第6話『ペット』

 あ、すみませーん、遅れてきちゃいました。あれ?どうしたんですかお兄さん、そんなビビった顔して……ああ、もしかして、話途中でした?ごめんなさい。

 あ、今終わったところですか?じゃぁアタシ話してもいいですかね?走ってきて体あったまってるんで!

 あざーっす!すいませんわがまま言って!じゃぁ、これはね?アタシのダチのEってぇケチな野郎の話です。ダハハ、これじゃ時代劇だわ。

 えっとね、でもEはマジでケチな男だったんですよ。昼飯はおにぎり一個、奢りは絶対しない、大学時代も勿体無いからってサークルは入らないし教科書も先輩からもらったりして。職場での飲み会もね、参加しないし。前にね、お世話になった上司が退職されるときも、送別会のためのお金をすっごく出し渋ってましたよ。

「金貰うために会社に来てんのになんで払わなきゃいけないんだ!」って、まぁ実際はもう少しマイルドですけど要約するとそんな感じのことを言って抵抗してました。

 そんなんだから嫌われるんですよ。別に無能ってわけじゃないし、ちゃんとやるこたぁやるけどだからって有能というわけでもない。まぁ普通のやつですよ。そう言うやつはやっぱりね、周りとうまくやっていかなきゃダメじゃないですか。そう言う協調性が全然ないの。

 で、ある日アタシの奢りって言って捕まえて、聞いてやったんですよ。

「なんであんたそんなにケチなのさ」

「俺ペット買ってんだよ。金かかんの」

 びっくりしましたね。てっきり金の亡者だとばっかり思ってたんで、そんな事情があったなら言ってくれりゃいいのにって。

 で、まぁ奢りの分の貸しってことでペットを見せてくれって頼んだんですよ。

 最初はEね、「猫とか犬じゃねぇし、一般受けしない生き物だからやだ。うちの子を悪く言われんの無理だもん」って嫌がってたんですけど、しつこく食い下がったらOKしてくれたんです。写真がないって言うから家までついて行ったんですけど、そん時に言われたのが、「絶対今日見たことを人に言うなよ」って。

 まぁアタシはね、こう見えて義理堅いんで、「もちのろんよ!」て答えましたよ。

 それで安心してくれたのか、家にあげて貰ったんすけど、その、ペットつーのが、見たことない生き物だったんですよね。

 でっかい水槽ん中に、猿と人間のあいのこみたいな顔をした生き物がいるんです。胴体はずんぐりむっくりで、毛は黒っぽい。ちぃー、ちぃーって声で鳴いて、口の中を見てみると歯がなかった。

 アタシが目を見開いていると、Eは財布の中から金を取り出しました。取り出した金を生き物の口に近づける。そしたら生き物が口を大きく開いて、金を歯のない口でむちゃむちゃと食べちまったんです。それを見ながらEのやつ、「金かかるんだこいつ」って。

 アタシは流石に怖くなって、Eを刺激しないように適当なこと言って帰りました。

 アレ以降も、Eとは普通にダチです。ただ、家に誘われることが多くなって、そん時は適当な理由つけて断ってますね。あはは。

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