第11話 凌ぐ展開
「以上よ」
奈美は必死に涙をこらえきれず泣きながら言った。
「ありがとう奈美。あとは任せて」
「うんお願い」
「で、今のは本当?未空」
僕は奈美を背中に隠して話す。
「えぇそうよ。まぁ今更無駄だけどね。あはは」
「はは、懐かしい」
「あったわねーーそんなこと」
「聞いたけど、1人じゃ何も出来ない癖にさ。周りと親の権力でイキってるんでしょ?ダサッ」
「は?」
未空と周りの仲間の表情は凍りつく。
「君たちも、ついて行くだけとか」
次は取り巻きを煽るか。
「関係ないのに外から声出して、卑怯だと思わない?そういう強いやつの裏でコソコソするの最高に頭悪くてウケる」
煽るために年齢を落としているがギャル語って難しいな。
「お前さ友達いないだけだろ?」
その言葉に反論するように男は僕をみて嘲笑う。
「はいはい。私は彼女に用があるの。金魚のフンはうるさいから黙ってろよ。」
(うざいなこのガk)
まぁ、自分は死んだ身だからどうでもいいか。ただ奈美の為にも負ける訳にはいかない。十分煽ったし、少し真面目になるか。
「私には友達ってよりただの依存関係に見えるけど」
僕は言葉を続ける。
「あなた達も1人じゃ何も出来ない癖に、群れて弱い立場を叩く。それで優劣感を得て自分の地位保ってさ、汚いと思わない?」
「はっ!? 色々と意味不明だわ!」
「簡単に言うと、お前らみたいに数でしか勝てないような卑怯な人間より、友のために1人でも必死にもがいて生きている、奈美の方が世間の目でみても立派だって事だよ。」
「うるせぇ!訳分からないことばっかり言いやがって」
「いいか?1匹になった蟻じゃ生きていけないから忠告してるんだ。ついて行く背中や匂いが無くなければ行先も分からなく………」
ガッ
僕がだらだらと話していると、急に男が殴りかかった。話が脱線してた事は謝る。まぁいいだろう。僕はすぐに奈美に、奈美は有彩に合図を出す
ガッ
僕がもう1発殴られると空は荒れ風が強くなっていく。
「うっ」
「れい!」
作戦通りだが痛い。小学生のくせに、次は蹴りをいれてくるつもりだ。
コイツっ!
僕は蹴りを入れられたギリギリで足首を掴む。
「…!はなせ!」
「………」
足首を引っ張り自分に引き寄せた瞬間、思いっきり右足を腹にやり返した
「ぅぐっ…!」
高跳び選手の脚力みたか。年が違うんだ年が。
なんだか、小学生相手にしょうもないマウントをとる自分が恥ずかしくなってきた。
「ぁあぁアああっあ゛」
男子は床に張り付いて唸っている
流石にやりすぎた。全く大人げないな。僕は自分を叱りながら、リュックから湿布を取り出してた。
「これ使って」
「あっ…ありがとうございます。」
そして、僕は未空達に視線を向けると、逃げ出そうとしている。
(そうか、圧が切れて動けるのか)
ま、予想はついている。最初から逃げられてもいいように。
「おい、待てよ」
僕は有彩に合図し、さっきの落とし穴を見せ足を止めさせる。魔法での解決のようになるが力は使ってないしセーフだ。
「きゃあ!?」
眉間をしかめながら迫る僕と共に風は荒ぶり、雷が鳴り響いている。少しでも、風に足を取られれば即終わりだ。
「奈美達にした事と同じだ。自分がどうしようもないものに押し負ける。それがどういう痛みか分かる?」
「…………。……っ分かった!! 分かったから、私が卑怯だった! だから助けて!」
適当だなと思ったが生死の境目だし仕方ない。
「奈美にいうことは?」
「ごめんなさい! あなただけでなく2人にしたことも全部謝るわ。」
さっきの威勢は無くなり怯えていた。まぁ、ここまできたし、あとは奈美に任せよう。
「いいよ、ちゃんと2人に謝ってくれるなら」
未空は快くうなづいた
「れい?」
もういいんだな。僕は納得すると奈美の背中に右手添え合図した。
「あと、奈美に手を出さないで」
「はい」
全員が声を揃えてそういった
「あぁ。後ろ見てみなよ」
「…!」
風がやみ落とし穴が塞がっている。
「風がたまたま横の土でも運んだみたいだね」
その瞬間、蹴られた子を含めて一目散に逃げていった。
なんとかなったか。
ただただ疲れた。頭痛も怪我も酷くなっていく。
「本当にっ……助かったのね! ありがとう、れい!」
奈美は僕に抱きつきながら泣いていた。
「生きてて良かった! 本当にいい日が来たよゆう!」
有彩は慌てながら僕達の元へ走ってくる。
「大丈夫か?2人とも!」
「ありがとう、有彩!魔法がいい雰囲気だったよ!」
「そうか、良かった。合図完璧だった。」
最終手段として、逃走した場合、雷と嵐を吹かせ逃げ場を奪い恐怖を煽ぐ。細かい作業を人間に見せるのは良くないので影でして貰っていた 。
もう1つこれには意味があるがな。
「これで終わりだな。帰るか」
有彩は呟いた。満足そうに。
「いや、まだこれからです」
「えぇ!そうよ!」
問題はまだ残っている。今はその場しのぎに過ぎない。すぐにケロッとした顔でやり返す可能性もある。
「まだまだここからです。」
僕達は曇った夕暮れを見つめていた。そう。ここからが本番だ。
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