第76話 勝政さん……REBORN

 久しぶりに、村へ。

 一人の、男の子がやって来た。


 初めての村。

 門番NPCの長尾さんに、片手を上げて。

「こんにちは、わかります?」

 と、問いかける。


 NPCの、ふりをしているため。

「はじめてのむ…… ああっ。勝政さん」

 長尾さんは、パニックモードへと移行した。


「落ち着いてください。家で寝ていたはずなのですが。あの、始まりの場所で、起きちゃって。ここへ来るまでの間に、理解しちゃったのですよ。最初に、住人登録をしていいですか」

「はい」


 2人で、受付へ行くと。

 てきぱきと、書類を記入して。終了する。

「希望は。一旦帰るで、よろしいですね」

「その手はずで、お願いします。数日で、私が居なくても。神崎さんが、来るはずなので。一緒に帰ります。家にいたのが、一人なので。自分がどうなっているのかも。気になりますし」

「そりゃ。そうですよね。あっ、でも奥さんは? 」

「数日前に、追い出したんですよね。はははっ」


「そりゃ、また」

「離婚届を出して、一杯やっていたら。ここへ来ちゃった。文字通り。生まれ変わって、やり直せという事だと、思うことにしました」


 そうして、二人そろって、佐藤君の家へと向かった。



 そこでもう一度。同じ説明をして、泊めてくれることとなった。


「いや。しかし、こんなことも。あるのですね」

「いや。笑い事じゃありませんけれど。自分で体験するとは、思いませんでした。噂のとおり。駄女神。今回、顔も見ませんでしたよ」


「やっぱり。最近、会ったという人が、居ないんですよね。一度、白い部屋は、経由するらしいのですが。到着早々。落下するらしくて」


 勝政さんは少し思い返す。

「そんな、感じでしたね」

 そう言って、苦笑いをした。


 周りのみんなも。

 数日前に会った、勝政さんの若返った姿を見て、困惑? している。

「この子が、年を取ると、あんな感じになるのよね。不思議ね」

「でも女の子は、お母さんの顔を見ると、将来の顔。想像がつくって言うじゃない」

 こそこそ言っているが、なんだか、ちょっと失礼な気もする。


「勝政さんが、困ってるから。やめてね」

「「「はーい」」」


「それで。あと、二日もすると、神崎さんが来るはずですので。その時に、帰って向こうで、上司とかとも。話をしてみます」

「ああ。例のすり合わせですね」


「ただ。私は46歳だったのですよ。で、今15歳でしょ。無理がありますよね。子供としての戸籍を作ってもらっても。同僚の子供と、一緒に学校へ通うのも。ちょっと嫌ですしね。それに向こうだと。まああれですが、この姿で酒飲んでいたら。補導されますよ。晩酌なしは無理」


