第3話

背後から忍び寄る音

湖面に映る影により引き寄せられ、招かれざる者が忍び寄る


【ん?なんだ?】


キースの視界左下にマップが出現し青い点が3個、赤い点が1個映る


【ん?青い点が3個・・・つまり俺たち】

【てことは赤い点は・・・】


背後を振り向いたキースに長い尾の強烈な一撃が当たる


「ぐあああああああっ!!!」


キースは若木を数本なぎ倒し道の端に飛ばされた


「キースお兄ちゃん!」

「キースさん!」


そこに現れたもの

それは体長5mのワニに似た魔物

その双眸は紫に光り身体からは漆黒の靄のようなものが放たれている


「グルルルル・・・」


エサが2匹いる


魔物はそう考える


「シア!逃げなさい!」

「あ・・ああ・・・」


シアは動けない

普段から通いなれた道

いつも水を汲みにお手伝いで通る道


「シア!!早く!!」


ミアは叫ぶ

しかしシアは動けない


「クッ!」


ミアはそこで手を合わせ何事か呟く


「世の湖に住まう精霊よ、此の身を糧に力を分け与え賜え」


するとミアの体が淡く光り輝き、その手から水の玉が放たれる

しかし当たらない

双眸の輝きを増し吠える魔物

その雄叫びは2匹の体を動けなくする


「あ・・ああ・・・シア・・」

「ママ・・」

【くっ!なんだ今のは】


キースは吹き飛ばされて体力が削られていた


名前:キース

種族:ホルト

年齢:10

LV: 1

体力:15/25

魔力:15/15

攻力:05/05

防力:07/07

速力:10/10

知力:08/08


【今の一撃で10も減るのか?!】


体力が10減っていた

と考えていると、雄叫びが聞こえてきた

2匹の目の前には魔物が迫っている


【考えている暇はない!!】


キースは転移で2匹の目の前に躍り出た

そして収納から水を出す


バシャッ!


モンスターの横に10リットルの水が出る

その音に魔物は横に少し逃げた


【ん?今水を出すときに目の前に出なかったな・・・】


ゲームの世界では水を収納に入れたりもするが

何か入れ物に入れてから収納するのが基本

今回のように直接水を収納に入れたことはなかった


【ということは・・・】


キースは収納に残っている水をすべて収納から出す


パァン!!


目の前の魔物は破裂した


「ふぅ~・・・うまくいって良かった」


キースは安堵し座り込む


「助かった・・・の?」

「キースお兄ちゃんがやっつけたー!!!」


2匹も安堵し座り込む


「なんとかなりましたね」


微笑んだキース

それにミアが答える


「どうやったんですか?!」


ミアは自分の魔法が避けられた事を思い出し


「私の魔法でさえ避けられたのに!」

「いや、収納に収めた水をモンスターのお腹に出したんですよ。全部」


湯船の半分の量の水90リットルが瞬時に胃に入る

破裂して当然である


「収納!?」


ゲームでは出来ないであろう事


「はぁ・・・すごいわね・・・」


ミアに言われ考えるキース


【とっさにやったけど、このままじゃモンスターには勝てないな・・・】

「あ、そういえば水が無くなっちゃったのでまた入れてきますね」

「ええ、お願い」


まだ放心状態のミア


「私も行く~」


シアはもう立ち直っている


「じゃあ一緒に行こうか」


手をつないで行こうとしてシアの小ささを思い出す


「シア、俺の手に乗りな」

「うんうん!」


そして片方の手のひらにシアを乗せて湖へ


「ミアさんは待っててください」

「急いで行ってきますね」


1人1匹は湖へ

ミアは考える


【収納って遠くに出せたかしら?】


キースは水を収納に入れる


【さっきは100リットルだったか・・・】

【また何かあった時のために1000リットル入れておこう】


先ほどの10倍の水を収納へ

ほどなくして戻ると


「おかえりなさい。大丈夫でした?」

「ええ、何もなかったですよ」

「そう、じゃあさっきの魔物を回収して帰りましょう」


弾け飛んだ魔物の素材を回収して帰路へ

少し歩いてミアとシアの家に着く


「じゃあそこの水溜に水を入れておいてもらえるかしら?」

「わかりました」


キースは収納から水を入れる

50リットル程で満タンになる

ここでキースは先ほどの事を思い出し聞いてみる


「普段から魔物が出るんですか?」


キースは考えた


普段から魔物がいるのなら水を汲みに行くのも危ないのではないかと


「いえ、普段は魔物が出ることは無いのよ。あの湖は

精霊によって守られているから・・・」


では何故魔物が出たのか


【普段はいない魔物が現れた・・・】

【何かが起こっているのか】

「後で村の長に聞いてみるわ」

「わかりました」

「キースお兄ちゃん!さっきみたいに手に乗せて~」


シアが手に乗りたいと言ってくる


「いいよ、おいで」

「やったー!へへへ」


キースはシアを手に乗せてやる


「じゃあ長の所に行きましょうか。少し歩きますが大丈夫ですか?」

「はい大丈夫です」


1人と2匹は長の元へ歩き出した


■■■■

一方、湖では徐々に魔物に結界が破られそうになっている

『せめて、せめて村の周りだけでも・・・』

湖を守る者は最後の力を振り絞り結界の維持を続けていた

■■■■




「あ!おじいちゃーーん!!」


シアが手から飛び降り駆けていく

その先にいるのは


「おー!シアちゃん今日も元気じゃの~」

【モグラだな・・・】

「長、こんにちは」

「お~ミアもよう来たの」

【俺が視界に入っていない?】


そう、長はモグラで目が悪い

しかも上を見上げていないのでキースの脚しか見えていない


「ん?なんじゃこれは」

「おじいちゃん!キースお兄ちゃんだよー!」

「ん?お兄ちゃんじゃと?」


ここでやっと長はミアとシアのそばにいるものに気づく

そして下から徐々に見上げて


「な、なんじゃと!!ホルトじゃと!!」

「なぜここに!ミア、シアよ儂の後ろに隠れるのじゃ!!」


すると何事か詠唱しだす長


「世の地に住まう精霊よ、此の身を糧に力を分け与え賜え」


ゴゴゴ・・・


地面が盛り上がり、長の目の前に壁が作られる


「おじいちゃん!!キースお兄ちゃんはシアとママを助けてくれたんだよ!」

「なんじゃと!?」


混乱する長は魔法を途中で止める


「どういうことじゃ?ホルト族じゃろ?」

「長、このキースさんは私たちの言葉を理解し喋れます」

「なんじゃとおおおおおおおおおお!!」


長の絶叫が木霊する

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