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 城の奥の広間には、大きな円卓が置かれている。エムリスはマントを翻し、円卓の自席に腰掛けた。

 彼の後ろには、ドルイドのマルジン。各々の席には、部下の戦士たち。全てが揃ったことを確認すると、彼は会議の開始を告げた。


「今日の議題は、他でもない。他民族の動向についてだ」

 円卓の戦士をぐるりと見つめ、一人ひとりの顔を覗く。彼は王でありながら、「対等」な話し合いを心掛けていた。


 彼に仕える戦士たちは、各地の豪族の息子たち、つまり王の息子だ。立場上は部下とは言え、その気にさえなってしまえば、謀反を起こすことすら容易い。

 だからこそ、エムリスは円卓を用意して、自らもそこに席を置く。全ての戦士が平等であることを、王自身が示すように。


「ピクト族の様子は?」

「今のところは、こちら側に攻め入る気配はありませんが……。決して、油断はできません」

 カイという名の戦士が、王に辺境の様子を述べる。背の高い彼が立つと、周りは一斉に見上げる形となる。

「……ですが、それよりも。最も注意すべきなのは、サクソン族の動きです」


 アングロ・サクソン族。大陸にて勢力を広げる、ゲルマン系の民族たち。


「彼らの勢いは凄まじい。それこそ、いつやって来てもおかしくはない……」

 その言葉を前にして、広間はしんと静まり返る。ローマ帝国に次ぐ脅威が、再びこの国に現れようとしていた。

「サラセン族のことも、忘れてはいけませんよ。何でもやつら、中々に攻撃的なんだとか」

 ベドウィルという別の戦士が、砕けた口調で割って入る。普段から飄々とした態度だが、戦いの腕は確かな男だ。

「それに、あのローマの連中も、噂するようなやつらですからね。こっちまで来られたら、たまったもんじゃないですよ」

 言いながら、ベドウィルは肩をすくめる。戦闘が好きな彼ですら、「やれやれ」といった感じなのだ。その力は計り知れない。

「……全く、敵が多すぎる」

 少し弱気になったのか、王は小さくため息をつく。が、卓についた戦士たちは、それを決して見逃さなかった。

「陛下、何を恐れることがありましょう。例え、どのような敵が攻めてこようと、我々ならば打ち勝てます」

 グワルフマイを筆頭に、戦士たちは声を揃えた。「我々ならば、問題ない」と。

「エムリス」

 マルジンも王の手を握り、優しい顔で笑い掛ける。白い指を絡ませて、言い聞かせるように。

「彼らの言う通りだよ。君なら、大丈夫」

 王は深く安堵した。全く、彼らの頼もしさは。言葉では言い表せない。

「……ああ、そうだな」

 王は再び宣言した。我々が我々である限り、いかなる敵にも屈さないと。


 ――ただ一人、扉の傍にいたドルイドだけが、冷たい表情を浮かべていた。灰色の瞳を細めながら、無言でその場に立っていた。

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