幕間3 デブリ?
フランコ・サインツは爆発の知らせを受けて、すぐに通信で組員の動きに指示を出す。兵の七割を爆発した場所へ。三割にゼィ達を追うように命じた。
最悪ゼィ達は今回は取り逃がしても構わなかった。今日はあくまであいさつ代わりであり、また次の機会がある。しかしせめて研究員を一人くらいは生きて捕まえなくてはメンツが台無しになる程度だった。
それよりは施設の一部が爆発したことが重要だった。こればかりは想定していない。ポールロデスコ家の連中がやったのか? 仮に奴らがやったことではなくとも、この事態を収束させる必要は最優先課題だ。一刻も早く現場に向かう必要がある。
エレベーターとはいってもワイヤーで吊り下げているわけではなく、モノレールのように壁を走る設備なので、一部が破損しても少しプログラムをいじれば問題なく移動できた。
爆破した部分の手前でエレベーターを止める。。そのまま一部の組員に、ここからゼィ達に先回りをするよう伝え、自分は爆破地点に向かった。
そこには大きなクレーターのような穴が開いていた。細長い施設を二つに分けるように破壊されており、残骸が散らばっている。向こう側の建物から、組員が覗いているのが見えた。
『もしかして隕石やデブリが衝突したのですか?』
フランコは近くにいた組員に聞く。
『いえ……そんなはずはありません。コルの位置関係から言ってこの位置にそれらが衝突することはあり得ません』
『しかし現に何かが衝突した跡がある』フランコは目を細めて、クレーターを観察した。『これ……私たちでは破壊できないコルの壁を抉っていますね』
『至急、映像を確認しているのでお待ちください』
フランコは先ほど近くにいた別の組員に話しかけた。
『先ほどロケットのようなものが刺さっているのを見かけました。しかし今はどこにもありません。どう思いますか?』
『はっ! 第一コルからの砲撃でしょうか』
その可能性はある。ふと第一コルの方向を眺め、住民が着々と反乱の機会を企てており今日実行したという可能性についても考える。通常であればこんな一発ではなく、続けて何発も続ける。この一発だけ打った砲撃が効果的な一撃だとは思わなかった。だから普通の知能を持った人間であればこんな攻撃はしない、そうフランコは結論づけた。
ではやはりポールロデスコ家の仕業か……?
例えば先日追放したナジャだ。いつの間にかあれがつなっがっており、第一コルで未知の技術を見つけて砲撃した、というのはどうだろうかと考えた。しかし、やはり準備期間が少なすぎて不可能だと結論付けた。
「ナジャか……」
服内でくぐもった声でつぶやく。あれもまた奇妙な組員だった。
第二コルと第一コルの合併考えるものはそれなりにいる。しかしその考えというのは病のようなものだ。第一コルの人間を救いたいとは言っても、ほかにもう少し簡単なことがあるはずで、合併そのものを提案するのは極論であった。
深海ポッドの開発。移民の支援。生体兵器を効率的に破壊するための兵器開発。確かにどれも今のところ成し遂げられていない。しかしコル同士の境界を壊すより前になすべきことではある。順番を間違えてはいけない。
ある程度の量の人間が集まっていると、順番を間違えるものが出てくる。そういう奴は、間違えたと知り自分を正すか、そのまま突っ走って破滅するか、運よく生き残って、間違えたまま何か成し遂げたように錯覚し何も成し遂げずに満足して死ぬかだ。
『ボス! 映像の確認を終えました! 見てください』
送られてきた映像を確認する。ロケットが突っ込み、建物が破壊されている様子が映し出されていた。奇妙なことにその時点ではロケットは傷一つついていない。ロケットはコルの表面に飲み込まれていった。
ふとある可能性を考えて、時間を逆に流しロケットが飛んできた軌道を確認した。コル表面についた望遠鏡によってとんてき多方向を調べる。その結果コルからではなく宇宙から飛翔してきたという事がわかった。
『ああ、そういうことですか……』
呟いたフランコに「どういう事です?」と組員が聞いてくる。
フランコはわかったであろう研究員に説明を促した。
『我々の計画の一部に、スウジィに先回りをして遅い時間の中AIを飛ばして、先に技術を進歩させようというのがありました。よく考えてみれば、我々が思いつくことなど、スウジィがとっくに思いついているはずです。ですから先ほどのロケットはスウジィがその計画をすでに実行していたということですよ。そして我々はそうとは知らずに、回収用の着弾点に偶然施設を作ってしまったと』
『つまり?』
察しの悪い組員が一人だけいた。
フランコは息を吸い込み、通信の音量を最大にした。
『ただの偶然で、奴らがやったというのはハッタリだ! 修理班以外はすべて追え!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます