座りながら黒い猫を撫でていた。シャワーの後なのだろうか、濡れた髪に思わず色気が増しいている。


「えっと」

「ご依頼ありがとうございます。まぁどうぞお座りください」

「はい」


 その子の存在に何故か怯えながら、ソファに座りこんだ。


「こんにちは、私は黒川闇と申します。貴方の名前は?」

「わっ、私は川島里美と言います」


 緊張を混ぜながら顔を上げると、濡れたミディムヘアの髪の隙間から不思議な眼が見えた。


 よく見てみると、その子の目は右は青で左は紫になっていた。


「でわ早速、内容は?」


 涼しい顔をしながら言われた途端、里美の心臓が鳴り出した。


 カバンから正吾と一緒に撮った写真をテーブルの上に置いた。


「そう方は、水谷正吾で職業は教師で……私の彼氏です」


 そう言うと、闇は写真を持ちながら興味なしの返事をした。


「ふぅん、あんた何歳? 結構若いそうに見えるけど」

「……18歳です」


 重い口を開きながらも、闇は返事を返さなかった。


「あっあと、このことは内密に……」

「わかっています。依頼人の事情は話さない主義にはしていますので」


 ニッコリ笑う闇に、里美は安心をした。


「さてさて、撮って欲しい内容は何でしょう?」


 里美はじっくり考えた内容を言った。


「えっと、明日の夜に会うらしんですけど、」


 そう言い、カバンから自分のスマホを取り出し、写真で撮ったラインのアイコンを見せた。


 闇はスマホを受け取り、マジマジと見た。


「そのCさんと、明日の夜に渋谷区で駅前に会うそうなんです」


 手を震えさせながらも、話し続けると、闇はにんまりと笑いながらスマホを返した。


「わかりました。本来ここの初期金額はや10万なんです。けれど、貴方様は高校生なので特別に5万として差し上げます。では何日撮ればいいですか?」


 高額な金額に少しドキッとしたが、闇が半額をしてくれたおかげで何とか丁度七万もっていたお陰で少し安心をしながら、里美は財布から5万を取り出した。 


「えっ! あんた何万持って来るの?」

「えっと、一様7万円です」

「ふーん、金額は撮影後に貰いますが、早めに頂戴させてもらいます。では、何日取ればいいですか?」

「えっと、6日で、そのCさんと会う日だけです。悪いことですけど、スマホを時々盗みして正吾さんのこのと会う日にご報告しまっ」


 闇の首から、赤い噛み跡が少し見え、言葉を途絶えてしまった。


 話すのをやめた里美の異変に、闇は声を掛けた。


「どうしましたか?」

「あっ、あの首に噛み跡が見えたので」

「へっ?」


 闇は首を見ると、チっと舌打ちをした。


 ため息混じりに闇は何かをテーブルの上に置いた。


 見てみると、小さい紙とペンが置かれていた。


 闇は微笑みながら『6日後に電話をしますのでそちらに電話番号を書いてくださいね。』言うと、もう一つのドアを開けて消えていった。


 里美はスマホをカバンにしまい、電話番号を書くと、その場を早々と去っていった。

 

 闇は古びた建物の2階の部屋でベットのに寝転んでいた。ベットの周りには今まで撮った人々の顔写真が飾れていた。


 暇を持て余しスマホでネットを見てみると、紗季がが起こした事件のことが書かれてあった。


 ネットには大きく、“不可解な現場!足跡の痕跡がなし!捜査難航するなか、犯人の目星無し!”と書かれてあった。


 その記事見ると、闇は思わず鼻で笑ってしまった。


(こんだけ事件が起きれば、こんなことにはなるか……)


 警察庁では、捜査は先月高校生惨殺事件で捜査を続けていたが、今の所は手を付いていない、むしろ日にちが過ぎていくたびに捜査は難航をしていた。


 同じく、穂香も捜査の一員として頭を悩ましていた。


 お陰でため息がばかりはいてる。


(なんで、犯人の目星が見つからないの?)


