第75話 勝政さん再び

 その一週間後。

 早くも、勝政さんがやって来た。


 相手をさせられている。神崎さんは、少しお疲れの様だ。


 居間へと案内して、うずうずしている勝政さんに聞いてみた。

「どうでしたか?」

「すごいよ」

 そう言って、目がキラキラだ。


 最初に。魔石1個を放り込んで回してみると、5~6時間回ったらしい。

 小型と、差が魔石1個分と非常に効率がいいらしい。

 魔法の不思議な部分だ。


 ただ、ハウジングの加工が難しく、つまり周りを覆ったケースをどうやって作ったのかと、日本のメーカーの人から質問されたらしい。あれも、実は密封しようとハニカムを挟んだ、構造になっていて、溶接した痕もない。

 試しに作っては見るが。どれだけ、性能差が出るか、分からないと言われたそうだ。


「これから先。基本はこっちへ、発電用ユニットを持ち込み。加工は佐藤君にお願いするしかないね」

 真顔で、そんな事を言って来た。


 横で神崎さんが、苦笑いだ。

「佐藤君。早く覚えてね」

 そう一言。言って来た。


「空間魔法ですか? ですよね」

 そう言うと、うんうんと頷いている。


 あれは、俺の力だけじゃなく。精霊の成長も関係があるからなぁ。


「まあ。そう言う事で、3つほど持って来た。予算はSDGsも絡めて、クリーン発電。新型技術普及支援で3億ほど通った。普通この規模だと、発電部分だけで一基100億程度。全体だと1千億円かかるが、この魔石発電。熱も出ないし。建屋は重量に対応するための、基礎工事に少し金はかかるが。導入に関して、驚くほどハードルが低い。乗って来る、地方自治体は多数いると思う」

 そう話す勝政さんだが、肝心の工賃は、おいくらだろうか?


「結局。こちらの工賃は、おいくら位になります?」

「えっ? それは。そちらで決めてくれないと困るよ。まあ。そうは言っても。最初は、1億以内にしていただけると。こちらとしては、都合がいいのだが。どうだろう?」

 そんな事を言って来た。返事が出来ず困っていると。


「いやまあ。実質。タービン部分と、同じだから、40~50億は行ってもおかしくはないんだが。そこは、導入のしやすさを考慮して。数でカバーしてくれると、嬉しいかな。ははっ」

「じゃあ。1億で良いんじゃない。その中で、往復の輸送費1千万ください」

 そんな事を、さらっと神崎さんが、ぶっ込んできた。


「まあ。この重量物。運ぶのにもそのくらいは十分かかるし、佐藤君から取らなくても、輸送費は別に何とかするよ」

「それは、良かった」

 神崎さんは、にこにこしている。


「まあいくつか稼働して、実績ができれば。価格も上がるし。燃料もここから輸入となるしね。そうだ、魔石の値段も決めないと。原油換算だと1個30万円から40万円になっちゃうけど」

「ゴブリンの魔石がですか?」

「そうだよ。原油換算1日で400万リットル位。1バレル60円位だから1日150万円位。ほら。それを4で割ると、そんな感じだろ?」


「安くて環境に良い。を、売るのですよね」

「そうだよ」

「じゃあ、手間を考え。1万円位から始めましょうか」

 そう答えると、神崎さんが、悪い誘いをしてくる。

「ほかの発電を駆逐したら、値段を上げればいいよ。買うしかなくなるからね」

 真顔で、そんな事を言って来た。


「それを考えると、ここ良いな。一日働けば、生活できそうだな」

 そんな事まで言って。笑っているが、発電機の運搬だけで、1千万ですよね。


 そのまま酒宴に突入。

 神崎さんは、満足そうだ。

 前回とその前は、とんぼ返りだったから、だろうか。



 次の日。二人を見送った後。村長にその話をしに行った。

 危うく、目玉を落としそうになっていた。


 特に、ゴブリンの魔石が、1万円になると言ったら。驚いていた。

 元の値段を聴いたら、ひっくり返りそうだ。

 言わないでおこう。恨まれそうだしな。



 さて、日本側。

「勝政さん。それ本当ですか?」

「嘘を言って、どうするよ。発電機。一日の発電コストが4万円だ」


 それを聞いたメーカーの人間と、たまたま相談に来ていた。自治体の担当者が目を回していた。だが、復活すると、電話をしてきます。そう言って、自治体担当者さんは、走って行った。


 元々は、SDGs関連事業として、山林管理と紐づけ。

 バイオマス発電を、考えていたようだが。

 さすがに、運用コストに差が出る。採用するには、理由も必要だろうし、どう作文をするのだろう。


 そんな心配をしていたが、あっという間に噂が広がり、発電機屋さんから泣きが入るまで、時間はかからなかった。


 国の方にも、見慣れない発電方式による。概算の予算請求書類が回って来始め。

 担当者が慌てることになる。


 発電システムの規格と、許可は経済産業省へと出されて、認可されている。


 これは、勝政さんが、作文を手伝い。

 魔石が内包する。魔素から動力への変換についての技術説明は、実にうさん臭いものとなっていた。

 佐藤も知らない。


 至る所に、六芒星がちりばめられた。微小な変換回路が書かれており、さもそれにより動作すると。一見すると書いてある。

 だがこれを査読し、検証しても。


 何処も成功はしないだろう。苦情が出ても、動作する現物があるため、検証した機関の技術不足で押し切る予定だ。

 実に、ひどい勝政だった。将来的には、やばそうだが。


 そんな危ない物だが。

 導入コスト並びに、ランニングコストの安さ。

 CO2未排出の文言は、非常にインパクトが大きく。発電市場を短時間で席巻していく事となる。

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