11話 都筑と亀田

「はぁ! どうしてこうも最近の若い連中は生意気なのかね?」

 苛立ちを全面に、白髪が現れはじめた短髪の頭をグシャグシャにしながら言う中年男性は、足早に喫煙所にやってきてタバコに火を付けた。

「仕方ないんじゃないっすか。くたびれたオッサンが怖い顔で聞き込みしてるんっすから、何こいつ? って感じっすよ」

 一緒に喫煙所までやってきたものの、中に入ることはせず、扉の外で待機する若い男が言えば、中でドン! というどこかを殴ったような音がする。

 タバコを一気に吸い上げて、大きく開いた口から大量の煙を吐き出しているのは元刑事の現探偵的家業を行っている都筑蔵之介つづきくらのすけ

 そして、喫煙所から漏れ出す煙を吸い込まないようにとハンカチで鼻と口を押さえているの青年は、助手の亀田玲央かめだれお

「俺だってなぁ、聞きたくて聞いてるわけじゃないんだよ」

「仕事っすもんね。しかも古い友人伝いだから断れなかったっていう仕事の」

「クッ、あんな奴を友人なんて呼びたくもない」

「なんすか? 同期なのに大出世されて苛立ち満載っすか?」

「あいつは組織に媚を売るのが上手かっただけだ! 検挙数なら俺のほうが多い」

「はぁ、組織なんてものは組織なんすから、ちゃんと媚びるところは媚びないと。都筑つづきさんみたいに好き勝手するやつなんて組織の中では面倒極まりない存在っしょ」

「だから辞めてやっただろうが!」

「……で、結果、半分脅されるように仕事を回してもらっているわけすか」

「お前は、二言多い!」

 タバコの火を消し、怒鳴りながら喫煙所から出てきた都筑つづきはポケットから一枚の写真を取り出す。

 そこにはカメラに向かってポーズを取り、満面の笑顔を見せる女性の姿があった。

「しかし、こんなに聞き込んで全くの収穫なしとはな」

「まぁ、どこにでも居るような感じの子で特徴なんて無いっすからね、余程の知り合いじゃない限り見かけても気にしないっしょ」

「それはそうだが、失踪当時の服装があの有名な金持ち学校の制服だぞ。顔はともかく制服は目立つはずだ。現にここまではちゃんと足取りが追えただろ。いきなりピッタリなくなるなんておかしいじゃないか」

「言われてみればそうっすね。ホントぱったりなくなりましたもんね」

「ココに来たことは間違いないし、ココまでの目撃情報はちゃんとある。だが、ココから先が全くないというのはおかしい」

「考えられるとすれば、着替えたか、連れ去られたか」

「まぁそうだな」

「これからどうするんすか?」

「とりあえず、学校で聞き込みをした時に聞いたクラブに行ってみよう。そのあともう一度学校に戻る」

「はぁ、でもクラブなんかに行くような子には見えないっすけどね。どっちかって言うと図書館とか行ってそうな優等生的なイメージなんすけど」

 都筑つづきの持っている写真を覗き込みながら亀田かめだが言えば、都筑つづきが鼻息を一つ。

「そういうイメージを持ってもらうために作り上げている、って可能性もあるんだよ」

 都筑つづきの言葉になるほどと手を打った亀田かめだは、足早に行く都筑つづきを小走りで追いかけた。

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