 悔しい思いをしながら、ため息を再び付いた。


 その時、相棒の裕也が扉を開けた途端上司の吉田憲一に話しかけた。


「あの高校で目撃情報が出ました」


 目撃と聞くと、捜査一課の一員は素早く裕也に近づいた。


 穂香も、相棒の活躍に関心をしながら近づいてきた。


 憲一は裕也に期待を持ち、輝きの目を見せた。


「どんな奴なんだ」


 忙しく質問をすると、裕也は自信を持ちながら警察手帳を開き、説明をした。


「鈴木七海さんが殺された後、自殺した小川修一さんに会った人物がいたそうです」

「そうか、どんな人物なんだ?」

「その人物を、目撃をした一人の女子生徒に人に聞いて似顔絵を描いてみました」


 そう言い、ポケットから似顔絵を描いたと思われる紙を出し、ホワイトボートに張り付けた。


 見てみると、似顔絵に描いてあった少女の顔だった。その子の顔は、人間性を感じられない表情で、穂香は少し身震いをした。


 憲一はその似顔絵を見て、再び質問をした。


「この子がその修一さんに会っていた人か?」

「はい、目撃者に聞きますと、その子の眼の色が左右違うみたいです」

「目の色が違う?」


 目の色と聞き、憲一は頭を悩ませた。他の刑事達も眼の色と聞くとざわつき始めた。


「右目が青で、左目が紫らしいですが……」

「が? なんだ?」


 声を積らせながらも、裕也ははっきりと言い張った。


「その事件の翌日に、その子に少しに似た雪村幸恵さんと韓国人のミン・ジョンさんがその日に転校をしていたらしいです」

「ほぉーそれで」

「その人物のデータで調べたんですが、そんな名前は入ってはいませんでした」


 裕也は胸を張りながら自身満々の顔を見せながら言うと、憲一は考え込むとすぐさま立ち上がった。


「偽名か、よし! まずはこの女の子を重要参考人として探し出せ!」

「「はい!!」」


 憲一の一声で、捜査一課の人達は声を張り上げ、似顔をプリントしたのを持ちながら、部屋を次々と出て行った。


 穂香はこっそりと、裕也に近づき褒めてあげた。


「あんた、やるじゃん!」


 先輩に褒められ、裕也は赤らめながら自分の頭を撫でた。


「へへ、ありがとうございます!」


 そうして、穂香は胸を張り上げながら裕也と一緒に似顔絵に描かれた女の子を探し始めた。


 里美は、図書室で読む本を探しながら依頼したこで心臓がバクバクうごめいていた。


(本当に大丈夫かな? あの依頼で、)


 暗い顔をしながら、本を探していると誰かに肩を叩かれた。


 後ろを振り向くと、正吾の姿があった。


「よっ! 大丈夫か? 顔が暗いぞ」


 明るい声をしながら目鏡を光らせていた。


 正吾は背伸びをしながら、右の本を取り出した。


「先生も本を?」

「あぁ、読みたい本があったんだ。里美もか?」

「ちょっ! 学校では“さん”づけでお願いします。バレたらどうするんですか」

「あはっ、ごめんごめん、あっ後さ」


 正吾は笑顔のまま、プレゼントの赤い箱を渡してきた。


「何ですか? これ」


 里美は受け取った箱を不思議そうに眺めていた


「実はね、この前花屋さんでお前に似合いそうな花があったんだよ、あっ、俺今日を用事があるからね、じゃあね」


 そう言うと、正吾は里美の頬にキスをし、早々と図書室を出た。


 里美は顔を赤らめながら、プレゼントを隠しながら本を探し始めた。


 暗い中、ランランと光る渋谷区の交差点では人が行ったり来たりを繰り返していた。


 闇は渋谷区の駅前で、正吾を観察していた。


 カメラを構えながら人に怪しまれない様に、スマホをチラチラ見ていた。


 すると、闇に知らないおじさんが呼びかけていた。


 顔から見ると、顔を赤くした酔っ払い人だった。


「ねぇねぇ、お嬢ちゃん一人かい?」


 最悪な人に絡まれながらも、闇は正吾を見ながら相手をしていた。


「何あんた? 私は忙しいの。ほっといてくれる。」


 強気で言っても、おじさんは闇を見ながら鼻息を荒くしながら金を見せてきた。


「家出だろ? だったらおじさんがこのお金上げるからさぁ、一回ぐらい、いいよね?」


 金を出しながら迫ってくるおじさんに、『目当てかよ』と心で毒を付いた。


 その時、正吾の所に来た高校生が笑顔で手を振りながら、正吾の目の前にまで来た。


 闇は急いで、シャッターを切った。


 カメラで何かを撮っている闇の行動に、おじさんはぽかんとしていた。


「何をしてるんだ? カメラなんか撮って?」


 理解ができないおじさんに、闇は口元を上げて答えた。


「ちょっとしたことでやってるの」


 フフッと笑う目の前の子に、おじさんは唖然とするばかりだった。


 すると、おじさんの肩を誰かが叩いた。


 後ろを向くと、2人の警察が険しい顔をしながらおじさんを睨み付けていた。


「えっ? 警察のあんちゃんが何でいるんだ?」


 訳が分からないおじさんに、一人の警察が怒り混じりに答えた。


「何もこうもあるか! ある女性の方が“未成年の女の子が知らないおじさんに性的なことを要求されています”って、連絡があったんだ」

「えっ!」


 おじさんは驚きながらも顔を青白くしていた。


「さぁ来てもらうぞ! あと君もって、待て!」


 闇は警察から逃げるため、その場を早々と去り始めた。


「こらっ! 待ちなさい!」


 もう片方の警察が、猛スピードで追いかけてくる。


 人混みを掛けながらも、闇は警察から隠れられそうな暗闇の角に隠れた。


 警察は闇が隠れたのを知らずに、通り過ぎて行った。


「ふぅ、危ない危ない。捕まってしまったら大変なことになってしまう」


 息を吐いてから出ようとすると、


(おっ! ラッキー)


