第二部 10話 ギャルの思い出


「おっ!キタキタキタキタ!!!!」


「るぅ〜〜〜えぇ〜〜なぁ〜っ!!!!!」


「ひいいっ!?」


 国道沿いのファミリーレストランの入り口で、待ち人をしていた少女の前後に、大きく、そして柔らかい感触。

 真夏という季節柄、余りに暑いそのスキンシップに、困惑と驚愕と、あと少しの懐かしさを、美鳥玲奈は感じていた。


「ひっさしぶりだな!」


「お〜ん?ちっとおっきくなったな玲奈たそ〜ヨシヨシ」


「お、お二人は相変わらずですね。でもお元気そうで良かったですよ」


「元気ぢゃねーとギャルはやれんからな!」


「始まりのGよ」


「?(相変わらず紅林先輩の言葉は時々分かんない……じゃなくて)ていうか、今日は、ありがとうございます」


「?んーー……何で?」


「そんなかしこまりな理由あったっけ〜?」


 それは少女の心に、今も微かに痼となって残り続けている、二人ーーー裕美子含めて三人との、ある日の記憶だったが故に。

 とはいえ再会したばかりのこの場では、直接の言及は止めた玲奈だった。


「流石にとぼけててもまだ一年しか経ってないんだから分かりますよ…」


「んー、まぁ、それは一旦ほっといて、メシ食うべ!メシ!」


「腹へりみエグくてウチの腹鳴ってて草」


「……ふふふっ」


 今はとりあえず、今の自分達の話をしようと、玲奈も気持ちを切り替えて、ファミレスのドアを開けた三人だった。




 店に入れば、かつての仲良くやっていた先輩後輩に直ぐに戻った三人。

 友達が少しずつ出来た玲奈の話や、洋裁と料理の場を部活として正式に設けられる様になった真白と姫奈の話で、盛り上がっていた。


「あー食った食った」


「補給かんりょ〜プロペラントタンクまんた〜ん」


「相変わらずお二人とも沢山食べますね…」


「爆乳キープのコツは食って動くだぞれなっち!」


「あははは…」


 コレもまた少し懐かしい光景だなと、パスタにピザ、ハンバーグを平らげる真白と姫奈を見て思う玲奈。

 とはいえそこはギャル。食べ終わるや否や切り替えは早く。


「んで、裕美子誘わんかってんの、理由あんだべ?」


「っ……はい。実は、私の幼馴染が、皆さんと同じ家政部に居る、結城先輩なんです」


「…………………あぁ!いっくんの事か!!!」


「ヒナリアクションおせーよ。まぁあーしもイッチーの苗字思い出すんに三秒位掛かったケド」


「二人はそういう呼び方なんですね」


 相変わらずの独特な、ニックネームのネーミングセンスな先輩だという事を思い出す玲奈。

 再び脱線しかける話題を、軌道修正する為に、玲奈は壱正との関係を、要点をまとめつつ、説明した。


「なるー。しっかし世の中せめーな」


「ニュータイプ同士は共鳴するからしゃーない」


「で、つまりレナっちは、イッチーが好きだけど、裕美子に遠慮しちゃってると」


「えっ「好きっつってないけど、顔に書いてあんじゃん」!……黄山先輩は流石ですね」


 黄山真白は、普段だと下ネタと声の大きさが目立つが、本当に時々、相手の気持ちを察したり、場の空気を冷静に読む力に長けている人だという事も、思い出す玲奈。


「でも〜れなたそ、先にいっくん掻っ攫ってげとしてぇわけじゃぁ、ねーんでしょ」


「………昨日、結城先輩と電話したんですよ」


「おろ、そこは裕美子より詰めんのはえーな!」


「偶々ですよ。それで…電話口のあの人、すっごい悩んでそうで」


「まーイッチーダチも碌に居なかったってからな。カノジョってなんだ?なアタマん中っしょ」


「はい……でもそこで、背中を押してあげれなかった事も、なんか自分が嫌で」


「別にそれは、レナっちがやる事じゃねーっしょ」


 美鳥玲奈という少女にとって、結城壱正は、小さい頃から知っている、幼馴染の男の子。

 その男の子への感情に気付きつつも、同時に、小さい頃、時々一緒に遊んでいた、友達の居ない、友達の様な男の子に、仲の良い相手が出来てくれたら良いなと思う、友愛の気持ちも、確かに存在していた。


