4話 多田義史<2>
顎に手をあて、どんな相談をされるんだと考え込んでいる
「しかし、
「コレが一番エエ服やけど? 久しぶりの都会やからな、結構気合い入れてきたで」
得意げな
「まさかのそれが一張羅とは」
よれよれの着古した感満載のTシャツに、それは絶対ダメージ加工ではない! と言い切れるGジャン、確実に何処かのバイトの際に貰ってきただろうというポケットがたくさんついた作業着的なパンツ。
合せ方もちぐはぐな上に、一体何処が気合い入れたのか全くわからない。
挙げ句に、尻まで伸びた長髪を一つに結いて、ぐちゃぐちゃと丸め無理やり野球帽の中に押し込められている。
「一体それの何処に気合い入れたんや……」
「全部、俺が持っとる中で一番新しい外出着や! 流石に出かけるんにいつも来てる普段着のつなぎを着るわけにはいかんやろ」
「……いや、絶対そっちのほうが良かったんちゃうやろか。ちぐはぐ感がハンパないで、それは」
「そうか? 結構エエと思ったんやけどなぁ」
「お前は昔からそういうの興味無さすぎやったからなぁ。そろそろちゃんとせんと嫁さんも捕まらへんで?」
「嫁ねぇ。今は必要あらへんからいらんな」
「まぁ、
「ストップや。お前の小言は長いねん。それに呼び出した理由を教えてもらわんと」
「おぉ、そうやったな。とりあえず、うちに来てくれるか? あんまり外では出来へん相談やし、つーちゃんも関係しとるから」
つーちゃんとは、
「
「おう、すこぶる元気や」
そう言って
駅前からしばらく、商店街を抜けた路地裏にある小さめの借家が
本当は庭付きでもう少し大きめのところを借りたかったらしいが、二人の勤め先から遠くなってしまうのと、家賃の関係上、ここに決めたのだという。
「ただいま!
何を食べればそんな大きな声が出るのかというくらいに、よく通る大声で
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