9:何だってエンターテイメントになるんだ!
秋篠は考え込んでいた。
設計を終えた時は果たして、無事に元の世界へ帰してもらえるのかと。
「秋篠様、出発の準備は整いました。私パティがお供します。」
パティは手を腰に当て、胸を張り言った。パティは相変わらず元気な子だ。
今は建築士として、仕事を真っ当しようと秋篠は自分自身に言い聞かせた。
そして番人も引き連れて3人、魔王の家に着いた。今日は沢山喋ると、秋篠は口を開けたり閉じたりストレッチをしながら入った。魔王の部屋の扉をノックし、入る。
「秋篠さん、本当に申し訳なかった。」
部屋の奥で魔王は椅子から立ち上がり、帽子を取り謝罪した。
「いえ、その件は大丈夫です。天使達を欺くためには仕方がなかった事ですよね。」
ミーティング。
長いテーブルを挟み、魔王と秋篠は話し合いを始める。パティは台所へ向かい、お茶を出す準備をしに行った。
「それで本題なのですが、城のコンセプトを今日は聞きに来たんです。どんな城が良いか、ですね。」
「それは大体決まってる。」
「本当ですか!どんな城ですか。」
魔王は時に豪快に笑いながら答えていった。
・豪華でエンターテイメント性ある城
・天使の輩からも守れる頑丈な造り
・山の上で、魔界を眺望できるのがいい
・下に街があるといいな。小さくても構わない
・自分の広い部屋を持ちたい
・トイレと風呂は別
・都市ガス
「もしかして最後ら辺、ふざけてます?」
「何、人間を真似てみただけだ。まあ、最初に言った事とかは取り入れてくれよな!」
魔王はユーモアあって退屈なんて無いが、秋篠は既に疲れてきていた。
秋篠は悩んでいた。仕事を引き受けたものの、城の設計は考えた事が無い。
日本の城は見に行った事はあるが、多分この魔王は、洋式が似合う。
パティは考え込む秋篠を横目にお茶を置いた。
「秋篠さん。まあ、難しいだろ。どんなのが出来るかは任せる。自由にやっていい。私が気に入った城なら、バンバン使うさ。」
「………分かりました。」
秋篠秀輝と魔王のQ&A
秋篠Q_
エンターテイメント性とは、具体的にどのようなものが良いですか?
魔王A_
任せる。ってか、何となく分からない?私の好み。派手にやってくれ。
秋篠Q_
天使から守れる、とは、どのような対策が出来れば良いですか?
魔王A_
私の結界が張れれば、基本天使は大丈夫。そうだ、結界を張るためのポイントを作らなければ。その場所を4つ造ってくれ。
秋篠Q_
山の上という事で、何処か山の候補はありませんか?
魔王A_
あるぞ。ここからも見える、歩いてすぐさ。
秋篠Q_
街というのはつまり城下町になりますね。
魔王A_
そうだ。取り敢えず、街の区画を作ればいい。住む奴らは私が魔界中に募集しておく。
秋篠Q_
自分の持ちたい広い部屋のイメージを教えてください。
魔王A_
ロココ調って言うのか。伝わるか、これで。
秋篠Q_
トイレと風呂は別ですね
魔王A_
当たり前だ。
秋篠Q_
都市ガス、、、
魔王A_
……………
魔王Q_
もういいわ。いい加減終わった小ボケを掘り下げてくの辞めてくれよな?
秋篠A_
失礼しました。
「………分かりました。魔王の造りたい城は、まあ、難しいんですが、頑張ります。」
「おう、飛びっきりのを私は期待しているぞ!若き建築士よ。ガハハハッ!」
魔王は大きな声で笑った。
秋篠は悩んでいた。城の知識は僅かしかないが、何とかなると、自分に言い聞かしていた。
しかし、エンターテイメント性のある城とは、一体何なのだろうか。
秋篠は意匠設計の人間。つまり、デザイン。
秋篠がワクワクしながら考え込むのを、魔王は微笑みながら見守った。
魔王はエンターテイメント性を求めていたが、それは外観も必要なのか。
あの魔王は派手好きだから、城のベースとなる色はオレンジとか気に入るかもしれないな。金、銀、やり過ぎか。
この魔王、ステッキ振ってショーばっかりやってるしな、、、
「………劇場みたいに造るか。それだ!」
「ほう、劇場、最高なアイデアだ秋篠さん!」
魔王は何処からか出てきたピアノを軽やかに弾き始めた。秋篠とパティは2人手を繋いでキャッキャと踊った。
エンターテイメント。
それは劇場、舞台にある。
秋篠は劇場に足を運び、いつも楽しんでいたのを思い出した。基礎や土台となる部分を城らしく頑丈に作り、建物は劇場をコンセプトにしよう。
「凄いよ秋篠さん。あなたを呼んで間違い無かった!秋篠さんに任せれば、何だってエンターテイメントになるんだ!」
秋篠秀輝、遂に本業の設計へと進む。
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