「そう……なんですけど」


「まーさ、相手が裕美子だから、れなたそ遠慮しがちなんも分かるし、流石にウチらも、気にすんなー、奪えー、とは、言えんかな〜」


「……」


「ま、だからって今レナっち考えてん事も、オススメはしねーけどさ」


「!えっ……」


 ドリンクバーで作ってきたアップルジュースとカルピスのミックスジュースを、まるで酒を煽る様に飲み干す真白。

 隣の姫奈とも目を合わせて、目の前の後輩の脳内を言葉にした。


「自分からけしかけて、イッチーと裕美子を付き合わせてーんだべ?」


「あっ……」


「当て馬になろ〜とすんのは、ウチも見過ごせんぞれなたそ。そんなスレッガー特攻みたいな恋愛は止めたれ」


「……全く先輩達、テスト弱いのにこういうの強いですよね…」


「こーいうのは机ぢゃ身に付かねーからな!」


「おいこら」

 

 姫奈のアイスココアも勢い任せて飲む真白。

 気分は完全に酒である。


「でも、壱正お兄ちゃん、私の事妹みたいにしか思って無いと思うし、私が我慢すれば、黒井先輩も私大好きですから、誰も傷付かずに………」


『………』


「………ごめんなさい先輩。こんな話するだけで呼び出すなって話ですよね…」


「れなっちさ、言って欲しい言葉はさ、自分で引っ込めちゃアウトっしょ」


「当たらなければどうという事はねぇのは、当たればすげぇ効くって事なんよ」

 

 壱正への呼び方が普段通りに変わっていても、言わないでおく、真白と姫奈。

 なぜ、自分達を呼んで。

 なぜ、わざわざ会おうと思って。

 なぜ、自分の恋路を話したのか。

 それは、戦略や、作戦なんてものは、建前でしか無くて。

 本当に、話したいのは。


「……黄山先輩。紅林先輩。私に、ちゃんと戦える勇気を、くれませんか…?」


「……ん!ヨシ!やれ!本気でやれよ!」


「よぉ言ったァ!!!れなたそ〜かわよ〜!」


「ぜってぇ遠慮すんなよ玲奈。やるだけやんねぇとわからねぇからな」


「いっくんもクリティカるスイッチ、まだいっぱいありそうだしな〜」


「ありがとうございます……」


 二人、玲奈の方の席に行き、頭を撫でる。

 勇気を出して言葉にする時は、この後輩の目が輝いている事を、先輩二人は知っているのだ。


「ま、つか、裕美子も薄々勘付いてるかもだしな」


「んで裕美子もちゃんと勝負したそうだもんな〜」


「そう……なんですかね」


「ん。レナっちに最初に歩み寄ったん、誰よ?」


「あっ…」


 自身の境遇と重ね合わせて、声を掛けたのかどうかは分からないが、居場所が上手く見つけられていなかった自分を慮って、手助けをしようと真っ先に動いたのは、奇しくも恋敵になってしまった、裕美子なのだと、改めて思い返す玲奈。


「したっけその方が、イッチーも、ちゃんと腹括る覚悟、決まるっしょ」


「はい」


 迷惑かもしれない。裕美子の事で頭がいっぱいかもしれない。

 それでも、足を引っ張るんじゃなくて、ちゃんと向き合って、気持ちをぶつけたい。

 そんな自分自身の思いに、玲奈の心が、段々と解けていった。


「しっかしやっぱりいっくん……」


「とんでもねぇタラシだよなぁ〜!」


「あははは…」


 その言葉が、今日一番でストンと胸に落ちた、玲奈でもあったが。






ーーーーーーーーーー


「(ブレーキ…体重移動、アクセル…ブレーキ、体重移動……アクセル……!)………っ…全然遅いや……」


「オートバイと身体の挙動がバラバラだぞ壱正」


「ハイ……」


 照りつく太陽の下に、セミの鳴き声と、僕のバイクのエンジンの音が谺してる。


 今日は裕美子さんちのお手伝いも無くて、久しぶりにおじいちゃんにバイクの運転の練習、旋回運動、スラロームの仕方を教わってた。

 ウチの目の前の田んぼは、農耕車用の太い道路があって、農繁期以外はまるで誰も通らないから、使わせて貰ってる。

 だけど、全然上手く出来てなくて。

 期間が空いたギャップっていうより、文字通り、心と身体が離れ離れみたいな。そんな感じだった。


「もう一回やるよ」


「そんな頭でやるもんじゃない。一回冷房のある所戻って冷やしなさい。生半可な乗り物じゃないんだぞ」


「っ……うん」


 おじいちゃんは、当たり前だけど、バイクの運転には厳しくて。

 それは、不意の失敗や緩慢さで事故を起こしたら、命に繋がりかねないからこその、優しさでもあって。

 何より、僕が今、運転だけに集中出来る心の状態じゃないことを、分かってて言ってくれてる気がして。


「(気分転換しようと思って、出来る悩みじゃ、無いんだよね、やっぱり)」


 違うな。逃げてる気持ちになってるだけなんだ。







「おかわりいる?」


「うん。もう一杯お願い」


「沢山飲んでねぇ。やっぱり若い人が居ると麦茶の減りが早くて良いわ」


「良いの?」


「そりゃそうよ。元気な人が居るって証だもの」


 冷房の効いた茶の間で、麦茶注いでくれるおばあちゃん。

 そんなにアレコレしてくれなくても良いんだけど、孫に色々してあげたいのが、おばあちゃん心なんだって、事あるごとに言ってくれてる。


「みっちゃんがね、ゆみちゃんとお店やってる話、時々聞かせて貰ってたから、孫と一緒に暮らせるの、羨ましかったのよ〜」


「そうなんだ」


 今ではすっかりおじいちゃんの行きつけの裕美子さんちだけど、元はおばあちゃんと裕美子さんのおばあさんが友達での縁だ。

 でもそれだけ羨ましく思えるくらいだから、やっぱりこの間見た時以上に、裕美子さんとおばあちゃんは仲良くて、料理の仕事を頑張ってるんだろうな。


「(そんな裕美子さんの料理なんだから、もっとちゃんと味わって食べないといけないよな…)」


 なんてまた、頭の固い事考えてる僕。

 裕美子さんに、呆れられちゃうよね。

 『普通に食べれば良いんだよ』って。いや…それもそれで勝手に決め付けてる妄想かな。

 あぁ……ダメだ。考え過ぎて、本当にこんがらがってる。

 

「壱正ちゃん大丈夫?」


「あっゴメンおばあちゃ【ピンポーン】あ、お客さんかな。僕出るよ」


「あらありがとうね」


 知らない人と話した方が、気分も少しは解れる気もしたから、小走りで玄関に向かう。

 するとそこに居たのは。


「お?もしかして壱正くんかい?」


「えっと……あ!玲奈ちゃんのお爺さんですか?」


「あんだや大きくなってぇ」


「あははは……もう高一なもので。お久しぶりです」


「いやいや。こっちこそこないだ玲奈が世話になったみてぇでさ。コレ、皆で食べてくれや」


 ビニール袋一杯に入ったほうれん草(この間おばあちゃんが言ってたけど最近ほうれん草が凄い高いらしい)と、包に入った菓子折りを持ってきてくれた、玲奈ちゃんのお爺さんだった。

 ウチと300メートルくらい離れてる所に住んでるけど、他の家があんまり無いから、近所の家…で、良いのかな?


