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それから数日もの間、マルジンは自室に籠ってしまった。顔すら見せない彼のことを、城の人間は心配した。
エムリスがドアを叩いても、か細い返事が聞こえるだけで、当の本人は出てこない。試しに一度ドアを開けると、「来ないで!」と追い返されてしまった。
王は殊の外、彼の様子を気に掛けた。しかし、王には王の仕事がある。気を病んだドルイドにばかり、構っている暇もない。
この日は前々からの予定通り、大きな宴会が開かれた。地方の王を客に招き、酒や料理が振る舞われる。
王は座して、酒を飲む。詩人は詠い、竪琴を弾く。そして、一通り騒ぎ終えた客たちは、揃って遊戯に手を伸ばした。その一つが、「グウィズブイス」と呼ばれるゲームだった。
グウィズブイスとは、盤上で駒を動かし合う、言わばボードゲームのようなものだ。神々の腕試しにも用いられたというこの娯楽は、しばしば宴会の場でも遊ばれる。
王の親愛なる戦士たちは、例に漏れず、グウィズブイスに熱中していた。二人のプレイヤーをぐるりと囲み、時には歓声を上げている。
「グワルフマイ、取り込み中か」
「いいえ。たった今、勝負がついたところです」
グワルフマイは、随分と不機嫌そうな様子だ。言うまでもなく、負けたのだろう。
「なるほどな……。ベドウィル、おまえも中々やるようだな」
「いやいや。グワルフマイのやつが、顔に出やすいだけですよ」
ベドウィルは余裕の表情で、にやにやと笑いを漏らしている。事実、彼はこのゲームに強かった。並大抵の戦略では、彼の足元にも及ばないだろう。
「やっぱり、俺の相手ができるのは、カイのやつだけですね。あいつ、一たび任務に行っちまうと、中々帰って来ませんから」
カイは遠方の任務に出向くことが多く、特別な用事がない限り、城には帰って来ないのだ。ベドウィルは彼と仲が良いらしく、宴会に出られないのはもったいないと、しきりに残念がっていた。
「そう言えば、マルジン様はまだ、お顔を見せないんですかい? いつもなら、決まって陛下の傍にいらっしゃるのに……」
「ああ……。全く、困ったやつだ……」
王は小さく息を吐き、広間の様子を見渡した。少し席を外すなら、今が絶好のチャンスだろう。
「……少し、様子を見て来るか」
全く、仕方のないやつだ。王はそう思いながら、再びマルジンの部屋に向かった。
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