第6話

迷宮の入口は地下2階くらい階段を下がった所にあった。


これからどんな事が俺達に起こるのだろうか?

期待よりも不安で押しつぶされそうになるがミーシャンの手前そんな事は言えない。

遺跡のような迷宮の入口を恐る恐る入って行く。


中はいくつもの部屋と通路になっている。

迷わないで効率よく迷宮内を進むために、俺は迷宮婚活のアンチョコのマッブを開いた。

マッブ上に俺達の現在位置と部屋の造りが浮かび上がり俺達はそれに導かれる様に進んでいく。


迷宮の中は真っ暗では無いが薄暗く、目が慣れるまで周囲に気をつけながら進んでいった。

迷宮内では俺が前衛で障害を払い、ミーシャンがマッブを見ながら案内や指示を出す役割りになった。


別に予め決めておいた訳ではないんだけど・・・

ミーシャンはって顔して俺を見る。


1階層はまだ大した罠は仕掛けられていないらしく、自然の鍾乳洞みたいな場所に分かりやすく宝箱が置かれていたりした。

見た目は宝箱でも宝箱に似せたミミックという罠の場合があるので、慎重にミミックメーターで確認をしてからでないと開ける事は出来ない。


最初の宝箱は95%ミミックという判定だった。

どんな罠か分からず怖いので、偽宝箱は開けない決断をした。


鍾乳洞のエリアを抜ける所に教会の外に彫刻された様なガーゴイル(悪魔)が、扉の両脇の台座の上に鎮座していた。

マッブ上に警報を示す光が現れる。


「あのガーゴイルたぶん動き出すよ。今のうちに倒しましょう。」


たしかアイテムの中にハンマーとクサビが有ったはずだ。

動き出す前に俺はガーゴイル達の心臓にクサビを打ち込んでやった。

ガーゴイルに勝利した事で俺達のLEVELは15へと上がる。


俺達はその後様々な部屋を探索しアイテムを獲得したりレベルアップを果たしたりしていく。

そして第一階層の最深部と思われる場所に到着する。

結局、第一階層は大した魔物や罠は仕掛けられていなかった。

第一階層の最深部・・・

そこにはマジシャンがカードマジックをする様な台が置かれ、皿の上に少し大きめのサイコロが置かれていた。


先に到着した冒険者が居たので声をかける。

「やっと次の階層に進めますね! 健闘を祈ります。」


「ありがとうございます。あなたたちも頑張ってください。」


その言葉とほぼ同時にミーシャンに後ろに引っ張られた。


「迷宮内では私以外の人と話しをしないで! 」

ミーシャンはもしかして嫉妬しているのか?

俺が声をかけたパーティーの女の人をジッと睨んでいた。


やがて、そのパーティーがサイコロを振るとパっと姿を消した。

台の上には2の目のサイコロが残っている。

きっと順番通りに第二階層に進んだんだろう。


俺は台の前までやって来ると振り返りミーシャンに頼み込む。

「ミーシャン、お願いサイコロを振って! 俺、くじ運無いからさ・・・」


「分かったわ。振ってあげる。でも何が出ても文句は言わないで! 」

ミーシャンは祈るような仕草から勢いよくサイコロを投げた。


俺達はサイコロの目にくぎ付けになる。

6の目が確認出来たと思ったら俺達は違う場所に飛ばされていた。


「ねぇパシリ屋、ここは何処? 」


「たぶん第6階層だと思う。」


俺達の侵入を嗅ぎつけて赤龍がやってきた様だ。


「きゃ~ 私、蛇みたいなの怖くてダメなの! 」

ミーシャンが俺の後ろでブルブル震えているのが伝わってきた。


俺も逃げ出したかった。

でも、なぜかその時は・・・

「ミーシャンを置いて逃げるぐらいならココで死んだ方がましだ! 」

なんて叫びながら赤龍に突っ込んで行った。

手には全く役にたちそうもない錆びた剣を持って・・・


俺は他に何か使える物が無いか頭をフル回転させる。

頭の片隅に迷宮婚活のアンチョコにあった『赤龍は水のアイテムで倒す』という言葉を思い出した。

アイテムの中で水関係のモノは?


俺の頭には『どこでもスプリンクラーを設置できる魔法アイテム』が浮かぶ。

そして俺はそのアイテムを取り出すと赤龍の頭上めがけて思いっきり投げつけた。

たちまち第6階層は雨に包まれ赤龍は小さく萎んで消えていった。

そしてそこには赤い剣が地面に刺さっていた。

きっと赤龍を倒した戦利品なんだろう。

俺はそれを引き抜いて『迷宮婚活のアンチョコ』の上に置いてみる。

〈赤龍の剣、地龍を撃つ事が出来る〉

細かい数値はともかく・・・

これからゲームを進める上で重要なアイテムを手に入れて俺は武者震いした。


そして俺達のLEVELが50に上がった報せも届いた。

気持ち的には嬉しいのだが・・・

眼の前にはがあるのに鍵が無い。

鍵が有ってもレベルが低くて扉を開けられない。

いったい俺達はどうすればいいんだろうか?

ミーシャンも同じ事を思ったのか、近くの岩に疲れた様に腰をおろした。

しかしソレは岩ではなくて道祖神の祠である事に気づく。

第6階層に地響の様な声が響く。


『この罰当たり者め! 地獄に落ちるがよい! 』

地響と共に地面が崩れて俺達は落下して行った。


俺達は第1階層の床に叩きつけられた。

でもあんな高い所から落ちたのに何故か俺達は平気だった。

だかそれは宝箱がクッションになって俺達を支えてくれたからだと気づいた。

不運な事にその宝箱はミミックだった。

ミミックは俺達に12時間の強制ログアウトの呪いをかけたのだった。

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