 横から正吾と高校生の女子が笑顔で正吾の腕を引っ張っていた。


 闇は辺りを見回し、そっとその場から出てきた。


 2人の後を付きながらも、警察の目を気にした。


 数分間歩くこと目的地に着いたように見え、闇はさっと隠れるとシャッターを切った。


(ほっ、1日目クリヤっと、後は警察の目を気にしながら撮らないとな)



 六日後、遂に約束の時間が来てしまい里美は胸をドクドクと鳴り始めた。


 里美は待っていると、電話が鳴り響いた。 


 耳に当てると、闇の声だった。


『準備してきてください』と言い残し電話を切ってしまった。


 里美はすぐさま支度をし、早々と電車に乗り込んだ。


 着くまでも、胸の鼓動がうるさすぎておかしくなりそうだった。


 1時間過ぎ辺りに着き、里美は人混みを掛けながら駅の外に出ると走りながらあの場所に向かった。


 走る体力は自信があり、すぐさま着いた。


 中に入り、乱暴に扉を開けた。


 目の前には、闇はミルクティーを飲みながら待ち伏せていた。


「あら、遅くなるかと思ったけど。」

「そんなのはどうでもいいの! それより、撮れたの?」


 里美は息を整えながらソファに座ると、闇は机の上に何かをばらまいた。


 よく見ると写真だった。


 すぐさま手に撮ると、目を見開いてしまった。


「こっ、これは……」


 手が震える矢先、写真には舞と正吾が笑顔で写っていた。


「えーとですね、この六日間、この二人は同じホテルに向かっていました。まぁ結果的にこの人は黒でしたね」


 闇は状況を伝えていると、里美は憎しみの目に変わっていた。


 写真は、里美に手でくしゃくしゃになっていた。


「さて、これで私に依頼は……」

「死神は何処にいるんですか?」


 憎しみな言葉になりながら、里美は机に身を乗り出し掲示板に書いてあった死神の居場所を問い詰めようとした。


 その言葉を、聞いた闇は不思議そうな顔をしながら、話した。


「あら、これは久しぶりな子ね。この写真を見た人はそうそう、そういうこと言わない子が居るからね。で、この先生を殺すの?」


 写真に再び目をやり、人差し指を正吾に置いた。


「いいえ……この子です」


 里美は隣の舞に、人差し指を置いた。


「えっ? この先生じゃないの?」


 猫を抱き上げながら、不思議そうに話した。


 憎しみが溢れていた里美は、怒りを吹き出した。


「だって……4年前、この女は同じことを一度してるんです」

「え?」


 涙が止まらない里美は、四年前をのことを話し始めた。


 それは中学生の頃に、里美は大好きだった先輩に告白をし、付き合ったのだが数か月後に好きな人が出来とと言い、別れてしまったのだ。


 訳がわからないまま、里美は落ち込んで、学校に向かおうとすると、目の前に舞とその先輩が仲良く腕を組んで歩いていた。


 里美は学校の屋上に舞を呼び出し、問い詰めた。


 舞は反省の色を浮かべ、手を合わせ舌を出しながら謝ってきた。


 必死に謝る舞に、里美は思わず許してしまった。


「二度もやるなんて、酷すぎる。こんな最低女に正吾さんを渡さない! ねぇ、闇さん、一体死神は何処にいるんですか、教えてください!」


 必死に問い詰める里美に、闇は息をはき、あの店の書かれてある地図と名前の紙をテーブルの上に置いた。


「これは」


 紙を見ている里美に、闇はミルクティーを口を近づけながら話した。


「そこに居るよ死神が。裏道に行けばいいよ。その後はその地図どうりに行けばいい。あとで私が連絡をしといてあげます。あと、死神に会ったらその紙を死神に上げてくださいね」


 静かにいう闇の目の色が混じったように感じたが、すぐさま振り払い、その場を早々と出るように去った。


 クロと闇は、薄暗く部屋の中で里美が出るのを見届けると、闇はアメを舐めだしクロを抱き抱えた。


「はぁ、やっぱ他のお姉さんは怖いね」


 そう問いかけると、クロはニャーと鳴いた。


(さて、これからどうなっていくのかな?)


 鼻歌を混じりに、紗季に連絡をした。


 その頃里美は、裏道に入り、貰った紙を見ながら歩いて行くと、


(あっ、ここだ!)


