第17話 協定会合①

 円卓に獅子国レアルトの国王アラガド・バローグを一番奥の先頭とし、時計回りに犬国の国王フェル・カーネロ、猫国の国王ガット・ティコ、熊国の国王ラパス・ベール、狐国の国王ソロ・ハポーザ、狼国の国王マクティ・ローボが座った。


「…………」


 唯一の人間であるティオ・ファリスはこの光景に少し、圧倒されていた。


「では、まず、僕から情報共有を」


 一番友好的且つ温和なフェルが、話し出した。


「僕たち獣人の発情期に、悪い変化が起きています」


「悪い変化とは」


「……定期的にやってくるはずの発情期が、不定期になっている者が出始めています」


「何と! あいたたた……」


 ソロは驚愕し、腹部を押さえた。


「そのせいか、抑制剤の効果が切れた頃にやってきて、周りを見境なく襲う者が増え、中には家族の区別も付かなくなるほど発狂し、妻子を襲ってしまった者もいました……」


「その者は、どうしたのだ」


 アラガドの問いにフェルは力なく彼を見ると、


「襲われた家族は悲しみのあまり自害し、襲った本人は発情期が治った頃に、襲った相手は愛する家族だと気づき、その愛する妻子が自害したと知り、自らも自害しました……」


「…………」


 フェルは静かに大粒の涙を流した。


「僕はもう、あのような思いする国民を増やしたくありません! 抑制剤の改良と! 配布の増量を希望します!」


「改良か……」


 アラガドは腕を組み、考え込んだ。


 共食いのような、悲しい思いをしたくないのは、どの獣人も同じ。改良については、以前から考えていた。手がないわけでは、なかった。


 それは、


「抗体を持つやつの、免疫かなんか取り出しゃあいいんじゃねぇの?」


 数千年に一人の割合で生まれるという、抗体を持つ獣人から免疫細胞などを取り出すという、博打のような手段だった。

 

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