12月31日23時59分59秒

12月31日23時59分59秒

　１２月３１日２３時５９分５９秒に家族全員せーのでジャンプして着地した瞬間、新年になる。俺の家庭では年末こういう遊びをするんだ。

　大学一年生の冬、今年の年末は一人ですごした。平穏無事に。

　そのはずだった。

　今年の年末は一人ですごしたが実家でやっていたみたいに１２月３１日２３時５９分５９秒にジャンプしたんだ。しかし着地した瞬間、俺は山を登っていた。さっきまでアパートのワンルームにいたのに！

　鷹の被り物をした人々が列を成して深夜の山道を歩く。俺もその列の人間の一人だ。

　視界が悪い。俺も鷹の被り物をしているようだ。なんて不気味な。てかどうしたらアパートに帰れるんだ。それでも山道を歩くことをやめない。

　山頂につくと朝日が昇っていた。初日の出だ。するとみんな一斉に何かを取り出した。

　ナスだ。

　ナスを初日の出にかかげている。俺も、俺も持っているのか、ナス。コートのポケットを探る。あった。俺もナスをかかげる。

　一体何のために、鷹の被り物をして初日の出にナスをかかげているのか、わからない。わからないがやるしかない。もうやけくそだ！

　そう思ったときアパートのワンルームの床で寝ていた。どうやらジャンプしたときふらついて壁に頭を打ち付け気絶していたらしい。てことはこれが初夢？

「いやだ～！」

あんな不気味で意味不明な夢が初夢であってたまるか。いや待てよ。一富士二鷹三茄子。鷹とナスは出てきた。じゃあ俺が登っていた山の名前は……