 目の前には、五階建てのビルがあり、入り口の右端にはDREAM(夢)と書かれてあった。


 名前を確認をしてから、中に早々と入っていった。


 中は相当うるさく、大音量の音楽、ソファには服を乱れて、絡み合っている男女に男同士や女同士がいた。


(こんな騒がしい場所にいるのかしら?)


 疑問に満ちていると、誰かに肩を叩かれた。


 振り向くと、韓国人の男性が酒を手にして、話しかけてきた。


「君、初めてここに入店してきた人。誰かを待っているの?」


 いかにも、ヤンキー差が増していて恐怖を感じたが、即座に説明をした。


「いえ、あの、ここに死神とあだ名を付けられている方を知っていますか?」


 里美は闇に貰った紙を見せると、その韓国人の男はニヤリと口元を上げた。


「あぁ、君依頼人だな。紗季はこの上の四階に居るよ」

「紗季?」


 紗季という名前に悩んでいると、その男は説明をしてくれた。


「紗季っていうのは、俺らの彼女の名前なんだ。その死神は紗季のあだ名なんだ。あと、この階段で行けばいいよ。ただし今、行く途中に絡んでいる人達がいるから気を付けて」


 酒を片手に階段を指した。


 里美は男にお礼を言い、駆け足で階段を上った。あの男の人が行った通り、階段を上る間に、さっきの光景とは違うところがあった。


 目を塞ぎ、階段を上り続け四階に着いた。


 ドアの目の前には特別室と書かれてある部屋に入った。


「お邪魔します」


 入ると、目の前には豪華なソファが三つにと豪華なシャンデリが飾られていた。


(わぁ、凄い部屋だな)


 あまりの輝き差に里美は眺めていると、再び誰かに肩を叩かれた。


 振り向くと、女の子がいた。


 見上げて見る目は、闇と同じ色だが色が左右逆だった。


「あんたなの? 依頼人って?」


 依頼人と言う言葉に、この子が死神なのだと確信をした。


「はい。私が依頼人です!」


 里美はハッキリ言い、闇に渡された紙を先に渡した。


 紗季は里美から受け取った紙を見るとソファに座るように進めた。


 すぐさま座ると、紗季は目の前のソファに座りこみ足を組んだ。


「初めまして、私は雪村紗季です」


 さっきとは違う口調で話しかけた紗季に里美は心の中が思わずホッとした。


「私は三条里美です。」

「では、依頼の内容は?」


 本題に入った紗季に里美は即座に舞と撮った写真を見せた。


「この子です! この子を殺してください!」


 大声で言いながら写真を突きつけると、紗季はゆっくりと笑みを浮かべた。


「わかりました。でわ後ほど殺してからご連絡を受けたまります。」


 里美は電話番号を置くと、深々とお辞儀をした。


「明日でもいいから今すぐにでも殺してください!」

「分かりましたから顔を上げて帰っていただいて結構です。じゃあ、今日の夜殺してあげましょう、闇から聞いたら今日もあの子は他の他の男とホテルに行くらしいです。」

「何ですって!」


 ホテルと聞くと、里美は思わず声を上げてしまった。


「まぁ安心してください、それも今日で終わりです」


 笑顔のまま話すと、里美も笑顔を見せながら頭を下げた。


「本当! あぁ、ありがとうございます」


 里美は顔を輝かせた。


 やっと、あの魔性の女を消せる気持ちを嬉しく思いながら里美は先にお礼を言い残し、店を去って行った。


 紗季は、ナイフを眺めながらどう殺すか迷った。炎の絵に目をやると思わぬ思い付きが出た。


 里美は険しい顔で街を歩いていると、お腹の激痛が走った。


 お腹を押さえながら吐き気がこみ上げてくる。


(まさか………)


 胸の中に何かがもやもやし始めた。


 ドキドキと胸をならせながも薬局に向かい何を買い出した。


 数時間が立ち、渋谷区では光が輝き続ける。


 その頃舞は、あるホテルから出ると四十代の男からお金を受け取った。


「ありがとう」

「いえいえ、また機会があったらいい?」

「はい、その時もまたたっぷりとサービスしてあげます♡」


 男に笑顔を見せながら別れ、お金を財布の中に入れるとスマホの着信音が聞こえた。


 見てみると里美だ。


「ん? 何々、『今から会えない?』 場所はこの写真を見てから来てねぇ? 今、夜なのに!」


 舞は断ろうとしたが、仕方なく地図に書かれている場所に向かった。


 場所は近くの屋上らしい。送られてきた写真にはしっかりと裏口からの入るルートまで書かれてあり、少し疑うとこもあったが気にせずに、屋上に向かった。


 入ると、まだ誰も来てはいない。


「えぇ、里美から誘ったのに何なの?」


 怒りながら後ろを向くと、いつの間にか女の子が静かに立っていた。光が当たっていて余計に怖くなってきた。


「だっ、誰ですか?」


 怯えながらも、問いかけると薄暗いが顔が見えてきた。


 その子の目はの色は左右の色が違っていた。


「こんにちは、私雪村紗季と申します」


 いきなりの自己紹介に肩を震わせたが、すぐに姿勢を整えた。


「そうなの、あのここに私と同じくらいの子見かけなかった? 同じ制服着てたらなんだけど……」


 優しく問いかけると、紗季はゆっくりとスマホを見せ、微笑んで謝り出した。


「ごめんなさい、実はあのメールは私なんです」

「えっ! じゃあ今のは偽メールなの! 君、どうやって私の番号を知ったの? 

答えなさい」


 舞は紗季にどうやって番号を知ったかを問いただすと、その子は笑い出した。


「フフフ、ごめんなさいね。けれど貴方は今夜死にます」

「えっ」


 訳が分からないままでいると、紗季は何かを手に持っている。薄暗くてあまり見えないがその子は赤い何かを持っていた。


「何よ……それ」

「あぁ、これですか?」


 ニコニコ笑うその子は暗闇で物凄く気味が悪く、両目色が違う目に頭を掻き混ざれているようで吐き気がこみ上げてくる。


 紗季は持っている赤い物の蓋を開けた。


 持ち上げると、舞に笑顔のまま掛けてきた。


「えいっ!」

「きゃ!」


 思わず目をつぶった矢先、とても嫌な匂いが鼻を突き、嫌な臭いに包まれた。


「何よこれ……灯油」


 よく見ると、ねばねばした茶色の液体が手にこびり付いている。


「全く、訳は分からないけど、このメールをもらったのはね、あんたと同じ子が殺してくれって頼まれたんだよね~、えーと里美っていうこかな」

「は? なんで」


 舞は紗季の言葉に訳がわからないまま、頭を混乱していると紗季はマッチを一本火をつけ、残りの棒に付けると再び笑顔のまま火にまみれたマッチの箱ごと投げた。


「バイバイ」


 箱が地面に着くと、舞に掛かっている灯油が一気に燃え尽き始め、舞の体は一気に炎の中に包まれた。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、熱い! 熱いいぃぃぃぃぃぃ、痛い痛いいぃ」


 痛みもがき苦しみながら叫んでいる舞に、紗季は買っておいたナイフを投げた。


 炎に焼かれる音に紛れながら、ナイフが舞の心臓に突き刺さる音が聞こえてきた。


 舞は焼かれながらその場に倒れこんでしまった。


 炎の光が輝く中、紗季は満面の笑みで写真を撮った。


「はぁ、やっぱりこの殺し方も悪くない、ナイフもいいけど炎の方がさぞかし綺麗だ」


 しばらく見とれていたが、紗季はいそいそとその場を走り去った。



 その頃、里美はさっき買った妊娠検査薬を眺めていた。


(どうしよう……妊娠してる)


 今まで、正吾との何か月かの行為のせいで、里美の中には新しい命がさぞかれた。


 呆然と眺めていると、電話が鳴り出した。


 我を返りスマホを見てみると、紗季からだった。


 震える手で電話を出た。


「も……し……もし」

『あぁ、里美さん、立った今舞さんを殺しました』

「えっ! 本当ですか?」


 驚愕を隠しきれずも、紗季は笑い混じりに話した。


『えぇ、何なら写真でも送りましょうか?』


 写真という言葉に、里美は即座に断った。


「いえ、結構です。ありがとうございました」


 険しい言い方で電話を切った里美の行動に、紗季は頬を膨らませた。


「何なのよ、せっかく殺してあげたのに」


 けれど、紗季は人を殺した快楽のお陰で機嫌を直した。


 里美は電話を切った後、ゆっくりとベットに横たわり、お腹をさすった。


(どうしよう……後戻りできない)


