第4話 希望の一手
滅茶苦茶な事になった。
我が妹は馬鹿な真似をしたと思う。
それから.....5年近くが経過したと思う。
咲は少年院から出て来れた。
これも警察や母親と父親の対応の結果だと思う。
「.....どうしたの?悠次郎」
「.....いや。今日は咲が少年院から出て来るなって思ってな」
「.....咲さん.....変わってれば良いけどね」
「.....そうだな」
それからまた再建した自宅で凛と共に待っていると。
リビングのドアが静かに開いてから.....咲が顔を見せた。
半分.....火傷が残っている。
だが体調は良さげで成長している。
何よりもあちこちが、だ。
「.....咲」
「.....何?お兄ちゃん」
「.....懲りたか?お前のやった事」
「.....そうだね。懲りてないと言えば懲りてない。私は.....」
咲は言いながら俺をジッと見てくる。
するとその言葉に目配せをした凛が立ち上がった。
そして咲の前に立つ。
咲はビクッとしながらも警戒しながら見る。
何、と言いながら。
「咲ちゃん。私ね。福祉学を学んでいるの」
「.....それがどうしたの」
「.....貴方に監禁されてから。.....私は貴方を本気で救いたいって思ったからこの道に進みました。.....だから咲ちゃん。変わってほしいって思う。性格とか」
「.....馬鹿じゃないの。変わる訳ないでしょ。私は私。お兄ちゃんに愛されれば何でも良い」
「.....それでこの世界は生きていけないよ。.....咲ちゃん」
言いながら数年前とは違う気迫を見せる凛。
こいつも成長したよな本当に、って思う。
思いながら火傷の跡を触る咲を見る。
何でそこまでするの、と聞いた。
俺は凛を見て頷く。
「恋人だから。.....貴方のお兄さんの」
「.....だから俺達は本気でお前を救いたいって思っている」
「.....お兄ちゃんは今何しているの」
「.....俺は今は福祉系の大学だ」
「.....え.....」
お前を救う為にわざわざ同じ大学を選んだ。
ただお前を救う為だけにな、と言いながら咲を見る。
咲は目を丸くしながら俺を見ていた。
そして唇を噛む。
「.....お前が5年間ロストした分も支えたいんだ」
「.....そんなの望んでないし」
「良いから。やるぞ」
「.....馬鹿なの?お兄ちゃん。私はお兄ちゃんが好きなだけだし」
「それで成り立つ程この世は甘くない。.....勉強するぞ」
その言葉に。
全くどいつもコイツも馬鹿ばかりだね、と言いながらも。
涙を浮かべる咲。
俺はその姿を見ながら息を吐く。
それから凛と見合った。
「.....でも私は変わってないから」
「.....」
「.....お兄ちゃんが取られたくない。これは変わらない」
「.....そうか」
「.....ね?お兄ちゃん」
俺は咲のそんな言葉に溜息を吐く。
それから、それに関しては準備した、と言葉を発する。
咲は?を浮かべながら俺を見てくる。
そして、お前は凛と暮らす、と言葉を発した。
「.....は?」
流石に想定外だったのか。
そんな素っ頓狂な声が出た咲。
俺は、真面目な話だ、と切り出す。
そしてまた咲を見る。
咲は、そうだよ、と切り出した。
「私の家で実践だよ。色々と学ぶの」
「.....馬鹿なの?殺されるよ?貴方」
「殺されないから。貴方は変わっていると思っているから」
「.....馬鹿な.....奴」
「.....何とでも。.....私は貴方と一緒に暮らします」
そして、この家から出て行けという話じゃない。だけどお前をこの家にはまだ置いて置けないから家族と話し合ったんだ。その結果だな、と話す。
咲は、お兄ちゃんそれは無いよ、と言うが。
此処だけは厳しくいく。
「一人暮らしを提案したら凛が乗ってくれたんだ。だからこうなった」
「.....お兄ちゃんは最低だね」
「何とでも言え。俺は家族に危険が及ぶのは絶対に許さん」
「.....」
まあ良いけど、と言いながら火傷の跡をまた摩る咲。
その姿を見ながら、咲。5年も経ったんだ。お前も大人になれ、と言い聞かせる。
すると咲は、私はまともだけど。世の中がまともじゃないね、と言葉を発した。
屁理屈ばかりだな。
「まあ何れにせよお兄ちゃんがそう言うなら指示に従うよ。それに.....お父さんお母さんが決めたならね」
「.....そうか」
「.....でも私は何時でもコイツの命を狙っているから。.....それだけは覚悟して」
「.....覚悟.....ね。まあそれが出来ればだけど」
そう言いながら俺達は準備していた荷物を差し出す。
咲はそれを受け取りながら凛と一緒に玄関から出て行った。
俺はその姿を見ながら息を吐く。
アイツに出来るだろうか、と思いながら。
〜〜〜〜〜
私の体の50%以上が抉れた。
つまり火傷して体の半分の組織が滅したという事になる。
何度も皮膚移植手術を受けたりして。
ブラ○クジャック状態だがそれでも生きていた。
そしてそれから少年院とかに服役してから5年ぐらいが経ち。
私も成長して家に帰ると。
お兄ちゃんは私を凛とかいう奴の家に、住まわせる、と言ってきた。
私はその事にかなり怒っている。
が。
もう怒る気力が無い。
それを表面化する力が、だ。
「咲ちゃん」
「.....何」
「.....着いたよ。私のマンション」
「.....あっそ」
言われ見上げると。
そこには扉に小さな看板が吊り下がっている場所が見えた。
そしてそこに、ニコニコハート、と刻まれている。
つまり何らかの施設が出来上がっているが。
何の施設だ。
「.....私は社会福祉士になりました。.....その場所だね」
「.....つまりこれは作業所とか」
「.....違うよ。.....ここは君ともう一人の女の子の回復施設」
「.....は?もう一人って何」
「.....元不良の子。その事一緒に暮らしてもらいます」
何でそんな事をされなくてはならないのか。
私は思いながら怒りの目で見る。
するとドアが開いてからそこから黒髪のボブの少女が出て来た。
可愛らしい顔をしているが。
私にとっては忌々しい。
「.....初めまして。.....黒崎道香(くろさきみちか)です」
「.....私は別に」
「こら。そんな事言わない」
チョップを食らった。
面倒臭い。
何故に名乗る必要がある。
思いながらも私はぶっきらぼうに、初めまして。私は咲です、と挨拶した。
するとその少女はビクビクしながらも、有難う、と言ってくる。
こんなのが本当に不良だったのだろうか?
「じゃあこれから3人で暮らしましょう」
「はい」
「.....」
面倒臭い日々になりそうだ。
思いながら私は鞄を乱雑に置いてから。
そのまま室内に入る.....と。
かなり綺麗な部屋があった。
「.....多額の借金までしちゃったけど.....それでもこの場所を創りたかったからね」
「.....馬鹿じゃないの?」
「.....何とでも。.....私は君を。.....黒崎さんを治すまでは.....諦めないし帰らせないから」
「.....チッ.....」
忌々しい。
凄く帰りたいと思ってしまう。
お兄ちゃんを好いているのに別れ別れなんぞ。
虚しくてしょうがない。
困った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます