第六話 判断が遅い!
★生徒会長視点
蓮くんは私を安全な場所に降ろすとそのままどこかに行ってしまった。
「ではな」
「は、はいぃ………!」
恥ずかしくて死ぬかと思ったが。
家に着いても定期的に蓮くんに抱きかかえられたことを思い出し、床に転がってしまったのは秘密だ。
「これは………恋の病ね………!」
「ついに湊にもそんな人が出来たのか………!」
「「誰なのか、凄く気になる………!!」」
両親が陰で何か言っていたが恐らく挙動不審なことを怪しんでいるのだろう。
悪いことをしたかもしれない。
そんなこんなで次の日になった。
「お、おはようっ!蓮くんっ!」
ま、不味い!声が裏返ってしまった!
「む?生徒会長か?今日は随分とうるさいな」
「うるさいとは何だ!うるさいとは!」
まったく…デリカシーのない男だ!
「うるさいものはうるさいだろう?AをAと言って何が悪い?………というか、近いぞ?」
意識してみると目の前に蓮くんの顔が!?
「ばっ………!?」
私は無意識に顔を真っ赤にしてしまう。
「相変わらずうるさい奴だ………だが、元気なようで安心したぞ」
そう言う蓮くんは本当に心配しているような表情をしていた。
いつもの不遜な顔とは違うその憂い顔にドキリとしてしまう。
「こ、こっちを見るなぁぁ!」
「あ………」
私はそう言って走り去ってしまった。
でも思うのだ。
昨日言っていた私のもう一つの表、内気で友達が出来ないことに悩む私の姿をこの少年にいつか見せてもいいかもしれないと。
「む?胸の奥がポカポカする………」
結構離れた後、不思議な感覚に包まれた。
私はその感覚に首を傾げたが、なぜか知らないが心地よいような気がして考えるのをやめた。
今はこの感覚に身をゆだねていよう、そう思ったからだ。
◆蓮視点
例の取り逃がしたエネミーだが、あれから探してもまったく見つからない。
瀬場にも確認してもらったが死んだのか、気配も感じることが出来ないという。
「不可解なこともあるものだな………」
「馬鹿にぃ?」
「む?何でもないぞ」
妹の葵が話しかけてきた。
こいつは鋭い所があるからな。
気を付けねば。
「そう………ならいいんだけど。馬鹿にぃ、私に隠して……」
くそ!考えたそばから…!
「………魔法少女」
「え!?あ、うん!魔法少女がどうしたの!?」
俺の秘密に感づいたのかは知らないが何も言わせない。
先に揺さぶりをかけさせていただこう。
「昨日のことなんだがな。俺は魔法少女を見た」
「へ、へぇ!そ、そうなんだぁ!?それでどうしたのかなぁ!?」
「いや、それだけだ」
あからさまに動揺してるし、この程度でいいだろう。
「今度、遊びに行くか?」
「え!?いきなり何!?というか、ほ、本当に!?」
俺は妹から目を逸らしてきた。
だが、逸らしすぎた結果、俺は
「嫌なら良いんだが………」
「行く!絶対に行く!風邪ひいても行く!」
「風邪の時はいい。看病してやるから」
「………看病!?………でも、ありがと」
俺は取り戻さなくてはいけない。
「俺はお前の兄だからな」
今からでも、遅くはないだろうか?
◇如月 雪視点
「あ、瀬場さん、こんにちは!」
「はい、お久しぶりですね。お姫様?」
「ボクは男なんだけど?」
見た目は女の子みたいとはよく言われるけど。
「あぁ、そうでしたね」
瀬場さんがやってきたけど相変わらず不思議な雰囲気の人だ。
執事服をぴっちりと着こなし、髪をオールバックにしている。
「如月様、スぺスぺの居場所はご存じですか?」
「スぺ………スペードさんは今、外で徘徊してます」
見回りって言ってたけど徘徊の方がしっくりしてる気がする。
「あぁ、そうなんですね。あと、これをどうぞ」
これは………!
「神戸プリンですか!?」
「えぇ、良かったらご家族でお食べください」
「やったぁ!」
凄く美味しいんだよね!
口当たりが滑らかでほんのり甘くて。
「では、私はスぺスぺと話してきます」
「はぁい!」
瀬場さんとスペードさんが何を話すのか気になるけど今はプリンを冷やさないと。
あとでスペードさんと一緒に食べようかな。
「家族ね………」
瀬場は意味深に呟くと喜ぶ雪の様子を横目で見てその場をあとにした。
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