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王のお付きの従者たちが、城の長い廊下を歩く。柔らかな朝の光が、一日の始まりを告げていた。
彼らの手の中には、まばゆく輝く装飾品。貴重な黄金が使われた、「トルク」と呼ばれる首飾り。
従者たちの向かう先は、目覚めを迎えた王の部屋。身支度等の世話をするのが、彼らの朝の仕事なのだが――。
「マルジン様……」
――部屋の前に立っていたのは、かの有名なドルイドだった。フードの陰に隠れた瞳は、青く鋭く、そして冷たい。
彼は従者の手を見ると、その首飾りをひったくる。じゃら、と擦れた音がして、トルクは彼のものとなった。
「僕がやるから」
ドルイド僧の言葉は強い。有無を言わせぬ力がある。
「下がって」
従者たちは、大人しく引き返す他なかった。
王はすでに、支度を整えていた。胸元ではブローチが光り、足元では金具が輝いている。真紅のマントは滑らかで、白い肌によく似合う。
彼は磨かれた鏡の前で、彼は静かに待っていた。あとは、茶色く長い髪を結び、トルクで権威を示すのみ。
「エムリス」
王はちらりと後ろを見たが、すぐに鏡に向き直った。最早、マルジンに世話を焼かれることに、すっかり慣れてしまっている。
「全くおまえも、物好きなやつだな。私の髪などいじって、何が楽しいんだか」
「もちろん、楽しいさ。だって、君の髪だから」
背中にかけて伸びる髪を、丁寧に分けて三つ編みにする。マルジンは実に器用だった。同時に、とても愛おしそうだった。
「随分と、長くなったね」
髪の束を交差させ、ドルイドは小さく笑みを浮かべる。彼がこういう顔をするのは、エムリスの傍にいるときだった。
「いっそ、ばっさりと切ってしまうか。髪ばかり長くしても、戦いのときに邪魔だからな」
「そんなこと、言わないで。このままの君が、一番すてきだよ」
髪に飾りを付けてやると、王の顔がますます煌めく。マルジンは息を吐いた。うっとりとした表情で。
「そうか。この方が、王らしいか」
「うん……」
――でも、それだけじゃないよ。
マルジンは、王の瞳を覗きながら、その首にトルクを通した。彼の姿を確かめるように、ゆっくりと。
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