第9話 質疑応答

 「こいつが園田澪依華か。お前の死んだ妹にそっくりだな。そう思わないか。というより、だから拾ったのか。そうか、そうか」


「……勝手に決めつけないでくださいよ。何も知らないんですから。それに、澪依華は……」


「殺させない、とでも言うつもりか。妹の時もそう言ったが、私達に無惨に殺された。そうだろう。いい加減諦めろ。どうせお前も私達に殺されるんだからな」


はぁ、と溜息が出る。ここまで言われたら、今まではぐらかしていた話を澪依華にしなくちゃならない。面倒だ、と思う。それよりも、思い出したくない、の方が強いか。別に、全く覚えてないとか、忘れてしまったとかではなく、考えないようにしていた話だ。思い出せば思い出すほど、死んでしまいたくなるから。


「ねぇ…どういうこと…?どうして、お爺さんと秀は知り合いなの?どうして、秀はこのお爺さんに妹さんを殺されなきゃならなかったの?てか、そもそも妹さんがいたこと自体初耳なんだけど。…ねぇ?あなた達はだぁれ?何の説明もなしに、話を進めないでくれる? 」


最初は、顔が青ざめていた。恐怖、不安、というところか。声が震えていた。次第に、何故か、苛立ち、怒りというように、口調が強くなっていった。


「本当にそっくりじゃないか。そうやって首を突っ込むから、こいつの妹も殺されたんだぞ。知らなければいいものを。こいつが、人を殺してるなんてことを知らなければ。知っていても言わなければいいものを。まあ、妹と違うところは、お前が馬鹿なところか」


話さなくてはいけないのか。できれば話したくないし、それ以上に澪依華をこれ以上巻き込みたくない。


「は?なにそれ、秀が人殺しの仕事してるのもあんた達のせいなの? 」


「そうだ。名誉ある仕事だぞ。三条の邪魔となる存在を抹消する仕事だ。この男には勿体無いくらいだ」


「ふぅん。で?私に何の用?用があるから私をここに連れてきたんでしょ?あと、私が馬鹿だという証明をして」


 そこで気づいた。でも、気づかないフリをしていた方が都合がいいととった。


「馬鹿そのものじゃないか。私にそんな口を聞いているあたり。私が誰か知っているかね」


「知らない。だってこの人たちも話してくれなかったんだもん。誰?あんた」


「三条宗太郎。三条財閥のトップ。三条というと、日本の経済を回していると言っても過言ではない家。この人は現在の当主で3代目。澪依華はそれにタメで喋ってたの」


はぁ、と溜息が出る。暫く喋っていなかったからか。澪依華は、今まで黙っていた俺が一気に喋ったことに驚いていた。


「ふぅん。…ん?…さんじょう?あー、マジか。まぁー、別にいっか。そんなことよりさ、なんで秀はそんな人に脅されてんの? 」


これは、俺に向けられた言葉だ。


「それは、……」


「それより、本題に入ろうではないか。そんなまどろっこしいやりとりも飽きてきただろう?園田澪依華? 」


この男…!言わせないつもりか。話した方がこの後のことについてはやりやすいはずなのに。


「確かにそうかもね。本題って何?私は殺されるの? 」


三条がにやりと笑う。想像がついている。


「勘がいいな。しかし、それを決めるのは私ではない。こいつだ」


といって俺に目が向けられる。澪依華はなんで?というような顔でこちらを見てくる。


「なんで秀? 」


「こいつに選ばせてやるんだ。今ここで園田澪依華を殺すか、お前の妻にして、子を成してから殺すか、選べ」

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