6:いかにも魔界の街、って感じだな
魔王が支配するこの異世界。
常夜の魔界にも街がある。
そこは意外にも発展していた。石畳みが敷かれ、石や煉瓦の建物、鉄のような黒い外観。
不気味に思えるがどこか趣きがある。
秋篠達は街に着いた。
「秋篠様、到着しました。」
パティは両手を広げた。
秋篠は汗を拭き、街を眺める。
「ここか。観光にしては、まあ殺風景だな。ハロウィンには打ってつけの雰囲気だ。」
秋篠はふぅ、と息を吐き、街を見渡す。
四角い建物ばかりだ。その建物が無造作に並ばれている。古い長屋のようにかなりぎゅうぎゅうで、道が狭く、人一人通れるくらいだ。秋篠は建物の壁に手を当て吟味する。建物の壁は、無数の石が積み重なっていた。
「魔界の家は石造りか。予想通り木造の建物は無いようだね。魔界の木は全て曲がりくねっていて柱も何も取れないと思ったが、そうだな、木は使っても仕上げ材か家具とかだな。」
狭い道を進んでいくが灯りは少なく、夜に慣れた目でも暗い。
「いかにも魔界の街、って感じだな。」
秋篠は、この街をも計画したいなんて思い始める。
一方その頃、魔王の家には、6つの光の筋が飛んできた。6つの白い光の柱に、翼の広げた人影が現れる。皆白い服を着て、頭には輪っかがある。天使達だ。
「魔王、話は分かっているだろう。」
天使の1人が言うと、扉が開いた。
そこには、赤いスーツのジェントルマンがいた。
「なんだい、何も迎える準備なんかしてないぞ。なら、今からでもショーを。」
魔王はステッキを上げようとすると、天使はそれを制す。
「魔王、とぼけるな。人間界で魔力が発生したな。我々天使が見過ごす事はない。」
魔王はシルクハットを深々と被り、やれやれと首を振る。
「その話か。ただの旅行だ。」
「その日以来、同じ場所で1人の人間が行方不明になっているようだが。」
「そうなのか。ん、私を疑っているのか?」
天使達は真顔で立っている。
「感じる。この世界に人間がいるな。」
「そう遠くない。無事か。」
魔王はステッキを振る。
そしてその頃、秋篠達は服屋に訪れていた。外では番人が剣を構え、静かに2人を待つ。
「パティは服とか興味ないの?」
「いえ、私のような身分が服選びなんて。」
突然、秋篠は全身打たれたような強い衝撃が走る。秋篠は倒れ、胸を押さえ丸くなる。
「秋篠様!?」
「うぐ………はあ。」
次第に秋篠から苦しみが消えた。
目眩いをし、大量の汗をかいていた。
「………大丈夫だ。もう、もう治ったから。」
「秋篠様、、、」
パティは秋篠に違和感を感じた。
何かが違う。まるで今までの秋篠が、そこには居ないような気がしていた。
パティは困惑した。
「あの、秋篠様、何と申し上げたら………」
「パティ、心配するな。まあ、少し歩いたからな。体は正直なんだな。」
店の者が奥から出てきた。
「お客さん、大丈夫ですかい?そこに椅子ありますから、まあゆっくり休んで。待っててください。隣に水やらタオルやらありますので。」
「私パティもお手伝いさせてください。」
「いや、小間使いさん、そこで待っててください。お客さんの側にいてやってくださいな。」
そう言うと店の者は出ていった。
秋篠は置いてある椅子に座り目を瞑った。パティは秋篠をじっと見つめた。
「………魔王様、まさか。」
秋篠が眠りにつくと、店の扉をノックする誰かがいる。
「今そちらに向かいます。」
パティが扉を開けると、そこには天使達が居た。
「………天使。」
「さっきまではこの辺に人間を感じたんだが。」
「ん、お引き取り願えますか?」
パティは扉を強く閉めた。
きっと狙いは秋篠様。天使は秋篠様を狙っている、とパティは思った。
扉は光出し、やがて粉々に破壊された。
天使達はゾロゾロと中に入って行った。
「キャーーー!!」
「ん、どうした!?パティ!!」
大きな音に秋篠は飛び起きた。
天使の1人はパティの首元を掴んでいた。天使達は秋篠を見つけた。
「ん、何だ?誰?魔界の、住人?天使か?」
「………人間はここではなかったか、しかし、何かおかしい。」
「???」
パティは解放された。パティは驚きを手で隠した。天使の感知能力は、ずば抜けている筈だ。
「人間なんか存じ上げません。今主人は体調を崩されているのです。今日はどうかお引き取り願えますか?」
「………そうか、取り敢えず一旦帰るか皆。」
天使達は店から出て行った。破壊された扉は元通りになっていた。
パティは倒れた。すると外に待機していた番人が倒れるパティを支えた。番人は紫色に光を放ち、闇を繋ぐ者が現れた。
「闇を繋ぐ者様、、、」
「秋篠様、先程魔王の魔力が飛ばされて、あなたに与えられたと思われます。恐らく天使達に人間である事をカモフラージュするためでしょう。」
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