第12話

 最終的に俺たちが出した結論は、俺たち四人が交代で放課後の学校に行き唯の妹の様子を見るということだった。


 俺、大和、唯、優奈。四人が交代で学校前に立つ。高校が終わるのが15時過ぎたから、走って行かなければならない。ただ、唯の妹は陸上部だったため、クラブ活動のある日は余裕があった。


「進、なかなか来ないよねえ」

「なんかのブラフなんだろうか」


 俺と唯は妹の様子を見ながら、会話を楽しんでいた。四人交代のはずが俺たちの時だけは結局一緒に行ってしまうため、実は2連続になっていた。


「お弁当作ってきたんだ、食べるかな」

 唯はシートを敷いてお弁当を並べ出した。玉子焼き、タコさんウインナー、唐揚げ。運動会に定番のメニューがそこに並べられた。


「ありがとう食べるよ」

 シートにふたりで座って、唯の弁当を食べる。美味しいなあ。


「あーん」

 唯が自分の箸でご飯を摘んで俺に持ってきた。俺も口を開けて食べた。どうせ誰も見ていないんだから良いだろう。


「裕二、ほら弁当ついてる。取ってあげるね」

 唯は取ったお米を自分の口に入れて食べた。嬉しそうに俺を眺めてくる。俺は照れくさくなって視線を逸らした。


「おいしい?」

「うん、最高に……」


 視線の先の妹がこっちに向かって走ってくるのが見えた。


「どうした?」


「お姉ちゃん、なんでここでお弁当イベントやってんの」


「いや、お腹空くかなぁって思って、ね」

 

「てか、ここでやることじゃねえだろ」

 

 妹は唯を睨みつけた。明らかに唯の方が妹に見えた。


 隣の唯はおどおどしながら、俺をみた。助けを求めてるいるのかな。仕方がないので、ここはしっかりと対応して大人というのを見せないとな。


「妹よ。お前、嫉妬してんのか」


「はあ、あんたバカか。死ねよ」


「ちゃんと日本語を喋れよ」


「嫉妬なんかしてないって、お前の方こそ、姉さんに何させてるの」


「ちょっとー、わたしはしたいからやってるだけだからねえ」


 唯は勇気を絞って妹を見た。


「どうなっても仕方ないから」


 物騒な一言を呟いて、トラックに戻っていった。 


「どうなるの?」

「どうもならない」

「なっても良いよ」

「良くない」

「今日あの続きしても良いよ」

「しないから」

「なんでー、裕二わたしの裸見たよね、しかも私に命令して」


 なんかエ○チな表現で唯が俺に言ってくる。俺を誘いたいのだろうか。今、誘われたら守れないだろ。唯よ……。


 心の中で呟きながら口に出しては一言言った。


「まあ、今度な……、今度」

「今度っていつよ!」

「だから、今度」

「もう、知らないからね。進くんに乗り換えても」

「唯、やめてくれ、それだけは」

「じゃあ、よろしくお願いします」

「わかった、善処します」

 完全に尻に敷かれているように感じるのは気のせいだろうか。


 気分転換に、俺は妹の方に目を向けた。

 同じ陸上部員に揶揄われているのが容易に理解できた。まあ、仕方がないだろう。これも社会勉強だな。


 優奈も分かってこの順番を決めたため、こうなることは分かっていたのだろう。  


 実際問題あまり心配がいらないのかも知れない。


 陸上部で走り込んでいるのであれば、少なくとも唯のように逃げれらないと言うことはないだろう。


 放課後の校庭には、クラブ活動をする何組かのグループの姿があった。周りを見渡したが、進の姿はない。


 妹の姿を見ながら、俺たちは時間を潰していた。のんびりとした時間がゆったりと流れる。


 突然、スマホの着信音が鳴った。大和だった。どうした、と慌ててスマホに出た。通話内容に耳を疑った。


「進が優奈を連れ去った。助けないと」


 何が起こっているのか、俺には訳がわからなかった。


「早く、行こう」

 焦った表情で唯が俺に視線を向ける。今はここにいるより、優奈のところに急がないと。


 俺たちは走って学校を出た。

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