第五話 俺は絶対に取り乱さない!(即落ち)
◆
ドゴーン!
「爆発音だと!?………ふぅ……」
だが、俺は取り乱さない。
俺は強いからな。
この程度では揺るがないのだ。
「見に行くか……」
秘密裏にエネミーを狩ろうと思っていたが仕方ない。
おそらく、魔法少女と戦っているのだろう。
俺は自身の影に手を触れて纏う。
「【
黒いコートに黒い革の質感の手袋、そしてペストマスクをまとった。
これらは全て俺の闇からできており、デザインも俺が一から構成したかっこいい最強の装備だ。(個人の感想です)
この状態ならば常人では不可能な動きで移動することが出来る。
「ふっ………屋上から見下ろす俺、流石だ」
右手を手に当て、見る。
「やはり魔法少女と例のエネミーが戦って………」
え?魔法少女、妹では?
妹が魔法少女やっているとか聞いていないんだが?
「ふっ………な、何かの見間違いだろう………」
そうだ。そうでなければならない。
世界の理的なあれでそうに違いない。
「そして、敵は………」
うむ、俺の目はどうやらおかしいようだ。
エネミーが生徒会長に見えるとはな。
『あら、よくやるじゃない?この女の肉体はなかなか使い勝手が良いのよ。流石生徒会長と呼ばれているだけはあるわ』
「絶対に生徒会長の身体は取り戻す!」
………。
「くっ!くははは!………何も面白くない!」
最悪だ。
「俺は守っていると思っていた葵に守られていたのか!そして守れていると思っていた生徒会長を守れなかったのか!実に傑作だ!」
だが、俺はやってやる。
要は守り切ればいいのだろう?
「妹と生徒会長。どっちも救ってやる………!」
俺はそれだけの力を持っているのだから。
『ならもう一度よ!【ヘルフレア】!』
「………!」
生徒会長の姿をした燃える人鳥が紫の火の塊を放つ。
周りの空気が熱で歪み、揺らいでいる。
「【影】っ!」
俺は高速で葵と人鳥の間に飛び込み、葵を背にして壁を生み出す。
『………あなたは?』
思ったよりも速く、威力が高かったが、間に合った。
さては、こいつ、Sクラスのエネミーだな。
気を引き締めねば。
「『月光』。闇を扱う者だ。俺はお前に乗っ取られた馬鹿真面目を取り返しに来た!」
もちろん妹も助けるつもりだがな。
★生徒会長視点
私は何をしているのだろう?
何のために生きてきたのか分からない。
人を傷付けてばかりで嫌われているに決まっている。
今度は蓮を傷付けてしまった。
『そう。だから貴女はワタクシに身体を任せていればいいの』
「………」
もう考えるのはよそう。
流されるままに。
このままいっそ消えて………
「俺はお前に乗っ取られた馬鹿真面目を取り返しに来た!」
「……
私の大好きな人の声がする。
私を、取り返す?
『残念だわね。この女は自分の生まれたことを後悔している哀れな存在よ。取り返す価値なんてあるのかしら?』
そうだ。
私は要らない存在だった。
「………黙れ」
『な、何よ!』
どうかしたのか?
私は―――――
「黙れと言っている!」
「ゴクッ………」
私は蓮くんの初めて見る空気に息を飲んだ。
私が何をしても飄々としていた男が、今にもはち切れんばかりの感情を持っている。
「俺の知る生徒会長はそんな奴じゃない。いつも正論ばかりで辟易とするが、自分の芯を持っていた」
そんなことはない。
影でウジウジしているゴミみたいな存在だ。
そう見せていただけだ。
『馬鹿ね!それは表の姿よ!あなたは彼女の表面しか見ていなかったのね!裏を知らないあなたに――――
「裏?………笑わせるな。どちらも表だろう?」
どちらも、表?
「俺の持論だが………周りが見た姿はそいつの本質を少なからず表している。なんせ行動は思い込みや考えから生まれるのだからな」
芯を持っているように見せていた私が本当に芯を持っている?
「俺はそんな芯のある奴は嫌いじゃない。だから、馬鹿にするな」
この少年はやはり馬鹿だろう。
だが、私はもっと馬鹿だ。
この少年を置いて消えようとしていたのだから。
『ワタクシを諭すような口調で話すなぁ!』
「【
彼は跳躍して瞬く間に私、いや、化け物に近づき斬り裂いた。
あぁ、私はここで死ぬのか。
最期に蓮くんに抱きかかえられて死ぬのなら悪くないだろう………
「え?」
「ちっ………身体を済んでのところで分離したか………」
見た目は完全に全身を黒に包んだ不審者だが、最初に蓮くんだと気付いている私は思考が停止していた。
「おい、大丈夫か?」
「は、はい………」(蓮くんにお姫様抱っこされてるぅぅぅ!)
わ、私は生きて帰れるだろうか?
主に心臓の問題で!
――――――――
★???視点
ワタクシははるか上空を飛行して逃げていた。
『しくじったわ!ほとんど完全に融合していたというのに!』
有り得ない!ワタクシだけを的確に斬り裂くなんて!
『ここは一旦撤退して体制を立て直すのよ!』
絶対に復讐してあげるわ!覚悟しなさい!
ワタクシはさっきの場所から遠く離れたのを確認して高いビルの屋上に降り立った。
『ここまで逃げれば大丈夫なはず………』
「何が大丈夫なの?」
『――――ッ!』
誰!?
今は消耗していて戦闘は避けたいのに!?
「ねぇ?聞いてる?」
影から出てきたのはフードを付けた少女だった。
『何だ、子どもか。それならワタクシの血肉となりなさい!』
「………」
『あ、れ?身体が、動か、ない?』
指の一つも動かせない。
この異常な状況に身体が震えることもなかった。
「………死んで」
このフードの少女は何を言って―――
『ぐふっ………!』
ワタクシは身体が貫かれるような痛みを感じると消滅した。
「どいつもこいつも………私の大切な弟に手を出さないでほしい………」
夜闇の中、金色の瞳が妖しく輝いていた。
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