「いやいや!こんなに貰えないですよ!大した事してないですから!」


「良いんだよぉ。孫娘と自転車ったら何かと壱正君に世話になりっぱなしだからさぁ。受け取ってくろや」


「あ、えっと「あらごめんなさいねぇこんなに」おばあちゃん…」


 そこら辺をスムーズにやり取りしてくれて、おばあちゃんが代わりに受け取ってくれた。

 この間の出前といい、玲奈ちゃんとその家族の皆さんにまでお世話になりっぱなしだ。

 

 僕は、色んな人に助けて貰えてる。

 とても恵まれた環境に居る。

 それだけで、良いんじゃないかって、思う位に。







【今日玲奈ちゃんのお爺さんからこの間のチェーン直した事で、ほうれん草沢山貰っちゃった

 ありがとうね】


『気にしないでよ

 おじいちゃんの自家製だから

 いくらでもあるしさ』


【そんなにお礼される事してないのにね(^_^;)】


『じゃあさ

 私に直接お礼させてよ』




「……えっ?」


 その日の夜、玲奈ちゃんからそんなラインが届いた僕だった。









ーーーーーーーーーー


「服…大丈夫だよね。ダサくは…無いよね。うん、この片田舎にしちゃそこそこお洒落だとは思う…多分」


 ガラス張りの壁を姿見代わりにして、最後のチェック。

 決めたら、時間が勿体無い気がして。

 そしたら丁度良くお兄ちゃんからそんなラインだったから、上手く口実付けられた……と思う。


「コッチのモールは、殆ど来た事無いかな」


 私が今住んでる街の近くには、大きいショッピングモールと、少し小さめのショッピングモールがあって、黒井先輩達は服や食材の品揃えが豊富な、大きい方によく行ってた。

 多分、壱正お兄ちゃんも連れてって貰ってるんだろうな。


 一方で、コッチは私が産まれる前、昔からあるちょっと古めのお店で、改装はしてるみたいだけど、なんていうか、ショッピングモールというより、デパート?って言うんだっけ。

