第3話

このゲームはチャットで連絡を取り合いながら進めて行くようだ。

俺・・・

チャット苦手なんだよな・・・

始めちまったんだから今更どうしょうもないが・・・


「はじめましてミーシャンです、よろしくね。このゲーム初めてなの? 」

ミーシャンのアバターはギャル風で髪はポニーテールにしている。

先にミーシャンから書き込みされてなんだかドキドキしてきたが、ゲームは始まったばかりだ。

こんな事でいちいち緊張していてどうする?

平静を装って・・・


「はじめまして、走り屋じゃなかった、パシリ屋です。このゲーム初めてなんでいろいろ教えてください。」


「分かりました。これからビシビシいきますのでついて来てくださいね。アッ、それからそのアバター変ですよ! イッパイお金持ってるんだから替えてくださいね。」



その時、俺のリアルの世界でメールが届いた。

クレジットカード決済のお知らせだった。

198000円のお買い物のお知らせだ。

『何? そんな買い物なんかして無いぞ。カードの不正利用なのか? 』

俺は明細を恐る恐る確認してみた。

〘1EHT(イーサリアム)換金〙と書いてあった。

・・・まさか・・・

イーサリアムって仮想通貨のイーサリアム?

俺、そんなモノ買っちゃたの?

『落ち着け俺』

まだ換金しただけで使ったわけじゃない。

要は使わなければいいだけの話しだ。

後でまた円に換金し直せばいい。

俺の頭の中は混乱しまくっていた。



「ねぇ、はやく装備を買いに行こうよ。」

ミーシャンからの催促が入ってきた。


俺の頭の中は混乱しまくっていたが取敢えず返事しなきゃ・・・

「ウン、分かった。何が必要か教えてください。」


「任せて! 絶対にダンジョン踏破しようね。」


「あぁ、頑張ろう! 絶対にダンジョン踏破しよう。」


俺達はこれからゲームを進めていくのに必要な装備を買いに市場にやって来た。

市場の店員なんてみんなNPCなんだろうにミンナ何故か俺と目が合うと目をそらせた。

もしかして俺のアバター、NPCにすら変に思われているのか?

『もっと普通のにしとけば良かった』と今更ながら後悔する。


市場には怪しい品々が所狭しと並んでいる。

魔導書、回復薬、剣や盾、鎧など乱雑に並んでいる。

まるでここでも宝探しをしているみたいな気分になってくる。


「ねぇミーシャン、顔なじみの店とかあるの? 」


「あるわよ。でもその前にアレ買いましょう! 」


ミーシャンは一冊の古ぼけた指南書の様なモノを手にした。

題名は『迷宮婚活のアンチョコ』だった。

アンチョコって・・・

昭和の裏教材で先生だけが使う事を許されてたアレの事?

なんだか題名だけ見て俺は不安になってきた。


「それ、買うの? 」


「えぇ! ダンジョン攻略の必需品なのよ。」

ミーシャンはその本を俺に手渡すと買ってくるように目配せした。

俺は仕方なく店のレジらしい場所にそれを持っていき会計を済ませた。

イキナリ俺のウォレットという画面が開き1ETHから0.1ETHが引かれ残り俺の持ち金は0.9ETHと表示された。


「コレ・・・ こんなにするの? 」


「ウン、このゲームでは重要アイテムの一つだよ。 ダンジョン踏破すれば100ETH貰えるんだからケチケチしないの! 」


「まだ買い物は残ってるんだよね? 」


「そうね・・・ 残ってはいるけど、もうそんなに高額のモノは無いかな・・・」


「コレ買ってもらったから、クーポンあげるよ。」

お店の人がガチャ100連券と書いてあるクーポンを俺に手渡した。

「あっ、ありがとうございます。」


クーポン?

ガチャ?

俺にはわけが分からない事ばかりだ。


「次の店行く時ガチャ回してみようか? とりあえず今は仕舞っておいて。」

ミーシャンは俺の前に出てクルッと振り返り微笑んだ。


「さぁ次の店行くよ。」


俺はなんだかすごく不安になってきた。

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