第5話 逃走
アイツが変わるかどうか。
俺には分からない。
だけど火傷も負った。
そしてアイツは5年以上.....少年院に居て。
だから変わってほしいと思っている。
「.....その為に心理学を学んだんだからな」
わざわざ、という感じではない。
だけど俺達はどうしても咲に変わってほしくて.....だから。
必死に頑張っていた。
でもそれも限界が来てしまったのだ。
「.....ふあ.....」
俺は欠伸をしながら。
そのまま目の前の窓を見る。
それから顎に手を添えて考える。
今俺だが.....アパートで暮らしている。
それは大学を卒業してから決意したのだが。
ピンポーン
「.....?」
何かインターフォンが鳴った。
その音に合わせて俺はドアを開けると。
そこに隣人の大島つぐみ(おおしまつぐみ)が立っていた。
俺の大学の同級生だった奴だ。
今は隣人として交流がある。
「.....何だかあまり良い顔じゃないね」
「そうだな。.....俺の妹の事を思うとな」
「.....捕まっていたらしいね。自らに放火して」
「家も半焼した。.....それで.....出て来たんだんだが」
「.....そっか」
黒髪のお下げ。
そして顔立ちは美少女。
そんな感じの大島は俺の部屋に酒を持って来る。
相変わらずの酒豪の様だが。
また飲むのかよ俺の部屋で.....。
「む?嫌って顔をしているな」
「お前知っているか?俺には彼女が.....」
「そんな事は知っている。だけど.....まあ彼女とは言えど彼女だろ?私にもチャンスはある筈だ」
「お前もう既に酒飲んでやがるな!?酒臭い!」
「はーっはっは!」
言いながらグビグビと酒を飲む大島。
俺は顔を引き攣らせながらその姿を見る。
すると大島は、まあまあ。君も飲めよ。アッハッハ!嫌な事は忘れるに限る!、と言ってくる。
俺は酒に弱いの知っているのかコイツは。
「.....お前な.....」
そんな感じで咎めているとスマホが鳴った。
と同時に玄関のインターフォンが鳴る。
俺は?を浮かべながらスマホの画面を最初に見る。
そこには、逃げられた、と書かれている。
つまり凛から。
「.....まさか.....」
俺は玄関から覗く。
するとそこに.....この住所を知っている筈の無い咲が居た。
俺は盛大に溜息を吐いて。
そして怒り混じりに開けようとすると。
「待って。こんな時刻に誰?」
と寝ていた大島が起き上がって聞いてくる。
そんな大島に、ああ。俺の妹が逃げたらしい、と言うと。
大島の目付きが変わる。
あ。ヤバい。
コイツ火が点灯した。
「貴方の妹さんは確か施設に入ったんだよね?」
「あ、ああ」
因みに大島は。
今は色々あって教師をしている。
熱血の教師だ。
つまり.....咲の事も気には掛けているが。
教師なので.....悪い事をすると.....怒り易いのだ。
「玄関開けて」
「.....良いのか?大島。お前が見つかると.....また厄介になるぞ」
「.....良いから。怒らなきゃ」
「.....まあそうだが.....」
そして玄関を開けると。
そこに咲がニコッとして立っていた.....のだが。
俺の背後を見てから顔は真顔になる。
何やっているの?お兄ちゃん、と。
「.....お前こそ何やってんだ。凛の所から逃げたらしいな」
「.....だって退屈だし」
「退屈だから逃げるな。.....お前はまた現実逃避する気か」
「まあそうだね。何とでも。で?その女は誰」
「.....初めまして。咲ちゃん。私は大島つぐみ。.....まあ覚えなくても良いよ。.....それより貴方は逃避しているんだね」
その言葉に咲の眉がピクッと反応した。
それから、それが?、と聞く。
すると、私は今教師をしているんだけど.....そういうのは許せないからねぇ、と立ち上がる。
そして咲の前に立ちはだかった。
「駄目だよちゃんと治療を受けないと」
「.....アンタに言われる筋合いは無いけど。どこの誰か知らないけど」
「.....何処の誰でも良いけど.....ちゃんと治療を受けなさい」
はぁ?、と言いながら咲は俺を見る。
俺は頷きながら真剣な顔で咲を捕まえた。
それから、凛に電話する、と答える。
すると、そんな事して良いのかな?お兄ちゃん、と言ってくる。
「次に凛さんに会ったら殺すよ。凛さんを」
「それをしたら今度こそお前は牢屋から暫く出て来れなくなる。良いのか。俺は会いに行かないぞ」
「.....」
俺と大島を見ながらイラついていた。
そして電話した凛は直ぐに来る。
近所だから素早く来た。
大島と逃がさない様にしていたのだが。
俺は連れて行かれるその咲の姿を見ながら、咲。お前は変わらないといけないぞ、と説得する。
「お前は本当に変わらないといけないんだ。分かってくれ」
「.....お兄ちゃん.....」
「.....もし変わる事が出来たら俺はお前を迎えに行く。必ずな」
「.....」
そのまま去って行く姿を大島と俺は見ていた。
そして酒を煽る大島。
この野郎.....教師面は一時的か。
思いながらもそんな大島に、助かったわ、と言う。
すると大島は、あの娘は私に似ているからね、と答えた。
「.....は?似ているって何が」
「.....非行に走った事が」
「.....お前捕まった事あんの?」
「あるよ〜」
返事が軽すぎるだろ。
と思いながら大島を見るが。
大島は何も語らずにつまみを食っていた。
いや何か言えよお前.....。
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