 舞という、悪女を消したとしても人を殺したという罪悪感は消えない、いや、一生このまま罪を背負いながら生きていくのだから。



 翌朝、里美は早く起き、悩みを抱えたまま起き、朝食を食べたが食欲がわかず、残したまま学校に行った。


「はぁ」


 朝からのため息に体力が上がらない。


 今日は朝練が無く、自分と数人しかいない先生の学校に着き、そのまま教室に向かうと黒板を書く音が響てきた。


 入ると、そこには闇が黒板に落書きをしていた。


「あんた、何でここに」


 驚いて声を出すと、闇は里美の存在に気付き、ニッコリしながら挨拶をした。


「あら、里美さん、おはようございます。しかし早いですね」

「いやいや、そんなことより何であんたが私の学校知ってるの! 私一切教えなかったのに、なんで」


 驚きを隠せない里美を無視し、闇は黒板を消しながら話しかけた。


「そういえば、舞さん死にましたね」


 平然と話す闇に、里美は胸を痛んだが後悔はしていなかった。


「えぇ、お陰ですっきりはしたけど、それが何か?」


 おかしげに答えると、黒板に書かれているのを消している闇の手が止まった。


 黒板けしを置くと、闇は里美の方に顔を向けたが、闇の顔はいつの間にか怖い真顔になった。


 闇の表情に恐怖を感じた。


「それはそうですよねぇ、だって自分の好きな人を取り返したのだから、ですが」


 指で唇をなぞり、不気味な笑みをした。


 その不気味さに負けないと気持ちで、全体を踏ん張った。


「何よ、“ですが”って? 他に何の意味があるの?」


 苛立ちを見せながら話すと、闇は教卓の下から小さく茶色い紙袋を出した。


「何よそれ?」


 不思議そうにする里美に、闇は口元を上げた。


「これです」


    バサッ


 紙袋を勢いに任せて投げると、紙袋から何かが宙に舞った。


 中身は写真だった。


(なんで写真が……)


 床に散らばっている写真一枚を取り、見てみると、里美は唖然とした。


(な……に……こ……れ)


 その写真には、正吾と別の女性が仲良く歩いている姿があった。


 里美は目を見開いて、他の写真を見てみるとそれぞれ別ばかりの女性だった。


 よく見ると、写っている女性は高校生か中学生だけだった。


 震えている里美に、闇は説明をした


「ここ6日間、日に日に別の女性とホテルに行っていたんですよ。いやぁクズな男ですねぇ」


 心の底から喜んでいる様子の闇に、里美は震える身体で訊いた。


「なんで? 正吾を撮ってってお願いしたじゃない? あの……掲示板には……依頼されたことを撮ってくれるって」


 涙声で話す里美に、闇は高笑いをした。


「ハハハハハッ、何言っているんですか? 内容を最後まで言わないとだめって、書いてありませんでした? 掲示板に。私はちゃんとBさんと会うところを写真に撮ったじゃないですか」


 他人事に言う闇に、里美は涙を浮かべながら鋭い目つきをし、胸倉を掴んだ。


「あんた! 何言ってんのよ! 私は6日間Bと会う時だけ撮ってって言ったでしょ! おかしいじゃない!」


 怒号をぶつけられても平然として、闇は掴まれている手を乱暴に振り払り、嫌みさ

ながらに口を開いた。


「はぁ? 大体さ、勝手に被害妄想して、挙句に友人を殺したのはあんたでしょ? 現に死んだ人は戻ってこないんだよ? 私は頼まれたことをやっただけ。原因は全部あんたにある」


 闇の言葉に、里美は正吾に抱かれた感触を思い出し、吐き気が込み上げ、里美は思わず手で口を押えてその場にうずくまった。


「んっ!」


 吐き気で苦しんでいる里美に闇は見下ろしながらにやけだした。


「おや? まさかの……妊娠ですか?」


 またもや見破られてしまい、里美は目の前にいる悪魔に何故か頷いてしまった。


「やっぱり」闇はポケットから何かを取り出して、見せつけた。

「それ……」


 闇の手には、里美が昨日使った妊娠検査薬を持っていた。


「何で持ってるの?」

「実は昨日の夜、あなたが寝ている間に私の恋人が里美さんの家に侵入して部屋を浅っていたらこんな物が出てきたんですもの」


 不気味な笑い声に混ざり、その妊娠検査薬を手で投げていた。


 息が荒い里美に、闇は何かを思い出したかの様に手を叩いた。


「そうそう、里美さんに贈り物があるんですよ」


 再び教卓の後ろに行き、うずくまり、何かを取り出した。


 見てみると、白い布に包まれた九十九本の赤いバラを抱えていた。


「はい! 妊娠祝いの花束です」


 あまりの美しい赤いバラには、血の様に見えて仕方がない、頭の中がかき混ざれているかのような感触に、肌のぞわぞわが止まらない。


「まぁ、産むか産まないかはあんたのご自由にお任せします。私は単に依頼人に言われたことしか撮らない闇記者ですもの」


 闇は里美の前に膝まつき、放心状態になりかけている里美にカメラを向けシャッターを切った。


「あぁ、あとですね。あなたが殺した舞さん、中学校からずっと売春婦をしていたことがわかりました」

「えっ、嘘でしょ?」


 友だちの意外な真実に、里美は動揺を隠せなかった。


「私気になったことはなんでも調べてしまうタイプなので、私の仲間を使って舞さんに話を聞いたんですよ。なーんでも家計が厳しかったのでしょうね、家計のため身体を売ったのですから、きっと同じことで、里美さんから遠ざけるために何とかしたのでしょう」


 ため息混じりに答える闇の顔は、まるで汚いものを見るかのように見下ろしていた。


「どっ、どういうこと? 言っている意味がわからない」


 狼狙する里美に闇が言葉を続けた。


「じつは、この舞さんは以前、私に依頼を持ち込んだんですよ。あなたのためにね」


 闇はまたもや里美に向かって写真をバラまいた。そこには前付き合っていた先輩がそれぞれ違う女の子と腕を組んだりキスを交わしている姿が写っていた。


 里美は頭が混乱し過ぎて、どうにもならなかった。ただ一点に写真を見つめていると、闇は笑顔で語り出した。


「貴方との前に先輩のことを撮って欲しいと頼まれたものですから撮ったら、同じことで浮気を何回も繰り返すクズ男でした。その真実を知った後ですね、何でもするから代わりに別れてと頼んだらしいですよ。まぁ結果オーライということです、またのご利用をお待ちしています。さようなら」


 闇はそのまま里美に背を向け、教室内を出た。


 赤いバラの花束に、バラまかれている写真の教室内で一人残された里美は、今までの正吾のや舞のことが頭から離れなかった。


 自分だけ愛されていたことが裏では嘘の偽りで私はただの玩具で、嘘で愛され、嘘で抱かれて愛言葉も嘘だった。


 そして、友人の舞は私のためにきっと遠ざけた。奪ったんじゃなくて助ける為に自分の体で使ったに違いない。


 自分はただの臆病でしか無かなく、ただ被害妄想をしていただけなのだ。


「あっ、あぁ、あぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 里美は教室内で後悔の叫び声をあげた。声が枯れるまでも叫びながら、椅子や机を蹴り飛ばした。


 何もかも自分のせいで人生を壊した。いや、舞の人生も壊した。


 落ち着くと、里美は写真に目を向けてやり、何かを思い付きながら写真を整え、バラの花、ノートとペンケースを持って屋上へと向かった。


 その頃、正吾は車の中で鼻歌混じりに次はどの高校生や中学生しにしようかとカーナビに家出少女のサイトを開いて考えていた。


(里美はもぉ捨てよう、顔はいいが勘違い女みたいで気味が悪い)


 心の中で毒づいて、車で学校に向かった。


 いつものように付き、学校の中に入り、車を止めて学校内に入ろうとすると、外が騒がしい。


 見ると、大勢の生徒が外で騒いでいる。


「どうした?」


 一人の生徒に問いかけると、その子は慌てて説明をした。


「あっ、正吾先生! 実は里美が……」


 そう言いながら、生徒は屋上を指した。


 目線の先には、屋上で里美が虚ろな、光がない目をして立っていた。


 遠いのに、わかる。今までの里美とは違い生気がない姿をしていた。


 正吾は、里美に屋上から安全な場所に行くように指示をした。


「そこから離れなさい! 危ないだろ!」


 指示をすると、里美はいきなり笑い出した。それも、不気味な笑い声として聞かれなく、生徒のみんなは、里美の異常な笑いに怖がった。


「キャハハハハハハ! 何が離れろよ! 離れてやるものですか! それにね、今から皆にある事を伝える為に立っているのよ!」


 口調がいつもの里美ではなく、何かが憑りついてるみたいだった。


 すると、里美は叫びながら何かを投げた。


「これよ!」


 見ると、紙きれのものが何枚か舞っていた。手が届く所まで舞うと、正吾は手に取って見ると背筋を凍らせた。


 それは、正吾と今までホテルに向かっている高校生と中学生の姿の写真だった。


 わなわなと震えている矢先に、生徒達は写真を見るとざわつきながら正吾に目を向けた。


『えっ、これって正吾先生?』

『そうだよ、それによく見るとこの子、近くの学校の子じゃない? それも少しだけ有名な』

『マジかよ』

『ロリコンじゃん』

『てか未成年どんだけホテルに連れ込んでいるんだよ』

『最低……』


 白い目で見てくる矢先、里美は今度はバラバラに散らばせたバラを投げた。


 そして、小さい紙が混じり、舞ってきた。


 すぐさま一人の生徒が取り、見てみると声を上げた。


「えっ! 里美のやつ、妊娠してるの! しかも正吾先生の!」

「「‼ 」」


 その一言で、生徒達は下に落ちている紙を次々と拾い始めた。


 紙には付き合っていることや、何回も行為をしたことや色んな事が一枚ずつに書かれていた。


 正吾はずっと震わせているしかなかった。


 紙を見終わると、ひとりの女の子の生徒が泣き始め、打ち明けてくれた。


「わっ、私、ずっと、ヒック、正吾先生にホテルに行こうと誘われていました」

「「えっ!」」

「なっ! でたらめいうな! これは嘘だ! 信じてくれ!」


 必死に否定をしても、皆は正吾のことを信じてはいなかった。


「嘘つけよ! このロリコン教師!」と男子

「生徒に手を出すなんて最低なクズ先生、」と女子


 それぞれの生徒の罵倒を浴びせ、正吾はその場に崩れ落ちてしまった。


 屋上の上から眺めている里美は、ニッコリと生気がない状態で眺めていた。


(これから一緒に罪を認めながらこの子を育てましょうね、正吾さん♡)


