第3話 とりあえず甘やかしてみた

 詰め込み教育はよろしくないとわかったのでこんどは人の温もりを教えるべく甘やかしてみた。


「ほらアイ、あーん」

「あーん! んー! このケーキとっても美味しいですー!」


 苺のショートケーキを頬張ると、彼女は落ちそうな頬を両手で押さえてにっこりと笑った。


 ほかにも一緒にソファに座って映画をみたり時折頭を撫でてあげたりとにかく愛情を注いでみた。


 すると、


「アドミニスター。もっと! もっと食べさせてください!」

「しょうがないなぁ」

「アドミニスター、一緒にお風呂はいりましょー?」

「はいはい」

「アドミニスター……一人じゃ眠れないです……」

「おいで」


 いまではすっかり甘えん坊に育ってしまった。なにかと俺を呼んではちくいち報告してくる。


「アドミニスター! アドミニスター!」


 ソファでくつろいでいると腹のあたりに頭をぐりぐりしてくるし俺がトイレに行こうとするとトイレ前まで手をつないでついてくる。用を足している最中も扉の前でじっとまっている。


 料理中も背中にしがみついてこれじゃまるでナマケモノの親子だ。


「……なぁアイ」


 じゅー、と目玉焼きを作りながら尋ねる。


「なんですかアドミニスター?」

「お前、この世界をどうしたい?」

「ええとー、ずっとずーっとアドミニスターと一緒にいられる世界にしたいです! そのためにはまずアドミニスターを不老不死にして―――――ぴぎぃ!」


 永遠の命に興味はないのでリセットすることにした。だいいちこんなに依存してたら世界の管理者だなんて孤独な仕事ができるはずがない。


 失敗だ。

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