「そんな無理をしていたから、家で倒れたのじゃないですか? まあ、無理の一端を担っていたので。申し訳ありません」


「いやいや。嫁さんとも離婚したし。心機一転。人生をやり直しますよ」


 などと言っていたが、離婚した理由にも。俺が絡んでいた。


 向こうへと、帰ったとき。

 勝政さんは、神崎さんへ。ぽろっと。

 忙しいせいか、嫁さんの機嫌が悪いと。愚痴を言ったらしい。


 そう言ったら。神崎さんが、良いものがあると言って。肉のブロックをくれた。

 こちらでも、珍味で。非常に滋養強壮が付く。

 それに、夫婦関係の改善にもバッチリと言って。


 その晩。久しぶりに、白のワインを買って帰る。

 一応、魚類と言うことなので、少しソテーしてみる。


 魚というには、少しブタっぽいが? まさか、オーク? などと思ったが、まあ、珍しい魚なんだろうと、ちょっとずつ焼きながら作った。

 味を見つつ。できあがったら、照り焼きのはずが、なぜか、生姜焼きとなってしまった。おいしいからいいかと。

 それをつまみにして飲んでいた。

 すると、珍しく奥さんが、自分の仕事部屋から出てきた。


 奥さんは、元々WEB関係の仕事をしていて。

 入札業者さんに、説明係としてついてきて。知り合った。


 勝政さんが、38歳で、奥さん33歳だった。

 お互い。年も年なので、半年ほどで結婚。

 残念だが、まだ、子供はできていない。


 いまは、フリーの技術者。という名目で、契約社員。

 半々で、出社と在宅で、仕事をしているようだ。


「それ、なあに?」

「仕事先でもらってね。魚と言うことだが、食べると豚肉のようだ。脂身が甘くて、非常においしい。高級ブランドブタのようだな」

「ふーん。まだある?」

「生姜焼きなら、フライパンにあるし。残りのブロックも、チルドルームに入っている」


 グラスに、俺のワインを、勝手に注いで持っていく。

 冷蔵庫を開けて、何かをしているから。

 味付けなしで焼いて、味を見るのだろう。


 珍しく。鼻歌を歌って、楽しそうだ。

 野菜や何かと一緒に、この匂いは。オイスターソースで炒めたのと、もう一つはカツでも揚げているようだ。


 久しぶりに。妻が、台所に立っているのを、見た気がする。


 長い事。仕事にかまけて、家をほったらかしにしたからな。

 子供ができなかったのが、きっかけか。

 つい、飲みに行ってしまった。

 でも今回。

 神のいたずらか、良いめぐりあわせで。

 おかげで、歴史に残るような仕事になった。

 課長補佐か、一足飛びに。課長になれるかもしれんな。


 そんなことを、考えながら。食事を済ませる。

 まだ、嬉しそうに、彼女は料理をしていた。

「先に風呂へ入るよ」

 そう言って、声をかけ。風呂へと入った。


 久しぶりに。ゆっくりした気分で、風呂につかり。

 出てくる。

 すると、ごちゃごちゃした台所は、そのままで。

 片付けもされず。彼女は、姿を消していた。


 冷蔵庫を見ると、まだ、あの肉は半分ある。

 揚げていたカツや、炒めていた物も。

 フライパンなどに、残っている。


 調味料でもなくなって、買いに行ったのか? 

 時計を見ると、まだ10時過ぎ。

 それなら、まだ表には、人通りも多い。大丈夫だろう。

 ビールを一本開けて、飲んでいるが。

 帰ってこないな。

 気になり、電話をしてみる。


 出ないな? もう、11時だ。


 そう思ったら、着信が来た。


 ビデオ通話? 珍しいな。

 タップしてつなぐと、誰かの上で腰を振っている妻。

 思わず録画モードにする。


 向こうは、電話をかけるつもりはなく、着信でも確認して、何かので、着信がこちらへ、来たのだろう。

 録画しっぱなしで、電源へとつなぐ。

 PCで、調査と離婚について検索する。


 さらに1時間たっても、行為は続いており。

 元気がなくなったものを口に含み。

 強引に使えるようにしている。


 こんなこと。してくれた事なかったな。

 なんだろう。

 まるで気分は、AVでも見ている気分。


 自分の中で、どんどん気持ちは冷めていく。

 妻を見ても、誰こいつ? という感情しか湧かない。

 自分の感情が、欠落しているのか。

 妻など、愛していなかったのか。判断が付かない。

 だが、どこか。こわばっていた体から、力が抜けた気がした。

 意外と、家庭のことも。ストレスだったのかな?


 酔いもあり。あの魚も効いたのか。

 ゆっくりと休んだ。週明けには、向こうへ行かなきゃならん。

 週末に、全部済ませよう。


 ただ、離婚届はすぐ書いてもらい。

 あいつは追い出そう。


 朝6時に目が覚めると、通話はさすがに切れていた。

 気が付いて切ったのか。

 あいつの携帯も、ずっと通話中だったから。電池が無くなったのか。


 さて。今日も朝から忙しい。頑張ろう。

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