 心の中で言いながら、お腹を優しくさすった。


 その頃、闇は学校から見える建物の屋上から双目鏡で眺めていた。


「落ちちゃったか、闇の中にね」


 里美の問いかけるように言い、フェンスに背もたれをかけ、カバンの中から何かを取り出した。


 それは、里美の部屋にあったプレゼントの小さい箱だった。


 部屋に侵入したのは紗季だった。何かないかと思い、侵入をするとこのプレゼントがあったのだという。


(これはなんだろうな)


 気になりながら紐をを取り、布を取り外してみると花だった。


 細かく少し青が混じっている紫の花びらと濃い緑色の葉は小さいのが赤いリボンに結ばれ、四輪あった。


「これはリンドウか」


 見つめながら、闇は「あぁ」と確信をした。その後に、里美の顔を撮った写真を見た。


 里美の辺りには、溶けている間に目玉だらけの奴に絡まられている姿だった。


「……今回は珍しい霊だな」


 カメラをカバンの中にしまい、花を結んでいるリボンを取り、一輪だけ手に取り、口元に近づけた。


(花言葉は………苦しんでいるときの里美(貴方)が好き)


 花言葉を心の中で口にし、花を人差し指と親指でつまみ、口の中に入れた。


(里美に向かってのプレゼントか、里美さんに向かってはいいことだ。あの花束だって、あの本数で、永遠の愛。まぁ楽しんでください。これからの人生をね)


 噛んでいる時に空を見上げた。


 口の中には苦みが広がり、ため息が漏れた。


 飲み込むと、何かが足に触った。


 下を見てみると、クロがつぶらな瞳で見上げていた。


「ありゃ、クロ、何でここにいんだ?」

「そやぁ私があんたの居場所知っているのだからさ」


 不思議そうにしている間に扉の向こうから、聞き覚えがある声が聞こえてきた。


「君でしたか、紗季」


 ニッコリ笑う紗季は、走って、闇に近づいた。


「どうだったて、何で花なんか持ってるの?」


 不思議そうに見つめる紗季に闇は花を紗季に向けた。


「食う?」

「いや、食べないよ。あんたのお薬でしょ。あれの」

「まぁな、あんたこそどうだった。今日の殺しは?」


 再び花を口の中に入れて質問をすると、紗季は満面の笑みを見せた。


「そやぁ最高だったよ! 刃物以外も悪くはないね! 炎はまるで恋心を燃やす感じがさぞかしいい! あぁ、もっと燃やしたい」


 両手を頬に置き、輝かせている紗季に、闇は紗季の服を引っ張りいきなりキスをし、食べかけの花を口の中に押し込んだ。


 口を離すと、口の中から苦みが広がった。


 紗季は苦みに耐え、飲み込んでしまった。


「はぁはぁ、もぉ! 何で残りを食わせるの! 苦過ぎるよ~」


 顔を歪めて、口を押さえる紗季に闇は冷たく言い放った。


「この前の腰を叩いたお返し、さてと」


 涼んだ顔をしながら闇はポケットからライターを取り出した。


「ん? なんでライターなんか取り出しているの? 何か燃やすき?」

「うん」


 元気が無い返事をして、プレゼントを包む布とリボンにライターを付けた。


「ん? それさ、あの里美さんの部屋にあった奴じゃん! 何で燃やすの?」

「変な物が目の前にあると、燃やす派なんだ。それから」


 布とリボンが燃え尽きると、ポケットに手を入れ、妊娠検査薬を取り出した。


「あっ、それどうする?」


 紗季が質問をしている間に、闇は構わず地面に投げつけ踏みつぶした。


「うわっ、すげー派手に壊れたね」

「そうだな、それより帰るか。もぉ用事は終わったしね」

「そうだね、あっ! この後さ闇の家に行こう! それからいっぱいイチャイチャしよ」


 笑顔で腕を絡む紗季に、闇はニコリと微笑んだ。


「あぁ、そうしよう」


 二人と一匹の猫は、笑顔で屋上を下りた。


 恋というのは、ときには禁断や残酷なことがある。


 しかし、その裏にはもっと残酷な恋愛がある。知らない人がまさかの血の繋がった兄弟で結ばれてはいけないことがある、そして、身体からの恋愛は単なる肉体関係に近いだろ。


 恋愛とは難しい所もあり、怖い所もあるから十分に気よ付けてなければならない。

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