 昔の呼び方で、そんな感じのやつだった。


「でもコッチのが小ぢんまりしてて落ち着くかも………!」


「おーい」


「お兄ちゃん、コッチ」


 考えてたら、もう二回位見たお兄ちゃんのバイクとその音が聞こえて、真夏の炎天下でもヘルメットしっかり被ってる、真面目な男の子がいた。


「……お待たせ。待った?」


「大丈夫、今来たトコ。お兄ちゃん暑くないの?」


「ちょっと暑いから一旦汗吹きますね。お見苦しいので………あれっ!?」


「どしたの、タオル無いとか?」


「ご…いや、シート下のナップザックに入れて……しまった洗濯したのしまい忘れた…」


 気温と裏腹に顔が青ざめてくお兄ちゃん。

 こういう所がちょっと抜けてるのは、相変わらずだなぁ。


「買ってく「いいよ私の使いなよ」でも汚いよ」


「時間もったいないもん」


「…ゴメン、ありがとうね。玲奈ちゃんは気が効くなぁ」


「そんな親戚のおじさんみたいな…」


 でも、そんな言い方をするお兄ちゃんは、やっぱり私の事は、一人の女の子としては、見てないんだろうな。

 ダメだ。後ろ向きになっちゃ。兎に角やるだけやってみなきゃ。


「僕ここ初めて来るから、色々教えてよ」


「私も殆ど来た事無いんだ。だから端っこから見てこ?」


「うん!あ、玲奈ちゃんその服良く似合ってるね」


「ありがと…」


 こうやって不意に、だけど素直に褒めてくれるのが、相変わらずだ。

 大丈夫。今はただ、したい事を、してみよう。








 お礼だから、何かお兄ちゃんに買ってあげようかなって提案したけど、最初はやんわり断られて。

 だけどプレゼントしたいって言ったら、そう言われると断れないなって言ってくれた。

 そういうのを見越して言った、私も居るんだけど。


「で、何か欲しいモノある?」


「うーん…フレームに付けるエンジンスライダ……じゃなくて何でも無い…」


「…お兄ちゃん、ホントにバイク好きなんだね」


「…うん。勿論乗ってるのも楽しいんだけどさ。裕美子さん達と知り合えた、皆と繋げてくれた、友達が出来るきっかけになった乗り物だから、大切なんだ」


「そうなんだ……私と久しぶりに会った時もだもんね」


「そういえば……あははは」


 なんて笑ってるお兄ちゃんだけど、私には、ちょっと必然性みたいなのも感じてて。

 元々仮面ライダーが好きな男の子だったけど、見てるだけじゃなくて、心もそんな感じの、あったかい、私の為に日が暮れるまで自転車の練習に付き合ってくれる、優しい、ヒーローみたいな人だったから。


 そんなお兄ちゃんに、色んな人を助けられる様になる、バイクって乗り物が、良く似合ってるんだと思う。



「(黒井先輩も……そういう所、好きになっちゃったんだろうな)」


「ちょっと待ってね。えっと今何か足りないものは…」


「良いよ。なんかバイク乗る時に必要なの、プレゼントしたい」


「!……ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいますね」


「ん!」


 てなると身に付ける物かなって思って、メンズのアパレルショップ中心に見てく事にした。

 サコッシュみたいなポーチとか、ガソリンのタンク?に傷がつかない様なバックルが金属じゃないベルトとか、あとは普通に、忘れちゃったから、タオルとか。


「コレだと長過ぎ?」


「あー…そだね。ハンドタオルくらいかな。真白さんと姫奈さんにも『タオル生地厚いヤツのが使い易いぞー』って」


「そっか。やっぱり黄山先輩も紅林先輩も、そういうトコはちゃんとしてるよね」


「うん。皆凄く良い人だよ。僕にはもったいないくらいの」


「……」


 それは、お兄ちゃんが良い人だからだよって、言っても謙遜されちゃうから言わないけど、想っておく。

 だけど、そうやって先輩達の人柄の良さがちゃんと伝わった事も、勿論嬉しい事で。


「そういえばさ」


「?」


「いや、その…裕美子さん達、僕が家政部入った時、凄く喜んでたっていうか、漸く三人以外の人が増えたって感じだったんだけど、待つ事にはなるけど、玲奈ちゃんが来てくれるかもしれないのに……って今になると思うんだけど…?」


「!………」


 それでもってそれは、時々妙に勘が鋭くなるお兄ちゃんの事だから、聞かれる事もある気はして。

 この間の、黄山先輩と紅林先輩との時は、一々口に出す物では無かったけど、当事者じゃなくて、『あれ』から先に会った、壱正お兄ちゃんにはーーー。


「(黒井先輩……ごめんなさい)ちょっと、フードコートの方で休憩しよ?」







「はい、キャラメルマキアート?だっけ」


「別に良いのにお兄ちゃん」


「こういうのは高校生に任せてください」


「変な背伸び」


 フードコート、の隅のベンチに座る私達。

 ちょっとドヤ顔っぽいけど、やっぱり内心気になってる顔だ。

 好きな女の子の、昔の事。気にされるのは、嫌かもしれないけど、この先、黒井先輩にも、私にも、そして、壱正お兄ちゃんにも、いつか交わる事のある、話だと思うから。


「えっと、私が先輩達と知り合って、暫くした頃の事なんだけど………ね」





==============



「……てな、感じで」


「うーん……成程。よし、玲奈、先ずは包丁の握り方からやろうな」


 サンドイッチの作り方を教わる私。

 最初に黒井先輩に見せたのは、中身のじゅくじゅくしたのが全部飛び出してる、皮だけ残ったトマトだった。









※第二部最終回へ続く

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