明日は一人で
「えっと……ナナはこれからどうするの?」
「僕は当然恋人の傍にいるよ?」
私に抱きついたままナナはそう言ってくる。
「それは嬉しいんだけど、大丈夫? 私たちはワユティス王国を目指して旅をしてるから、着いてくるのならこの街から離れることになるけど」
私から最終的には告白しておいてなんだけど、ナナの事全然知らないから確認しておかないとね。
「僕は全然大丈夫だよ」
「あの、お金を受け取ってた人とかは?」
「あっ! ……あの人はたまたま今日頼んでやって貰ってただけだからいいんだけど、お金受け取ってきてないから持ち逃げされてるかも」
「今すぐ戻ろう」
私は三人にそう言って歩き出す。
私が場所を移そうって言ったんだし、早く戻ろう。
私たちは腕相撲をしていた場所に戻ってきたけど、さっきまでの集まりが嘘みたいに無くなっている。
「うわぁ……綺麗に持ち逃げされたなぁ」
「ナナ、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。でも、どうせだったらユアの為に使いたかったなぁ」
い、いやいや、私は自分のお金を使うから。
「大丈夫ですよ、ナナさん。ユアさんに貢ぐチャンスはいっぱいあります」
「ちょ、ルーファ!? 何言ってるの!? てか、フィオも頷かないで!」
「うん! 僕頑張って貢ぐね!」
何を可愛い笑顔で言っちゃってるんだこの子は!? てか、貢がなくていいから! 私は自分でお金を稼いで自立するから。
「な、ナナはどれぐらいしたらこの街を出ていけそう?」
私はこれ以上はまずいと思い、話題を変える為、咄嗟にそう聞く。
「僕は明日からならいつでも大丈夫だよ」
「じゃあ、明後日に街を出ようと思うんだけど、二人もそれで大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
「ん」
ルーファとフィオも頷いてくれたので、私は明日は一人で行動したいと話すことにした。
「そ、それじゃあさ、明日は自由行動にしない?」
「自由行動ですか?」
「僕はユアと一緒に居られるならなんでもいいよ」
「私も」
あぁぁ、自由行動って言ったらこうなるのか……だ、だったら言い方を変えればいいだけだし?
「あ、明日は私一人で行動したいな〜」
「ユアさんが一人でですか?」
「いや、私だって子供じゃ……ないことも無いけど、大丈夫だから!」
「ゴブリン出るかも」
「ゴブリン?」
「わ、わー! わー! なんでもないから! ナナは気にしなくていいよ」
「えっ? でも――」
私はこれ以上聞かれないようにナナを抱きしめると、ナナは顔を緩めて抱き締め返してきた。
「フィオも、大丈夫だからね? 変なこと言わないでね?」
「時間の問題」
わ、私だって隠し通せるとは、もう思ってないよ。でも、せめて自然とバレるまではバレたくないんだよ。
「ナナもいいかな?」
「明後日からは一緒にいられるんだよね?」
「うん」
「だったら大丈夫」
それから私たちは街を回りながら、屋台で食べ歩きをしたりして(自分で払おうとしたけど、金貨じゃ払えなかった)ナナと明後日の待ち合わせ場所を決めてから宿に帰ってきてすぐにお風呂に三人で入った。ただ、お風呂に入っただけ……なんてことも無く、その後は私の抵抗虚しくベッドの上で泣かされましたよ。
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